第3話 最初のメッセージ/恐怖の始まり

文字数 2,090文字



 どれくらい時間が経ったのか。僕は目を覚ました。

 暗闇からの闇。一瞬、どこにいるのかわからなくなった。

 カーテンすら閉めていたので外の光は入らないし、風もない。

 けれどすぐに部屋の狭さを肌で感じ、ここが自分の部屋で、寝る前と変わりない事に気づいた。

 ただ時間が何時なのか良くわからない。

 暗闇に腕を伸ばし、勘と手先の感触だけでスマホを探し出すことに成功した。

 僕のスマホは頭がいいから、持ち主の指が触った瞬間に本人を特定し、ご主人様が持ち上げた事もよく知っていた。

 自動でロックが解除されて画面が灯る。僕はそこを見た時に、時刻を知るよりも先に、映し出されている通知に気づいた。

 メッセージアプリの着信だ。連絡先は個人も企業もあらかた消してしまった。非登録者はブロックしてるから、来るとしたら四人の誰かからだ。

 寝ぼけていたし、考えもまとまらなかった。まあ見るだけなら良いかと通知をタップした。ローリングサークルが三周半して、ようやくメッセージが表示された。

 それは一枚の画像だった。一言でいうなら、メッセージの中にあるメッセージ?

 目がおかしくなったかと思った。けれど上下の目蓋(まぶた)を寄せて見てみると、答えが分かった。

 その画像の正体は、メッセージアプリの受信画面をスクリーンショットで保存した物だった。それをさらに添付して来たものだから、アプリの中で、メッセージが合わせ鏡みたいに、重なって見えたんだ。

 画像の上に吹き出しで『変なメッセージ来た』とあった。

 送信者の名前を見ると、トシカズとなっていた。

 それで肝心の画像の中のメッセージはというと……僕はそれを見て、頭を(ひね)った。

――――――

(画像の中のメッセージ)『ワレタ……』

――――――


 え、これだけ? 何のことかわからない。

 メッセージの横にある時刻を見ると、十分前となっていた。ほんの少し前だ。

 トシカズから追加で推測とか意見とか、そんなメッセージは送られてきていない。とりあえず共有――以上。素朴なヤツらしい行動だった。

 いつもならここで、お笑いタレントの台詞スタンプで『それで?』って返すんだけれど、いまは出来ない。関係は断絶されているんだから。

 気になって眠気も覚めてきた。誰か返さないかとイライラしていると、早速返事があった。

――――――

(あい) 『ナニコレ~?』

――――――

 いま公開している映画の主人公でお姫様のキラキラスタンプ。アイだった。お喋りは反応も早い。

――――――
(トシカズ)『わからない。突然きた』

(あい)  『ダレから?』

(トシカズ)『雪谷から』
――――――

 雪谷(ゆきたに)は同じクラスの男子だ。サッカーが得意でフォワードとして活躍している。ただし隣町のサッカークラブでの話。そのチームに移籍したトシカズとは、友達として繋がっているみたいだ。

――――――
(あい)  『いきなり来たの~?』

(トシカズ)『うん、意味分かんない』

(一夜)  『ぞーんび! にゃ!』
――――――

 いきなり一夜(イチヤ)が入ってきた。しかも挨拶代わりの猫娘ゾンビスタンプとか、意味がわからない。しかもこのキャラはイチヤのお気に入りだったりする。

――――――

(一夜)  『名探偵登場……って、これ何! 意味不明なんっすけど!!』

――――――

 イチヤはSNSの中だけはやたらと話す。おそらく、いろんな性格のキャラになりきって、喋ってるんだと思う。

――――――
(トシカズ)『うん、意味分かんないんだよ。だから相談したくて』

(一夜)  『雪谷からワレタって!! 何か暗号かなあ?!?!』

(あい)  『いーちーキーた! ばんこんわ~』
――――――

 若干、アイだけが一人ずれている気がする……そこへさらにメンバーのラスト一人がやってくる。僕は何故かドキッとした。

――――――
(マリア) 『ねむーい。わお。みんな揃ってなに盛りあがってるの?』

(トシカズ)『おーマリアだ。』

(あい)  『まりまり~★』

(一夜)  『にゃー! 揃ったね!! あ、一人足らないけど!』

(マリア) 『いま見たよ……うん、イチヤに賛成。イミフだね。これだけ?』

(トシカズ)『うん、そうなんだよ。あ! まって、また続きが来たみたい』

(あい)  『ワクワク~♪』

(一夜)  『(我は黙して待つナリ……)』

(マリア) 『……』
――――――

 僕も待っているうちの一人。その間にビニール袋の山から、飲みかけのペットボトルを探し出し、あぐらをかいた脚の上に置いた。

 メッセージが来ない。遅いな……トシカズ。

 パンタグレープのフタをひねって開けようとした時、送られてきた次の画像を見て、僕の手が止まってしまった。

――――――

(画像の中のメッセージ)『オソワレタ……ニゲラレナイ……』

――――――
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