第18話「棒読みのスポーツマンシップ」(5) 

文字数 1,029文字

 第二競技――パン食い競走。
「ぐはああああっ!?」
 悲鳴を上げ、悶絶するA組の生徒たち。
「はっはっはっ、毒入り、痺れ薬入り、呪詛入りの、三種複合のアンパンは美味いかね!!」
 高笑いするクトゥー。
「そんなの読んでいないと思ったんですか! 行きなさいロッテ!」
「もぐもぐ」
 ライムの指示の下、なんら躊躇することなくアンパンをぱくつくロッテ。
「ゾンビのロッテに毒など無用です!」
 ゾンビ族のロッテ、彼女の一族は、依代である死体が腐らないように、常に防腐処理を行う必要がある。 
 その防腐薬品は、一般には猛毒と呼ばれているようなものも数多い。
「う~ん、この毒はシアン化系ですね。大好物です」
 ニコニコ笑顔で他の選手の分まで食べてしまい、見事ゴールを決めた。
 
第三競技――借り物競走。
「セイレーンの洞窟に奥にあるオリハルコンを手に入れ、ドワーフの親子の仲違いを仲裁して作られた伝説の聖剣ってなんじゃこりゃああ!?」
 そこに記されていたのは、どこに言ったら借りられるかわからないようなものばかりであった。
「くっ……クトゥー先生め! まさかここまで借りてこさせる気のないラインナップとは!」
 困惑するB組の生徒たちを前に、悔しがるライム。
「なはははははっ! どうだ、借りられるものなら借りてこい!」
 ちなみにクトゥーは、学生時代、運動会で「女子のハチマキ」という比較的借りやすそうに見えるものが札に書いてあったが、女子たちは「自分の所有物」が彼の手に渡ることを嫌がり、時間切れで失格という屈辱を味わった。
「俺の苦しみはこれと同様よ! 味わえ、味わえ、味わえぇえ!!」
 愉悦満面なクトゥー――だったが。
「甘いわねニンゲン!」
 しかし、ステラ・リア率いるA組の生徒が、見事借り物を手に入れゴールする。
「バカな……あの札には……あ!」
 札の中の一枚には、「レッドドラゴンの逆鱗」と書かれていた。
 竜族の逆鱗は、「その鱗に触れば竜族は怒り狂う」という箇所である。
なぜ怒るのかというと、「その鱗は竜族の最大の弱点」であるため、もし引っぺがそうとすれば、地獄の痛みが走るからなのだ。
「一体どうやって………はっ!?」
 クトゥーの視界に、倒れてうめき声を上げている、レッドドラゴン族の生徒が映る。
「いたのか、レッドドラゴン族、んで引っぺがしやがったか……」
「向こうも本気ですね」
 呆れを通り越して感心するラーヴェルト。

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