手荷物問題

文字数 3,299文字


リュックが重い。
ずっしりと肩に食い込むし、歩く速度が遅くなるし、転ぶときには重さで必ず尻もちになるくらいに重い。
これまで何度も、できるだけ荷物を減らそうと試みている。そのたび、持ち歩くものは減っているはずなのに、それでも重い。
いやまてよ、前回見直しをしたのっていつだっけ? そのときよりも今は荷物が増えているんじゃないかしら。除菌スプレーにウエットティッシュ、マスクの予備に、ゴミ袋にするための小さなビニール袋がいくつか。エコバッグをサイズちがいで3つ、4つに、風呂敷が1枚。これだけでもけっこうな重さになる。
お財布、ハンカチ、ティッシュ、手帳、メモ帳、現在進行形の書き物用のバインダーにペンケース。目薬2種、リップクリーム、かゆみ止め、頭痛薬2回分、スマホのイヤホンが入ったポーチ。iPad、iPhone、いつも持っていないと不安なものはこれくらい。ここに、水筒、お弁当、お仕事用の手帳やケータイ、イヤホン、ID、ミニキーボード、が加わることもある。読みかけの本や雑誌を1、2冊入れることもあるなぁ。
これらすべてでリュックの中に収まる量なのだけれど、とにかく重い。

外出の機会が減り、遠出もしなくなったからか、最近の私はほんの少し出掛けるだけで疲れ、荷物の重さに立ちすくむことがある。
体力の増強も必要だけれど、これは荷物をなんとかしなければどこにも行けない人間になってしまう。そんな気がした。
それに加え、以前からときどきあっためまいの回数が、ここのところ増えているのも気になる。

先日、雨上がりで買い物に出た日、つるんとしたドラッグストアの床で滑ってしまった。なにがどうなったのか、あっと思う間もなく、気づいたときにはもう尻もちをついていた。幸いケガはしなかったけれど、お尻と足と肘と、ジンジンする場所が何か所かあり、その直前に買ったばかりのトマトがつぶれていた。
重い荷物をなんとかしよう。そう決意した。

リュックをひっくり返し、中身を並べて考える。荷物を減らすぞ!

でもね、いざなにかを取り除こうと思っても、取り除くものがないのよ。
なんとなく出がけに目についたものや帽子やサングラスやを放り込む癖はすでに改善し、必要だと思うもののみを持ち歩いているのだもの。
それでも重いのよね。ああ、なんとかしなくっちゃ、と考える。

こういうとき、片づけ本なんかでは、「まずは思い込みから見直そう!」となる。そうだ、ひとつも取り除けないなんてことはないはずだ。見直そう。
このご時世、衛生関連は取り除くと考えるのは止めたい。除菌スプレーにウエットティッシュ、マスクの予備に、ゴミ袋にするための小さなビニール袋は見直しの対象外としてリュックに戻す。他のものをひとつずつチェックしよう。

パッと見て、多いな、と思うのはエコバッグだ。買い物をする予定がないときでも、もしもに備えて持ち歩いている。こんなに必要だろうか? 前回使ったのはいつだろう? どれを使っただろう? 空を見つめて考える。
あれ、これって使うから持って歩いているのではないな。正確には、一度出してしまったら次に入れなおすのが面倒で持ち歩いているだけじゃないか、と気づく。
うむ、減らそう。予期せぬ買い物をしても、それが小物だったら、むき出しのままリュックに入れたらいい。リュックに入れたくないものを入れるためのものを一つ二つ持つことにして、あとのバッグは、面倒がらず必要があれば持ち出すスタイルにしよう!
そうと決まれば次のステップだ。予期せぬ買い物をしたとして、そのままリュックに入れたくないものを考える。
アイスクリーム!
そうだな、結露して水の出るものはそのままリュックに入れたくないから、あとは冷たい飲み物類だろうか。汁がでるようなもの、お弁当やお惣菜も入れたくないな。
となると、ちょっとスーパーに寄って帰ろうとなったときに必要なサイズのエコバッグだけあればよさそうだ。念のため、(これが余計な考え方ではあるけれど)、大好きなアイスクリームをコンビニで2つだけ買った場合にちょうどいい、最も小さいサイズのバッグを追加して、持ち歩くのは2種類だけにする。

