第2話 帰還

文字数 690文字

帰って…きた。


夏の終わりに。


彼女が。


信じられなかった。


彼女が去って、何度の夏が過ぎただろう。


彼女が、本当にオレのところに帰ってくるなんて、夢じゃないだろうか。


これは、本当に本当のことなのか?


彼女が帰ってくるという連絡を受け、オレは迎えに行った。


地響きが鳴り響く。



彼女が扉から出てきた。


手を振るオレの横を、彼女は通りすぎていった。


気づくはず、ないか…。


オレも、すっかり変わってしまった。


もう、彼女の知ってるオレじゃないんだろうな。


こんなオレを見たら、彼女はどう思うだろう。


…でも、何故だろう。


こんなに何度も夏が終わっていったのに、彼女は、ここを去った日とまるで同じに見える。


向こうでは、流れていた時間の感覚が違うのだろうか。



思いきって、彼女の背中に呼び掛ける。






「……お帰り!!」


彼女が、振り返り、オレをじっと見つめる。


「……マサオ?」


オレは、うなずいた。


「お帰り…母さん」


「えっ!?アンタ、マサオなの~!?やぁだ、ふけちゃって!どーしたのー!」


「どうしたって…母さんがあっちに行ってから、もう30年だよ…そりゃ、オレだってふけるさ。」


「えっ!30年!?そんなに経ってたの~!?じゃあ、わたし、98才じゃな~い!あはは!ウソでしょ~!えっ、もしかして、冥王星って、時間の感覚ずれてるの!?ラッキー!」





次の日、冥王星から帰還した母さんのコメントが、新聞に掲載された。


『30年の時を超え、冥王星から奇跡の生還!』

「まさか、時間の流れがこんなに違ったなんて、ホントに思わぬところでもうけました~!ラッキーラッキー!行ってよかった~!冥王星、サイコー!」高橋カツ子さん(98)



母は、偉大なり。




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