「夢を運んだ猫」ねむ双

文字数 824文字



2018/06/20 09:24

pepe_pero

夢を運んだ猫

ねむ双


「どうして……どうして俺はっ!」

「晃汰……」

 晃汰が、テーブルに拳を打ち付けた。

「どうして俺は猫アレルギーなんだぁぁぁぁぁぁ!」

「そればっかりはしょうがないよ……。今回の猫カフェは諦めよ?」

「陽菜ァ……」

 晃汰が、私のことを見上げる。顔は、涙でぐちゃぐちゃに崩れていて、少し引いてしまった。猫カフェに行けないのは少し残念だが、晃汰に無理をさせてまで行きたいとは思わない。

「晃汰、気分転換に散歩に行かない?」

 晃汰の気分を、少しで紛らせようと、私は提案してみた。

「……わかった。ちょうど、夜風に当たりたい気分だったし……」

「じゃあ、行こっか」

 そうして私と晃汰は、近くの公園まで散歩に行くことにした。


 近所の公園にたどり着いた私と晃汰は、夏至のためか、まだ明るい空を見上げながら、ベンチに座ってだべっていた。

「なぁ、別に俺に気を使わなくていいんだよ?」

「別に気は遣ってないよ。ただ、晃汰と行かなきゃ、楽しくないから……」

「陽菜……」

 我ながら恥ずかしい事を言ってしまったと思い、私はプイっと、顔をそむけた。すると、顔を向けた先の茂みから、白猫が飛び出してきた。

「あ、猫」

「ほんと!?」

 晃汰がベンチが飛び出して、猫の方へと身を翻した。白猫は、特に驚いた様子もなく、すたすたと歩きだした。

「ねぇ、着いていってみようか」

 私が小走り気味に、白猫の後を追った。

「あ、陽菜! 待って!」


 白猫の後を追った私たちは、気が付くと見知らぬ空き地にたどり着いていた。

 そこには、夢のような世界が広がっていた。

「「わぁ……」」

 私と晃汰の目線の先には、たくさんの猫たちがくつろいでいた。

「こんなに猫が、いっぱいいるなんて……」

「ねぇ、陽菜!」

 晃汰が突然、大声を上げて私を呼んだ。

「触れた……触っても何ともならない! 奇跡だ……。

 感動のあまり、晃汰は滝のように涙を流している。

「よかったね、晃汰」

 そう呟くのと同時に、白猫が、にゃーと小さく鳴いた。


2018/06/20 11:04

pepe_pero

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