聖夜の大聖堂(2020-12 オセロニアのクリスマス)
文字数 2,076文字
天軍本部中央大聖堂にて。
今日はクリスマスということで、ウリエルが天使の子供達に読み聞かせを行なっていた。
「——ルドルフのおかげで、サンタさんは無事みんなにプレゼントを配ることができました。めでたしめでたし」
ウリエルが語りを終えると、子供達がめいいっぱいの拍手を浴びせた。どうやら楽しんでもらえているようである。
「さて、ここで少し休憩にしましょうか。お菓子や飲み物も用意したから、ゆっくりしていってね」
「はーい!」
子供達は元気よく返事すると、我先にとお菓子の山へ群がっていった。すると、大聖堂の入り口の方から声が聞こえてきた。
「あら、ちょうどいいタイミングだったかしら?」
ラファエルとガブリエルが大聖堂にやってきた。ガブリエルは何冊か絵本を持っている。
「あ、ラファエル様だ〜」
「ラファエルだ〜」
気づいた子供達がラファエルの元へと群がっていく。
「お〜君達元気にしてたかな〜?」
ラファエルも笑顔で迎える。そんな様子をガブリエルとウリエルは微笑ましくみていた。
「相変わらずラファエルは子供達に好かれてますね」
「外見も精神も一番子供達に近いからでしょうね」
「そうでしょうね。ウリエル、追加の本はこんなところでどうかしら?」
「あら、ありがとうガブリエル。助かりました」
「後でアラーチェにも感謝してくださいね?」
実はウリエル、前日までに図書館から借りて用意した本のうち半数を間違って返却してしまっていたのだ。本人は「あらまぁ」とだけ言い、残っていた本だけを持ってそのまま読み聞かせに来たのだが、流石に心配したアラーチェがウリエルとの読書仲間であるガブリエルに助けを求めたのだった。
「もちろんですよ。あ、そこのお菓子はあなたたちも食べて大丈夫ですよ。一番壁際のものは大層甘くて評判のものでオススメですよ。ガブリエルもいかがですか?」
「——そこまでいうのなら、一つ頂こうかしら」
そう言ってガブリエルはバレない程度に駆け足で壁際のお菓子を食べにいった。壁の方を向いているので表情は見えないが、おそらく満面の笑みを浮かべていることだろう。
「そういえば、ミカエルは来ないのかしら?一応呼んではみましたが……」
ウリエルが心配そうにいうと、子供達とじゃれあっていたラファエルが答えた。
「ミカエルなら、さっきケイリーから逃げ回っていたよ」
「ケイリーから?何かあったかしら?」
「先月のエスポワル村の一件でまだ処理しきれてないことがあるんだってさ。予備費とかもいじる羽目になってるらしいからケイリーも結構怒ってたってカプシーヌが言ってたよ」
「全く、あれほど理性的に行動しろと何度も言ってるのに……一時の感情に流されるからこうもあちこちに迷惑がかかるんだとそろそろ思い知るべきです」
そういうガブリエルは相変わらず壁の方を向いている。ちょっと子供達をけしかけようかな、とラファエルは考えたが、あんまりからかうとあとで氷漬けにされそうだったのでやめることにした。
「まぁまぁ、そこまで怒らなくてもいいじゃない?」
「そうだよ、みんな楽しんでたみたいだしさ、そうだよね?」
ラファエルの問いかけに子供達は元気よく首肯する。
「エリンさんとか可愛かったよね〜」
「え〜アンナプルナ様のほうがよかったよ〜?」
子供達が口々に話す中、ガブリエルはため息をつきながらこちらを振り返る。
「あなたたちもそんなのだからミカエルもちゃんと反省しないんですよ。そこのところ、ちゃんとわかってるのかしら?」
ガブリエルはラファエルとウリエルをジト目で睨んだ。しかし当の本人立ちは笑顔を崩さず、ガブリエルは嘆息する他なかった。
「ウリエル、そろそろ時間じゃない?子供達も待ちくたびれているみたいだしさ」
「あらまぁ、では続きを始めましょうか。みんな、席につきましょうか」
子供達は元気よく返事をし、ウリエルの周りに座り始めた。ラファエルがは子供達に混ざってしれっと最前列に座っている。そんな幼子たちにそこまでして混ざらなくても……と言おうとしたガブリエルは、ふと最後列に並ぶ老天使に気がついた。
「……ザフキエル殿?」
「いかにも。如何したか、ガブリエル殿?」
「いえ、随分と珍しいと思いまして」
すると、ウリエルが口を挟んできた。
「ザフキエル様も以前読み聞かせをやったそうなんだけど、ちょっと子供達を怖がらせてしまったんですって。それで、どうしたらもう少し上手くできるのか勉強しにきたんですって」
「ウリエル殿、決してそのようなことは……」
そういうザフキエルの顔はやや赤い。
(そういえば、夏頃に騒いでいた天使たちがいたような……)
どちらかというと怪談という題材の方の問題なのでは、という気もするガブリエル。しかしウリエルの語りは上手く大いに参考になるのも事実であり、今回はあえて突っ込まないことにした。
「ほらほら、そろそろ始めますよ。お静かにしなさいな」
ウリエルの声でガブリエルは慌てて佇まいを正す。それをみたウリエルはニッコリして、ガブリエルの持ってきた絵本を読みだすのだった。
