第一章 ファイブカード(10)
文字数 2,270文字
私はラッキーだな、と沙織はカードの価格表を見ながら思った。
自分の集めていた色が赤ならば復活するのに30万円もかかってしまうけど、白であったため10万円を払うだけで再びファイブカードが完成し、復活できる。
白カードの枚数欄に「1」を入力した。
あとは【購入】ボタンをクリックするだけ。
それだけのはずなのに何故か踏み切れない自分がいた。
私の稚拙な考えの先は、いつも罠が待っている。
このゲーム、そんな単純じゃない。
そう感じた原因のひとつが、どこかでこのSHOPに関する何かを見たような記憶だ。
それが気になって仕方がない。
どこで?
時間がないのは分かっているけど、どうしても気になる。
どこで見たの?
自分の脳に語り掛ける。
チャットの会話の中……、録画を見た時……。いや違う、そんなフレーズどこにも出てこなかった。
じゃあどこ? 他にはどこが考えられるの?
沙織はハッとした。
あるとしたら、あそこしかない。
ルール表……。
床に投げ出されていたルール表を引っつかみ、目を走らせた。
あった! 『休憩』の説明文の中だ。
——トイレに行くなり、食事をするなり、買い物に行くなりご自由に過ごして下さい。
買い物……。
そういうことか……。
プレイヤーは休憩中に買い物に行くことができる。
ちょっと考えれば、気がつくはずだった。真夜中の一攫千金を目指すゲームの真っ最中に、外に買い物に出かけるプレイヤーなんていないことに。
それなのに、こんな必要のない言葉がルール表にわざわざ書いてあるんだからその意味を考えなさいよ、と主催者は仄めかしていた。買い物はゲーム内できるんだよと……。
そして休憩で買い物ができるということは、休憩と同じグレー状態であるバトル敗戦後もどこかで買い物ができるんじゃないかと推測しなさい、と示唆していた。
これでWの赤のファイブカードの謎も解明した。
「買い物」のフレーズに着目していた彼はゲーム開始早々に休憩をとり、【SHOP】機能を見つけて、赤のファイブカードを完成させた。
敗者となった写楽とGOGOGOもここで赤のファイブカードを完成させ、復活した。赤を何枚買ったのかは分からないけど、カードが5枚まで買える以上、金に糸目はつけなかったはず。そして通常モードに戻ってから連戦連勝を続けている。
それに対して復活しても再び消えていったプレイヤーは、失ったカードのみを補充しため、また敗れた。
ならば私がそのプレイヤーたちの二の舞にならないためにも取るべき道は1つしかない。
優勝さえできれば、100万、200万の借金なんて所詮、はした金よ。
復活の希望が見え、沙織の気持ちも大きくなってきた。
残り時間はあと15分。
【ファイブカード(赤)】の枚数の欄に『5』を入力し、【購入】ボタンをクリックした。
再びメッセージが現れた。
お支払方法を選択してください。
一括払い 150万円
分割6ヶ月払い ひと月 30万円
12ヶ月払い ひと月 18万円
24ヶ月払い ひと月 12万円
36ヶ月払い ひと月 9万円
そうだ、確か分割払いも可能と書いてあった。
それにしても、なんと暴利な!
あきれてものも言えないけど、迷っている暇はない。
躊躇なく36ヶ月払いを選択した。
優勝するつもりなのでどれを選んでもいいんだけど、でもやっぱり、もし優勝できなかった時のことを考えると、自然と1回の支払金額が少ないものを選んでいた。
これでこのゲームでの借金が累計400万円を超えた。
【SHOP】から戻ると、プレイヤーリストの玄もグレー状態から通常モードに戻っていた。画面右上に赤のカードが5枚並び、その下に白のカードが4枚並んでいる。
この数分間の間に、生き残っているプレイヤーが激減していた。
名前が黒くなっているプレイヤーの数はあまり変わりないけど、グレー状態のプレイヤーの数が軒並み増えている。
【RETIRE】ボタンさえ押さなければ何かがあるとまでは勘付いているけど、そこで【SHOP】を見つけられないプレイヤーが多いということだ。
そんなプレイヤーを見て沙織は少し優越感に浸った。
ランドスケープというプレイヤーからバトルの申し込みが来た。
『R』4つの玄はWと同じようにカモに見えたに違いない。
遅ればせながら私も打ち出の小槌状態になったというわけね。
ランドスケープの手役は青のファイブカードだった。
これまではこれで連戦連勝だったのでしょうけど、悲しいかな私の赤のファイブカードには敵わない。
沙織のパソコン画面の右上に青のカードが1枚追加された。
制限時間までに、あと何枚カードを増やことができるか?
先のことを考えると7、8枚は増やしておきたい。
だけど沙織の思惑通りに事は進まなかった。
残り5分を切ったあたりで生き残っているプレイヤーが続々と名前をゴールドに変え始めた。
Wもいつの間にかいなくなっている。
残っているプレイヤーとのバトルも赤のファイブカードばかりで引き分けが続いた。
復活後、沙織は結局3勝しかできなかった。
画面右上の手持ちのカードは赤5枚、青1枚、緑2枚、白4枚の合計12枚が表示されている。
この枚数でセカンドステージを勝ち抜けられるのかどうかはまったくわからない。
だけど、とりあえずは次のステージに進むことはできる。
ゲームの残り時間が1分を切ったところで、沙織は【セカンドステージへ】のボタンをクリックした。
自分の集めていた色が赤ならば復活するのに30万円もかかってしまうけど、白であったため10万円を払うだけで再びファイブカードが完成し、復活できる。
白カードの枚数欄に「1」を入力した。
あとは【購入】ボタンをクリックするだけ。
それだけのはずなのに何故か踏み切れない自分がいた。
私の稚拙な考えの先は、いつも罠が待っている。
このゲーム、そんな単純じゃない。
そう感じた原因のひとつが、どこかでこのSHOPに関する何かを見たような記憶だ。
それが気になって仕方がない。
どこで?
