詩小説『成人式には行かなかった』全ての新成人へ

エピソード文字数 1,068文字

成人式には行かなかった。

成人式には行かなかった。
いつもと同じ一日をアイツと過ごした。

成人式には行かなかった。
ダンボールを敷いた草の上、アイツと居た。

成人式には行かなかった。
どっちでも良い他愛もない話をアイツとした。

成人式には行かなかった。
「絶対笑うなよ!」ってアイツの打ち明け話。

成人式には行かなかった。
約束したのに、腹を抱えて笑った。

成人式には行かなかった。
でもくだらなくとも夢を持つアイツが羨ましく思えて、なんだか淋しくなった。

成人式には行かなかった。
振袖の中にはなにが詰まっているのだろうか?

成人式には行かなかった。
なにを持ってして大人なのだろうか? なにから卒業できたと言うのか?

成人式には行かなかった。
なにかに負ける気がして、地元の連中に会いたくなかった。

成人式には行かなかった。
どこかの誰かも知らない偉いおじさんの、タメになる話なんて聞きたくなかった。

成人式には行かなかった。
酒を浴びるように呑んで馬鹿騒ぎするような大人になりたくなかった。

成人式には行かなかった。
もうあの日みたいに、アイツと喫煙所で語れないなんて。認めたくなかった。

成人式には行かなかった。
仲間集めてアパートで呑んで。朝方寒空に消えるアイツの背中が虚しくて。

成人式には行かなかった。
こんな日が続くと思ってた。終わるなんて思ってなかった。

成人式には行かなかった。
音も立てずに消えて行くのか。子供みたいな大人に、大人になれって言われた。

成人式には行かなかった。
夢も持っちゃいないのに。あの娘に好きと言えてないのに。解散なんて。

晴れ 日本 成人の日

「これからどうすんだ?」

「あん? まだ、決めてない。お前は?」

「俺は夢があって」

「なんだよ、夢って」

「絶対、笑うなよ?」

「なんだよ、もう。笑わねぇよ」

「とか言って、絶対笑うだろ?」

「笑わないって」

「ほら。ってかもう既に半笑いじゃんか」

「笑わない、笑わない」

「俺さ」

「うん」

「SASUKEに出たいんだ」

「ハッハッハッハッハッ」

「ほら、笑うじゃん。笑わないって言っただろ?」

「だからお前ガリガリなのに筋トレしてんのか」

「まあな。だから、笑うな。まだ笑ってんじゃん」

「わりいって。まあ、ドブ池みたいなのに、即効落ちんなよ」

「お前もな」

「えっ?」

「俺、今日のこと、多分、忘れない」

「かもな」

「さいなら」

成人式には行かなかった。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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