5:おやすみからおはようまで。
文字数 2,324文字
……それは、どういう機能なんだ?
お前が寝る時に「おやすみ」って言えばいいのか?
それはそれで魅力的だが……違う。
『おやすみモード』とは、使用者が快適に眠れるように設定するものだ。エアコンの電源が数時間でオフになったり、徐々に設定温度が上昇するタイプもあるらしい。
なるほど。つまり快適な温度を維持しておけばいいわけだな。
そういうことだな。
とはいえ、眠くなったら寝てもいいぞ。
心配には及ばない。あらゆる願いに対応できるように、そのあたりは融通がきく。
ランプの魔神を舐めるな。私に無理なことなんてないぞ。
うむ、良い感じだ。これで明日の朝まで問題ないだろう。
…………数分で『おやすみモード』の任務を終えてしまったな……。朝までどうしようか……
………………………暇だ。
ランプに入ってしまえば一瞬なんだが……こうやってボーッとしてると時間が経つのが遅く感じるものだな。
(いや、しかし見栄を張ってしまった手前、すぐに寝てしまうのも負けた気分になるな。コイツは別に何も言わんだろうが……それもムカつく……)
…………この変態も、寝ていればそこらの人間と変わらんな。まぁ当然か……
あー、スッキリした。今日は散々な目に合わされたしな。これくらいしてもいいだろう。
……は? な、なんだ寝言か………驚かすんじゃないぞ、まったく。
というか、寝言で私の名前を言うなんて、私の夢でも見てるのかコイツ!! なんて図々しいやつだ!!
(しかし驚いたな。まだ心臓がドキドキしているぞ……)
くっ……こいつめ。人を驚かせたくせに幸せそうな寝顔をしてるな………
……こうして改めて見ると、結構整った顔をしているな。まぁ、中身がアレじゃ誰も寄り付かんだろうが……
いきなりエアコンになれとか言い出すわ、ランプは揺らしまくるわ、庭で排尿させるわ……ほんとロクでも無い男だよ。
……………まぁ、変態だが悪い人間というわけでもないんだが、な。
何かあれば心配してくれるし、礼儀も弁えている。料理も当然のように用意してくれたな。
これまで私の主になった人間達は、みな私利私欲の為に他者を陥れる者たちばかりだった……。自分の願いがなんでも叶うというのは、それだけで容易く人格すら変えてしまう劇薬のようなものだからな。
それに比べれば、コイツは他者へ迷惑をかけたりはしないな。
……まぁ、私は迷惑を被ってるが……
くっ、さっきの驚きのせいか、まだ心臓がドキドキしてる……
…………………………わるいやつじゃ、ないんだよな……
(ガラが寝返りをうたなかったら……私、あのまま………)
(え…………えぇぇぇぇぇぇ………! えええええええええ!!)
いやいやいや、冷静に考えるんだ。何か原因があるはず。
さっき、驚かされて心臓がドキドキしてたから、それで変な感じになったんだ!! これだ!!
いやー、原因がわかって一安心。
そうだよねー、私がこんな変態に何か思ったりとかないよねー。
ふふふ、少しでも期待したかこの変態め! だがな、原因がわかったからにはもう引っかからないからな!
なんだかんだで疲れてたんだ! きっとそうだ! 別に遠慮する必要なんてないんだし、さっさと寝ちゃおう!
あぁ、カレーの匂いか。そういえばまだ少し残ってるって言ってたな……
目玉焼きに味噌汁……これは、朝食か。どうしたんだ?
……昨日話してただろう。今度は私が食事を作るとな。
うるさいな、気が向いたんだよ! それよりも礼とか無いのか!?
ああ、すまない。サプライズには慣れていなくてな、これでも驚いているんだ。
ありがとう、いただきます。
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