時間がないのは分かっているけど、どうしても気になる。
どこで見たの?
自分の脳に語り掛ける。
チャットの会話の中……、録画を見た時……。いや違う、そんなフレーズどこにも出てこなかった。
じゃあどこ? 他にはどこが考えられるの?
沙織はハッとした。
あるとしたら、あそこしかない。
ルール表……。
床に投げ出されていたルール表を引っつかみ、目を走らせた。
あった! 『休憩』の説明文の中だ。
——トイレに行くなり、食事をするなり、買い物に行くなりご自由に過ごして下さい。
買い物……。
そういうことか……。
プレイヤーは休憩中に買い物に行くことができる。
ちょっと考えれば、気がつくはずだった。真夜中の一攫千金を目指すゲームの真っ最中に、外に買い物に出かけるプレイヤーなんていないことに。
それなのに、こんな必要のない言葉がルール表にわざわざ書いてあるんだからその意味を考えなさいよ、と主催者は仄めかしていた。買い物はゲーム内できるんだよと……。
そして休憩で買い物ができるということは、休憩と同じグレー状態であるバトル敗戦後もどこかで買い物ができるんじゃないかと推測しなさい、と示唆していた。
これでWの赤のファイブカードの謎も解明した。
「買い物」のフレーズに着目していた彼はゲーム開始早々に休憩をとり、【SHOP】機能を見つけて、赤のファイブカードを完成させた。
敗者となった写楽とGOGOGOもここで赤のファイブカードを完成させ、復活した。赤を何枚買ったのかは分からないけど、カードが5枚まで買える以上、金に糸目はつけなかったはず。そして通常モードに戻ってから連戦連勝を続けている。
それに対して復活しても再び消えていったプレイヤーは、失ったカードのみを補充しため、また敗れた。
ならば私がそのプレイヤーたちの二の舞にならないためにも取るべき道は1つしかない。
優勝さえできれば、100万、200万の借金なんて所詮、はした金よ。
復活の希望が見え、沙織の気持ちも大きくなってきた。
残り時間はあと15分。
【ファイブカード(赤)】の枚数の欄に『5』を入力し、【購入】ボタンをクリックした。
再びメッセージが現れた。
お支払方法を選択してください。
一括払い 150万円
分割6ヶ月払い ひと月 30万円
12ヶ月払い ひと月 18万円
24ヶ月払い ひと月 12万円
36ヶ月払い ひと月 9万円
そうだ、確か分割払いも可能と書いてあった。
それにしても、なんと暴利な!
あきれてものも言えないけど、迷っている暇はない。
躊躇なく36ヶ月払いを選択した。
優勝するつもりなのでどれを選んでもいいんだけど、でもやっぱり、もし優勝できなかった時のことを考えると、自然と1回の支払金額が少ないものを選んでいた。
これでこのゲームでの借金が累計400万円を超えた。
【SHOP】から戻ると、プレイヤーリストの玄もグレー状態から通常モードに戻っていた。画面右上に赤のカードが5枚並び、その下に白のカードが4枚並んでいる。
この数分間の間に、生き残っているプレイヤーが激減していた。
名前が黒くなっているプレイヤーの数はあまり変わりないけど、グレー状態のプレイヤーの数が軒並み増えている。
【RETIRE】ボタンさえ押さなければ何かがあるとまでは勘付いているけど、そこで【SHOP】を見つけられないプレイヤーが多いということだ。
そんなプレイヤーを見て沙織は少し優越感に浸った。
ランドスケープというプレイヤーからバトルの申し込みが来た。
『R』4つの玄はWと同じようにカモに見えたに違いない。
遅ればせながら私も打ち出の小槌状態になったというわけね。
ランドスケープの手役は青のファイブカードだった。
これまではこれで連戦連勝だったのでしょうけど、悲しいかな私の赤のファイブカードには敵わない。
沙織のパソコン画面の右上に青のカードが1枚追加された。
制限時間までに、あと何枚カードを増やことができるか?
先のことを考えると7、8枚は増やしておきたい。
だけど沙織の思惑通りに事は進まなかった。
残り5分を切ったあたりで生き残っているプレイヤーが続々と名前をゴールドに変え始めた。
Wもいつの間にかいなくなっている。
残っているプレイヤーとのバトルも赤のファイブカードばかりで引き分けが続いた。
復活後、沙織は結局3勝しかできなかった。
画面右上の手持ちのカードは赤5枚、青1枚、緑2枚、白4枚の合計12枚が表示されている。
この枚数でセカンドステージを勝ち抜けられるのかどうかはまったくわからない。
だけど、とりあえずは次のステージに進むことはできる。
ゲームの残り時間が1分を切ったところで、沙織は【セカンドステージへ】のボタンをクリックした。