04:晩餐の謎肉

文字数 3,909文字

館山氏はあなたたちを大食堂に案内し、にんにくも調理して持ってきてくれました。




まさきちゃん、にんにく出てきたよ
にんにくをどうぞ
モグモグ、モグモグ(一心不乱)
先生どうしました?
ちょっとつらいことがあったのでゴハン食べようと思って
いただきますしてないのに(ジロッ)
モグモグ、モグモグ……
(どんどん不仲に)




あなたたちの目の前には食事が置かれています。

ご飯とコーンスープ、大きなチキンステーキのような物、付け合わせにはキャベツが盛り付けられ、ドレッシングはゴマだれです。




わお♪
わぁい、洋食
私はゴマだれじゃないとダメなんですよ
(そこは和風を入れてくるんだ)

館山さんお料理お上手ですね

御自分で作られたんですか?

ああ、そうなんですよ

一人暮らしも長いので

やっぱり一人暮らしらしいですよ




まさきちゃんは迅之介さんにコソコソと言います。




この大きなお屋敷に一人暮らしされてるんですね
昔は使用人もいたのですが

実はこの屋敷は私の物ではなくてですね、曾祖父の物でして

曾祖父が最近亡くなり譲り受けたのです

寂しくないですか? 一人で

私も早く退職してゆっくり過ごしたいと思っていたところだったのです

いきなり財産が入ったので仕事を辞めて一人でゆっくりと余生を過ごしています

なるほど
館山さんはおいくつですか?
私は 48 です
若く見えますね
48 か、いけるな✨
何がいけるの?

皆さん、メインディッシュを食べてください

ああ、もう先生は食べてくれてますね

このにんにくのヤツでしたっけ

それはメインディッシュではないです

肉です

お肉?

とても美味しいです

それは大変珍しい肉なんですよ
そんなのいただいちゃっていいんですか?
ジビエですか?
ちなみに何のお肉なんですか?
みんな食べてるかんじでいいですか?

まさきはまだ見てます

いただきますしてないので

まさきちゃん食べないの? モグモグ
美味いよ~
みんなもう食べ始めたんですか?
いただきますしましたー




迅之介さんとまさきちゃんは手を合わせて「いただきます」しました。




いただきます




あなたたち全員が出された肉を食べ始めると「お肉が何かでしたよね」と館山氏が口を開きました。




実はそちら、カエルの肉なんですよ
ほーー

へー、初めて食べました

鶏肉みたい

食ってみたかったんですよね

近くの池にカエルがたくさん出るので、そのカエルを加工して冬の保存食として冷凍庫に入れているんですよ

美味しいでしょう?

美味しいですね
自分でですか?

実は以前、研究員をしていまして。

生物科学のほうで、いろいろな人体……人体じゃないや、ゴフッゴフッ

(いま何か危ないワード出た)
いろんな動物に薬品を投与して反応を見るような実験をしていて、その時カエルなどの取り扱いも学びました

そうなんですか✨

是非ちょっとお話を伺いたいです

僕も生物学とか好きなので

先生と話が合いそうですね

いやあ、よかった

ここにずっといるという訳ではないのですが、独りだと自分の話をすることはなかなかなくて

皆さんには災難でしたが、君たちが来てくれて本当に良かったですよ

こちらこそ助かりました
ゴハンおいしいです
館山さんがいなかったら僕たちは最早野垂れ死んでましたよ
あの、お願いがあるんですけど
はいはい
かりんちゃんのゴハンをどうしようかなと思ってて、おかゆとか作ってもいいですか?
実はもう準備しています
カエルですか?

いえいえ、リゾットを作りました

シチューの素があったのでそれを使ってリゾットをね

(けっこー重たい)

ちょっとそれは食べられないんじゃないですかね

まだ目を覚まさないですし

実は私、病人の介護などしたことがなくて、そういった料理とかよく分からないんですよ

おかゆは……水多めで作ればいいんですかね?

水多めでシャバシャバで作れば大丈夫ですよ

ここにライスあるので、ライスだけいただけたらおかゆ作ります

じゃあ厨房のほうで、材料が何処にあるかとか後で教えるので作ってもらいましょうか

すみません

お手数をお掛けします

実は街の病院に電話しようとしたのですが、吹雪の所為で館の電話が壊れていましてね
大変じゃないですか
私一人だったら車で降りていけばいいし、さっきも言った通り保存食もありますし、特に問題は無かったのですが
かりんさんをなるべく早く病院に連れて行かないといけないと思うので、明日の朝、私のほうで先に病院に連れて行きますよ
スマホとかつながらないんですかね




館は山の中なので圏外になりやすく、吹雪いているので電波も繋がりにくい状態です。

インターネット接続を必要としないアプリなどは起動できます。




ダメですねー、つながらない

結構山奥だからな

さっき先生が一応お薬飲ませてくれたし、今日は無理にかりんちゃんを動かさないほうがいいですかね?
そうだよねえ

夜も更けましたしね

吹雪は少し止んでいるようですが、いま降りていくと最悪の事態も起こり得るので、明日の朝にしたほうがいいでしょう

そうですね、それでお願いしましょう
お世話になります
ちなみにその時に僕たちが帰れる手段も探して欲しいんですけど
大きなレンタカーに乗り換えて帰ることができますよ

タクシー呼べばいいんじゃない?

ここタクシー、呼べば来てくれますか?