「ふふ、それでは始めましょうか。むかしむかし、あるところに——」
今日はクリスマスということで、ウリエルが天使の子供達に読み聞かせを行なっていた。
「——ルドルフのおかげで、サンタさんは無事みんなにプレゼントを配ることができました。めでたしめでたし」
ウリエルが語りを終えると、子供達がめいいっぱいの拍手を浴びせた。どうやら楽しんでもらえているようである。
「さて、ここで少し休憩にしましょうか。お菓子や飲み物も用意したから、ゆっくりしていってね」
「はーい!」
子供達は元気よく返事すると、我先にとお菓子の山へ群がっていった。すると、大聖堂の入り口の方から声が聞こえてきた。
「あら、ちょうどいいタイミングだったかしら?」
ラファエルとガブリエルが大聖堂にやってきた。ガブリエルは何冊か絵本を持っている。
「あ、ラファエル様だ〜」
「ラファエルだ〜」
気づいた子供達がラファエルの元へと群がっていく。
「お〜君達元気にしてたかな〜?」
ラファエルも笑顔で迎える。そんな様子をガブリエルとウリエルは微笑ましくみていた。
「相変わらずラファエルは子供達に好かれてますね」
「外見も精神も一番子供達に近いからでしょうね」
「そうでしょうね。ウリエル、追加の本はこんなところでどうかしら?」
「あら、ありがとうガブリエル。助かりました」
「後でアラーチェにも感謝してくださいね?」
実はウリエル、前日までに図書館から借りて用意した本のうち半数を間違って返却してしまっていたのだ。本人は「あらまぁ」とだけ言い、残っていた本だけを持ってそのまま読み聞かせに来たのだが、流石に心配したアラーチェがウリエルとの読書仲間であるガブリエルに助けを求めたのだった。
「もちろんですよ。あ、そこのお菓子はあなたたちも食べて大丈夫ですよ。一番壁際のものは大層甘くて評判のものでオススメですよ。ガブリエルもいかがですか?」
「——そこまでいうのなら、一つ頂こうかしら」
そう言ってガブリエルはバレない程度に駆け足で壁際のお菓子を食べにいった。壁の方を向いているので表情は見えないが、おそらく満面の笑みを浮かべていることだろう。
「そういえば、ミカエルは来ないのかしら?一応呼んではみましたが……」
ウリエルが心配そうにいうと、子供達とじゃれあっていたラファエルが答えた。
「ミカエルなら、さっきケイリーから逃げ回っていたよ」
「ケイリーから?何かあったかしら?」
「先月のエスポワル村の一件でまだ処理しきれてないことがあるんだってさ。予備費とかもいじる羽目になってるらしいからケイリーも結構怒ってたってカプシーヌが言ってたよ」
「全く、あれほど理性的に行動しろと何度も言ってるのに……一時の感情に流されるからこうもあちこちに迷惑がかかるんだとそろそろ思い知るべきです」
そういうガブリエルは相変わらず壁の方を向いている。ちょっと子供達をけしかけようかな、とラファエルは考えたが、あんまりからかうとあとで氷漬けにされそうだったのでやめることにした。
「まぁまぁ、そこまで怒らなくてもいいじゃない?」
「そうだよ、みんな楽しんでたみたいだしさ、そうだよね?」
ラファエルの問いかけに子供達は元気よく首肯する。
「エリンさんとか可愛かったよね〜」
「え〜アンナプルナ様のほうがよかったよ〜?」
子供達が口々に話す中、ガブリエルはため息をつきながらこちらを振り返る。
「あなたたちもそんなのだからミカエルもちゃんと反省しないんですよ。そこのところ、ちゃんとわかってるのかしら?」
ガブリエルはラファエルとウリエルをジト目で睨んだ。しかし当の本人立ちは笑顔を崩さず、ガブリエルは嘆息する他なかった。
「ウリエル、そろそろ時間じゃない?子供達も待ちくたびれているみたいだしさ」
「あらまぁ、では続きを始めましょうか。みんな、席につきましょうか」
子供達は元気よく返事をし、ウリエルの周りに座り始めた。ラファエルがは子供達に混ざってしれっと最前列に座っている。そんな幼子たちにそこまでして混ざらなくても……と言おうとしたガブリエルは、ふと最後列に並ぶ老天使に気がついた。
「……ザフキエル殿?」
「いかにも。如何したか、ガブリエル殿?」
「いえ、随分と珍しいと思いまして」
すると、ウリエルが口を挟んできた。
「ザフキエル様も以前読み聞かせをやったそうなんだけど、ちょっと子供達を怖がらせてしまったんですって。それで、どうしたらもう少し上手くできるのか勉強しにきたんですって」
「ウリエル殿、決してそのようなことは……」
そういうザフキエルの顔はやや赤い。
(そういえば、夏頃に騒いでいた天使たちがいたような……)
どちらかというと怪談という題材の方の問題なのでは、という気もするガブリエル。しかしウリエルの語りは上手く大いに参考になるのも事実であり、今回はあえて突っ込まないことにした。
「ほらほら、そろそろ始めますよ。お静かにしなさいな」
ウリエルの声でガブリエルは慌てて佇まいを正す。それをみたウリエルはニッコリして、ガブリエルの持ってきた絵本を読みだすのだった。
「ふふ、それでは始めましょうか。むかしむかし、あるところに——」