いいぞ、いいぞ、ほかにも減らせるかも。ほんのちょっと整理に勢いがつく。

ハンカチ、ティッシュは必要じゃないわけがない。リップクリームや目薬も出かけるたび毎回か、2回に一回は使用している。かゆみと頭痛は私の二大我慢できないものなので、かゆみ止めと頭痛薬はぜったい持つ。

お財布も無しなんてありえないよなぁ。スマホで使うpayを多用しないから、電子マネーやクレジットカード、おまけに現金も少しは必要だ。ふだんの外出時は必要最小限収納の、ちいさめのお財布にしていることだし、このままでもいいかな、と思ってお財布を手にすると、これがなぜかずっしりと重い。いや、やっぱりだめ。なんでお財布がこんなに重いのだろう?
カード類は使用するものしか入っていない。現金もそんなにたくさんは入れていない、とがま口部分をパカっとしてハッとした。小銭がいっぱいだ。電子マネーをメインに使っていても、いざというときに小銭がなくって困ったことがあったから、小銭は多めに入れていた。小銭がなくならないように、意識してお釣りをもらうようにもしていた。使用頻度が低いながらも、お釣りをもらい続けると小銭は増えるのだ。数えてみたら百円玉だけで23枚入っていた。これは重いはずだ。五百円玉を1枚とそれ以下の小銭は数枚ずつとする。うん、お財布が軽くなった!

iPhoneはどうしようもない。スマホのイヤホンが入ったポーチもこのまま。イヤホンとしては使わないのだけれど、写真を撮るときにリモコンを使用する。おまけにポーチがお気に入り。目に入ると一瞬でホワッと幸せな気持ちになるから、これは持っていく。

iPadは? 実はiPad本体はそんなに重くないのだけれど、キーボートがセットされた外カバーがめちゃちめちゃ重い。外出先でもパチパチと書きものがしたいから使っているのだけれど、ここ最近、外で書きものができたことがない。思い切って、書きものをするときだけケースに入れることとしよう。iPad本体とペンは布製の保護バッグに入れた。

手帳、メモ帳、現在進行形の書き物用のバインダーにペンケース。パチパチできずともなにかを書き留めることは多い。これは持たないわけにはいかないアイテムだ。とはいえなにか減らせないだろうか。パラパラと手帳をめくり、バインダーのリフィルなら枚数を減らせると気づく。さほど重さは変わらないだろうけれど、これも思い込みのうちだよね、古いものから選んで数枚と、これから使う未使用のリフィルは3、4枚にまで減らす。

パンパンのペンケースもダイエット。気分によってペンを使い分けたいけれど、それはもうおうちでしよう。あるいは、手帳タイムをとりに出かけるときには、そのときだけ色々持ち出そう。御守りペンと消しゴム、ふせん、クリップひとつずつを残し、他はぜんぶ並べて審査。何色かあるマーカーからは最も使用頻度が高いグレーを選出、耐水ペンと筆ペンは使い勝手がいいペン先のものを1本ずつ、それに赤、青のペンを1本ずつ加え、あとのものは家用ペンケースに入れ直した。ペンケースがこんなにぺったんこになったのは買ったとき以来のように思う。なんとなく心もとない気がしないでもないけれど、そんなことばかりは言っていられない。

とまあ、なんだかんだ言って減らした。減らせた。
これは案外軽くなったんじゃないの? ワクワクしながらリュックを背負ってみる。うむ、よくわからない。。。
嵩としては大きく減り、リュックの中は隙間だらけになったのだけれど、重さのほうは実感できるほどの変化はなかった。
ちょっと残念。
けれど! これがきっと、1日、また1日と外出をすると、地味にちがってくるのであろうと思う。遅れてくる筋肉痛みたいにあとから気づくこともある。そして少しは歩くスピードが速くなるかもしれない。
そのときを楽しみに、しばしこれで待ってみることにする。手荷物問題、一件落着となりますように!
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