06
文字数 690文字
頭の上で鳴り続ける目覚ましへと手を伸ばし、スイッチを叩くとようやく騒音が止まる。
もう少し眠っていたい衝動に駆られるが、あまりゆっくりしてると学校へ遅れてしまう。朝食を準備している母にも迷惑がかかるだろう。
睡眠の誘惑を振り切り、まだ少しけだるい脳へと酸素を送り込みながらベットから起き上がる。
カーテンを開けると、今日も薄い雲が広がり空を覆っている。それでもところどころに隙間があり、わずかながらに陽光がさし込んでいた。
ふと、昨晩みた夢を思い出し、少しだけ笑いがこみ上げる。
ひとりの少女に騙されながらも、魔法使いとその配下を倒し、妖精を救い出す物語。それはお遊びの物語ではあったけれど楽しく、そして充足感のあるものだった。
いままでシロードであったときのことを思い出すと、後悔ばかりが胸を締め付けていたが、昨晩の夢はそんなことはなかった。
鏡の前に座り、シロードとはまるで似ていない黒髪にブラシを通す。
「そうだな、たしかに私は最後に希望を掴みとることに失敗した。そのことはとても辛いが、だからといって、そのことだけをずっと悔やんでいるわけにもいくまい。今の私は海道剣なのだから……」
それは自分の中の枷を緩めてくれたようだった。
「そういえば……」
昨日の神代くんとゲーム後に襲来した、魔魅の言ったことを思い出す。
魔魅の言葉に神代くんはうなずいていたけど、昨日の今日でそんなに簡単にゲームができるものなのだろうか。少し心配だ。
それでも、こんどはどんな冒険が待っているのかという、楽しみにしている気持ちの方が大きいのだけれど。