夢を運んだ猫
ねむ双
「どうして……どうして俺はっ!」
「晃汰……」
晃汰が、テーブルに拳を打ち付けた。
「どうして俺は猫アレルギーなんだぁぁぁぁぁぁ!」
「そればっかりはしょうがないよ……。今回の猫カフェは諦めよ?」
「陽菜ァ……」
晃汰が、私のことを見上げる。顔は、涙でぐちゃぐちゃに崩れていて、少し引いてしまった。猫カフェに行けないのは少し残念だが、晃汰に無理をさせてまで行きたいとは思わない。
「晃汰、気分転換に散歩に行かない?」
晃汰の気分を、少しで紛らせようと、私は提案してみた。
「……わかった。ちょうど、夜風に当たりたい気分だったし……」
「じゃあ、行こっか」
そうして私と晃汰は、近くの公園まで散歩に行くことにした。
近所の公園にたどり着いた私と晃汰は、夏至のためか、まだ明るい空を見上げながら、ベンチに座ってだべっていた。
「なぁ、別に俺に気を使わなくていいんだよ?」
「別に気は遣ってないよ。ただ、晃汰と行かなきゃ、楽しくないから……」
「陽菜……」
我ながら恥ずかしい事を言ってしまったと思い、私はプイっと、顔をそむけた。すると、顔を向けた先の茂みから、白猫が飛び出してきた。
「あ、猫」
「ほんと!?」
晃汰がベンチが飛び出して、猫の方へと身を翻した。白猫は、特に驚いた様子もなく、すたすたと歩きだした。
「ねぇ、着いていってみようか」
私が小走り気味に、白猫の後を追った。
「あ、陽菜! 待って!」
白猫の後を追った私たちは、気が付くと見知らぬ空き地にたどり着いていた。
そこには、夢のような世界が広がっていた。
「「わぁ……」」
私と晃汰の目線の先には、たくさんの猫たちがくつろいでいた。
「こんなに猫が、いっぱいいるなんて……」
「ねぇ、陽菜!」
晃汰が突然、大声を上げて私を呼んだ。
「触れた……触っても何ともならない! 奇跡だ……。
感動のあまり、晃汰は滝のように涙を流している。
「よかったね、晃汰」
そう呟くのと同時に、白猫が、にゃーと小さく鳴いた。