詩小説『ことの終わりに』3分の恋。全ての大人へ。

エピソード文字数 587文字

ことの終わりに

祖父から譲り受けた古民家に彼女。
テーブルの上、雑誌、灰皿、珈琲。
コートを脱ぎ捨て、手探りマイルドセブン。
キャミソールで、煙草を吹かす。

耳にかけた黒髪。彼女は先生。
僕の指が外した、彼女の眼鏡。
「上手になったね。キス」
なんて悪戯に言うから、キスを止めなかった。

僕の髪を掻き分け、おでこを撫でた。
その指先は蜜柑の匂いがした。
畳の上に脱ぎ捨てられた服。
形を変えて、萎れていた。

畳の上、倒れるように寝転んだ。
「ちょ、ちょっと」
僕の勢いに思わずたじろぐ彼女だが。
笑いが零れるほどに余裕だった。

「触ってみたかったんだよね」
だってさ。
若いだけの僕は、精一杯だった。
彼女の指が外した、僕のブラウスのボタン。

毛布をふたりして被ったんだ。
ストーブの前、寄り添って。
ヤカンは湯気を作っていた。
そこには生温い幸せが流れるから。

「でもさ、先生って恋人居ないの?」
「うん? 居ないよ」
「なんか、意外だな」
「そう?」
「そっか、まぁ、想像出来ないもんな、先生が結婚だなんて」
「してるよ」
「へっ?」
「だから、してるよ」
「してる?」
「うん」
「何を?」
「結婚」
「えっ?」
「だから、結婚」
「えーーーーー!」
「何、びっくりしてんの?」

この関係に名前をください。
若さ故の過ちに。
ヤカンの煙は天井に消えた。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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