強引
文字数 1,547文字
PM00:32
ｰｰ２階廊下
やっぱり麻矢さん待っときゃよかったかな…。
あぁ、すごい人混み…。
考えてみれば、普段教室から出ることもないし、放課後はほとんど麻矢さんと一緒だったからな…。
うわぁ、なんか気分悪くなってきた…。
おっと。
わっ！ご、ごめんなさい！
ちょっとぼんやりしてて！
あぁ。そんなに謝らなくて大丈夫だよ。
…ん？
えっ。
あの、何か…？
いや、ちょっと知人に似ていたものでね。
すまない。
君は、一年生か？
はい。
えっと、あなたは…？
三年だ。
一年生か。ちょっと私に付き合ってもらえるだろうか？
え！あ、あの！僕ちょっとこれから自分のクラスの手伝いが…。
あまり年齢を振りかざすのは好きじゃないが、断られるのも面倒だ。
一年生くん。先輩のお願いは素直に聞きたまえ。
え！いや、でも…！
ふむ。
一年生の学級の出し物は…お化け屋敷、メイド喫茶、占いもどきだったな。
メイド喫茶は先程見てきたが、特段手伝いを必要としていたようには見えなかった。
占いも、いわゆるウェーイ系ばかり。
君が馴染めるとは思えない。
となると、お化け屋敷だが、お化け役には見えない。受付も、それだけ人見知りでは難しいだろうな。
あまり学級の中核にいる生徒でも無さそうだ。
ということは、天井からぶら下げてたあのぐにゅぐにゅした何かを吊るす役。
どうかね。
えっ…！？
実は私は探偵部の部長なのだよ。
当たったんじゃないか？
あ、当たり、です…。
よし、それじゃあ私に手を貸してくれ。
いや！あの！だからって僕が手伝いをすっぽかしていい理由には…！
そのぶら下げてた何かだが、私が出た時になにやら大声で怒鳴り散らしているご婦人がいてね。
詳しいことはわからないが、撤去されたようだった。
あー…
さて、これで教室に戻らなきゃいけない理由はないね？
…何を手伝えばいいんでしょうか？
一年一組の図書委員を探しているのだよ。
…あぁ、木浦さんですね。
おや、知っているのか。
あぁ、そうか。君も一組だったな。
親しいわけではないですけど。
それじゃあ、探しに行きましょう。
心当たりがあるのかね？
多分、意中の彼を誘いに…。
PM00:47
ｰｰグラウンド
あれかい？
あれです。
…いつまでブーメランやってるのよ…！
…誘いにくいじゃない…！
なにやらぶつぶつと呪詛を吐いているようだけれど。
あの呪いを終わらせてあげましょう。
あのブーメランをやっている謎の集団の中の一人に用事があるんだね？
真ん中の彼です。板垣くん。
とりあえず私の用事を済ませてしまおう。
あ、ちょっと！
やぁ木浦くん。
うぇっ！？
もう少し可愛らしい悲鳴はないのかね？
それじゃああんまりだと思うよ。
す、すみません。
え？あの、どちら様でしょう…。
同じ図書委員の三年生だよ。
あ！図書委員長…！
すみません。それで私に何か用事ですか？
明日の委員会が無くなったから伝言して回ってるんだ。
さて、伝えたし私はこれで。
あ、はい…
踏み出さなければ何も始まらないのだよ。
さぁ、行ってきたまえ。
え、ちょ、委員長！？
ん？…木浦？
じ、次郎！
ちょっと来て！
わ、なんだよ！
俺ブーメランの練習が…
いいから！
上手くいったようだね。
…強引すぎませんか？
女子とはあれくらい強引でいいものだと思うよ。
板垣くんとやらも、それほど嫌がっているようには見えない。
いや、強引なのは先輩のことです。
あぁ、私か。
ふふん。結果オーライとしようじゃないか。
それじゃ、僕はこれで。
待ちたまえ。
まだ何かあるんですか？
一人でいるのも退屈なんだ。
せっかくだからもうしばらく付き合ってくれないかね？
えぇー…。
君、意外と嫌なことは嫌って言うんだね。
気が弱そうだから、押したら行けるかと思ったんだけれども。
普通の人と話してると萎縮しますけど、先輩も十分変な人なので。
君も大概変な人さ。
さて、行こうじゃないか。
…少しだけですよ。
