第1話 プロローグ
文字数 455文字
わたしは死体。それもバラバラに切り刻まれた死体。
その一部である、わたしの右手がみつかったのは大きな川のほとり。夏の青々とした、背の高い葦の茂みの中からでした。
わたしの右手を見つけてくれたのは、十六歳の男の子。
その子は朝早く、川に釣り(わたしは釣りのことはよくわかりませんが「バスフィッシング」という釣りだそうです)に来て、葦の茂みにひっかけたルアーとやらを探し出そうと、背の高い葦のしげみをかきわけたときに、わたしの右手をみつけたのでした。
「白くてきれいな」と男の子はいっています。「女の人の手でした」
わたしの切断された右手。その右手には、右手なりの記憶が残っています。
わたしの右手がふれたもの、さわったもの、つかんだもの、なでたもの、あいしたもの、このんだもの。
あるいは、きらったもの、きもちわるかったもの、ぬめぬめとしたもの、などなどです。
しかしそれらの記憶は記憶とよぶにはあまりにもぼんやりとしていて、あいまいで、まるで水中をただよう藻屑のようです。
わたしはいったいだれなのでしょう?
その一部である、わたしの右手がみつかったのは大きな川のほとり。夏の青々とした、背の高い葦の茂みの中からでした。
わたしの右手を見つけてくれたのは、十六歳の男の子。
その子は朝早く、川に釣り(わたしは釣りのことはよくわかりませんが「バスフィッシング」という釣りだそうです)に来て、葦の茂みにひっかけたルアーとやらを探し出そうと、背の高い葦のしげみをかきわけたときに、わたしの右手をみつけたのでした。
「白くてきれいな」と男の子はいっています。「女の人の手でした」
わたしの切断された右手。その右手には、右手なりの記憶が残っています。
わたしの右手がふれたもの、さわったもの、つかんだもの、なでたもの、あいしたもの、このんだもの。
あるいは、きらったもの、きもちわるかったもの、ぬめぬめとしたもの、などなどです。
しかしそれらの記憶は記憶とよぶにはあまりにもぼんやりとしていて、あいまいで、まるで水中をただよう藻屑のようです。
わたしはいったいだれなのでしょう?