第1話

文字数 936文字

沈黙の殺戮者

            
東日本大震災の犠牲者は
十年目の昨年三月で一万五千八百九十九人
行方不明者は二千五百二十六人
コロナの犠牲者は今年一月二十一日で
一万八千四百六十七人
この数字の束に括られたひとつひとつの
命にどれだけの涙が流されたことだろう
因みに今日 一月二十一日は東京の
感染者は過去最多の九千六百九十九人
オリンピックの開会式があった
昨年七月二十三日は千四百人弱だった

コロナの死は見えない死である
壁の中の死は外から遮断されている
もう あの東日本大震災の犠牲者を遥かに
超えるほど多くの人が亡くなっているのに
それは誰の目にも見えない静かな死なのだ
私たちは犠牲者の叫びやその苦しみの姿を
目にすることはないし耳にすることもない
しかし 死は確実に侵入している 
目に見えない津波のように音も立てずに
我々を呑み込もうと待ち構えているのだ
いつ 自分が呑み込まれてもおかしくない
誰もが不安の中でそう思っている
東日本大震災はあまりにも荒々しい破壊と
殺戮だった それは誰の目にも明白に見え
これ見よがしに私たちを残酷に打ちのめした

この十年で二度も大量殺戮に見舞われている
一つは確かに天災だろうがその後に起こった
福島の原発事故は明らかに人災である
そして この度のコロナ禍もこれは明らかに
人災といってよいものだろう そして
この人災はどちらも目に見えない敵が相手だ
我々が自然界から自ら引き出してしまった
目に見えない災厄を前に為すすべがないのだ
この人災は二つともに現在進行中であるが 
収まる様子が 収束する気配が全くないのだ
傷ついた原発は 一体 いつ収束するのか
故郷を根こそぎ奪われた人達はいつ帰れる
このコロナは 一体 いつ収束するのか
どこまで犠牲者を拡大させるつもりなのか
この後もさらに強力な変異株に襲われるのか
例えコロナが去っても第二 第三のコロナが
これからも次々に私たち人類を苦しめるのか
私たちは自分たちの文明が生み出した
鬼子によって滅びてしまうのか
もしかしたら このコロナというウィルスは
私たちが思っている以上に
今までにない壊滅的なダメージを
私たちに刻み込むことになるかも知れない
そして それは静かに忍び込むようにして
私たちの命を盗み取って行くのだ
まるで 明確な意思を持った死神のように

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