第10話:日航ジャンボ機墜落事故2

文字数 1,799文字

 18時49分、機首が39度に上がり、速度は108ノット「時速200キロ」まで落ちて、失速警報装置が作動した。このころから機体の安定感が崩れ、何度も機首の上げ下げを繰り返した。この間、機長が「あーダメだ。終わった。ストール」と発言するまでに追い詰められながらも、諦めることなく「マックパワー、マックパワー、マックパワー」などと指示していた。

 18時50分、「スピードが出てます スピードが」と困惑する副操縦士に機長が「どーんといこうや」と激励の発言。機長の「頭下げろ、がんばれがんばれ」に対して副操縦士は「今コントロールいっぱいです」と叫んでいる。機長が「パワーでピッチはコントロールしないとだめ」と指示。

 エンジン推力により高度を変化させる操縦を始めたと思われるが、左右の出力差で方向を変えた形跡は見当たらなかった。速度が頻繁に変化し不安定な飛行が続いたため、副操縦士が速度に関して頻繁に報告をしている。18時51分、依然続くフゴイド運動を抑えるために電動でフラップが出され、18時53分頃から機体が安定し始めた。

 18時54分、クルーは現在地を見失い、航空機関士が羽田に現在地を尋ね、埼玉県熊谷市から25マイル「40キロ」西の地点であると告げられる。その間、しばらく安定していた機体の機首が再び上がり、速度が。180ノット「時速330キロ」まで落ちた。出力と操縦桿の操作で機首下げを試みたが機首は下がらなかった。

 18時55分、機長は副操縦士にフラップを下げられるか尋ね、副操縦士は「はいフラップ10度下がっている」と返答しフラップを出し機体を水平に戻そうとした。その直後、フラップを下げた途端、南西風に、あおられ機体は右にそれながら急降下し始めた。その後、機長は機首上げを指示。機長が「フラップ止めな」と叫ぶまでフラップは最終的に25度まで下がり続けた。

「あーっ!」という叫び声が記録されている。機長の「フラップみんなでくっついてちゃ駄目だ」との声に混じって副操縦士が「フラップアップ、フラップアップ」と叫び、すぐさまフラップを引き上げたが、さらに降下率が、上がった。この頃高度は10000フィート「300メートル」を切っていた。

 機長がパワーとフラップを上げるよう指示するが航空機関士が「上げてます」と返答する。07秒頃には機首は36度も下がり、ロール角も最大80度を超えた。機長は最後まで「あたま上げろー、パワー」と指示し続けた。その後、墜落した模様。クルーの必死の努力も空しく機体は降下し、18時56分、対地接近警報装置「GPWS」が作動した。

 わずかに、機首を上げて上昇し始めたが、すぐに、右主翼と機体後部が尾根の樹木と接触し、衝撃で第4エンジンが脱落した。この時、機首を上げるためエンジン出力を上げた事と、急降下した事で、速度は340ノット「時速630キロ」以上に達していた。接触後、水切りのように一旦上昇したものの、機体は大きく機首を下げ右に70度傾いた。

 その後、右主翼の先端が稜線に激突し、衝撃で右主翼の先端と垂直・水平尾翼、第1・第2・第3エンジンが脱落し、機体後部が分離した。機体は機首を下げながら前のめりに反転してゆき、高天原山の群馬県側北東の斜面にある尾根にほぼ裏返しの状態で衝突、墜落した。墜落時の衝撃によって、機体前部から主翼付近の構造体は原形をとどめないほど破壊された。

 その後、離断した両主翼とともに炎上した。一方、分離した客室後部と尾翼は、山の稜線を超えて斜面を滑落していった。客室後部は尾根への激突を免れて、斜面に平行に近い角度で着地した。樹木をなぎ倒しながら尾根の斜面を滑落して時間をかけて減速した。このため最大の衝撃が小さく、それ以外の部位と比較して軽度の損傷にとどまり火災も発生しなかった。

 これらの要因によって客室後部の座席に座っていた乗客4名は、奇跡的に生還できた。しかし、その後の救出には、時間がかかり多くの疑惑が巻き起こった。中には、米軍によって撃墜されたとか、怪情報が、飛び交った。

 4日後の8月16日、米国調査団は初めて現場入りしたが、未だ遺体収容活動が行われている状態で、圧力隔壁の調査はできずに終了。その後、台風が接近し悪天候が続き、米国調査団が現地入りするのは22日まで延期された。8月22日米国調査団が、2回目の現地調査を行った。
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