確認してみますね

あ、ダメだ、車捨てていけないや

かりんちゃんの車、置いて帰れないから……

アレ、放置してるな

後で処理しないとね

とりあえずかりんちゃんが治ってから考えますか、車のこと
どうせ電話が繋がらないからどうしようもない
そうですね
朝まではね
とりあえずかりんちゃんが元気になることが一番かな
屋敷は広いですが特に何も無いので、まあ、好きな時間に寝ていただいて問題ありません
この屋敷、地下があるみたいなんですけど
実はこの屋敷は元々「ヘビの神様」を祀った異教の神殿があったそうなんですよ
ほう、ヘビ
異教?✨✨✨




海苔蔵さんはキラキラした目をしています。




先生の好きそうな話ですね
それを潰してこの屋敷を建てたらしく
潰して、ですか?
元々社のようなものがあって、それを潰してこの家を建てたんですか?

そうです

この屋敷はその時からのものですが、隣の蔵や地下は当時のままなのです

じゃあ昔から地下がある?

へえ~~

是非見たいんですけど✨

いやいや、そこはなかなか

空気も悪いですし

どのくらい古いものなんですか?

年代は大体……どのくらいだったかなあ

私も確かではないのですが百年前くらいと言ってましたかな

曾祖父よりももっと前のおじいさんの頃からと言っていたから……

百年かあ

気になります、とても気になります✨

見たいです✨✨✨

地下には行ってもいいんですかね?




まさきちゃんは迅之介さんにコソッと言いました。




行きましょう、後で
勝手に行っても大丈夫ですか?
大丈夫でしょう
(悪い大人だな)
フフフフ

ちなみに地下はカギで閉められてるんですか?

階段なんですか?

地下への階段へ行く前に扉がありまして、そこはカギを閉めています

特に用事もありませんし、常にあそこはカギが閉まってますね

なるほど
へえ。カギ……
蔵も当時のまんまって言ってましたけど、何か入ってるんですか?

神殿の儀式で使っていた物があるようですが、私も流石に全て見ている訳ではないのです

開かずの間というかんじですよ、あそこは

何かすごそうですね
百年前の蔵か
足下も暗いですし灯りもないので怪我をすると思います
かりんさんが良くなって落ち着いてから、また屋敷に遊びに来てもらったときに案内しますよ
来ていいんですか?
いいですよ、勿論
じゃあ連絡先とか交換、します?
ああ、いいですよ
LINE ですか
LINE、交換しときます?
ネットつながんないよ
そっか(ガッカリ)

じゃあ LINE の ID だけ教えてもらいましょうか

私のほうから送りますよ

ここってネットつながってないんすよね?
でも LINE の ID だけ教えとけば後で検索してもらえるじゃん
この家自体がネットつながってないんじゃない?
吹雪だからじゃないの?
イヤイヤ、有線で引いてればそれにつないでいけるやん
えっ、この家はネット環境がないんですか?
ないんすよね?

ネット環境はないですね

私はあまり使わないので

じゃあ電話番号を教えてもらってもいいですか?
ああ、いいですよ




そう言って館山氏はまさきちゃんに電話番号を教えてくれます。




じゃあ自分も後で教えてもらお
酢太郎さんはいいです
後日、案内よろしくお願いします
そんな面白いものがある訳じゃないですよ
イヤイヤ、すごく興味があります✨
カエルの肉の時点でもうだいぶ面白かったです
それぐらいですよ、サプライズは
(サプライズ……)

結構お茶目ですね

お客さんが来たときはそんなかんじで?

屋敷に来たゲストに振る舞ってみんな美味しいと言った後に、実はカエルの肉なんですよと言って喜んでもらうのが好きでして
みんな喜ぶんですね
美味しかったですよね?
カエル以外にも何か変わった食材はあるんですか?

まだそこまでは手は出してないですね

ワニの肉とかあるらしいので、そのへんもまた……

まさき、ワニ食べたーい
今は流石にワニはないですよ
じゃあ今度はワニを
今度来るときはワニ食べたいなあ~
(すげえな、JK。自分がかわいいことを分かってやがる)
ちょっと定期検診に行ってきます




と言って、海苔蔵さんはゲストルームBへかりんちゃんの様子を見に行きました。

かりんちゃんはまだ眠っているようです。




ごちそうさまでした~
そろそろごちそうさまします、まさきも
ごちそうさまでした

お粗末様でした

片付けておきますので、皆さんゆっくり休んでください

お皿とか片付けるの手伝いますよ
まさきさんは厨房に来てもらっておかゆを
はい。ザバーッと作ります




まさきちゃんはサービスワゴンに食器を乗せて厨房に押していきました。




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登場人物紹介

楠木 迅之介(くすき じんのすけ)

骨董品屋。

しょっちゅう海外を飛び回っているらしい。

他の人に比べて口数は少なめ。だが年代物には執着を示す。

安田 酢太郎(やすだ すたろう)

バックパッカー。

いつも酢を持ち歩いている。

もしかしたら一番良識のある人物かもしれない。



▼その他の登場作品

【TRPGリプレイ:しゃりん卓】あまいのににがい

米原 海苔蔵(こめはら のりぞう)

闇医者。

オカルト大好き。

病人・怪我人がいるときは頼りになるがたまに処置をミスする。

まさき

女子高生。

かわいいので多少のワガママは許されると思っている。

なぜか楠木迅之介と割と気が合うようだ。

時雨 かりん(ときさめ かりん)

推定20~21歳。

ワゴン車を乗り回す。スキーの腕前はふつう。

館山 幸三(たてやま こうぞう)

近年曾祖父の遺産である土地や屋敷を相続し、雪山の麓の豪邸に住む。

以前は研究職に就いていたらしいが、余生をエンジョイする為に早期退職。

しゃりんさん(キーパー)

初心者ぞろいのプレイヤーたちを真理へと導こうとする天の声。

ダイス

運命を左右する無慈悲な無機物。

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