第24話
文字数 988文字
「いや、それは違う。……ただまあ、健が平貞盛っていうのは荒唐無稽な夢物語としておいておくとしても、俺が藤原秀郷っていうのはそうかもしれない」
「なんでだよ」
「七人影武者の見破り方を秀郷に漏らしたのは、秀郷に通じた将門の家の女房だったって、大和、こないだ言ってただろ?」
「うん」
「最後に俺が、木刀で将門を切っただろ? 胸の傷を抑えながら、格好良く」
「……まあね」
「実はあの木刀さ、早苗ちゃんが俺に渡してくれたんだ。そのあとすぐ本人は気絶しちゃったけど」
健と大和は絶句した。
「俺のことを好きだった早苗ちゃんが、俺が秀郷の子孫であることがわかって、愛を思い出して俺に味方してくれたっていうのは、納得のいく話だよな」
「なっ……」
「待てよ。その場合早苗ちゃんは、ご託宣を下す巫女と、将門に仕える女房の一人二役ってことになるのかな。ああ、それとも巫女さんが秀郷に惚れたのか、納得……痛いっ」
健の拳が、佳亜の頭上に落下した。
「なんかむかつく」
「……それはおいとくとして、康葉ちゃんの調子はどう? その後」
大和が言った。
「うん、元気だよ。すっかり何事もなかったみたいに過ごしてるよ。あの出来事は何にも覚えてないみたいだ」
「そっか。良かった。……突然、仏に目覚めちゃったってことなんか、ない?」
「ないよ。なんで?」
「将門の娘って、将門の死後は出家したって説があるんだよ。出家して尼さんになったって」
「えっ、尼さん⁉」
「そう。仏門に入って、父親の霊を弔ったんだって。名前は如蔵尼」
「大和、その如蔵尼のお寺、どこにあるの?」
佳亜が言った。
「え? えーっと、たしか秋田かな。お墓もあるって」
「よし、行こう」
「なんで⁉」
「確かめに」
佳亜がにこにこしながら言う。
「やだよ。またなんかあるかも」
「だから行ってみるんだよ」
「……面白そうだから行ってみたいんだろ」
「あたり」
悪びれずに佳亜が頷く。懲りてない。
「やだね。俺はごめんだ」
「まあまあ、そう言わないで」
「……僕も、行ってみたいかも」
大和が眼鏡の位置を直した。
「よく言った、大和! 二対一で決定だな」
「ワホッ」
「…………あーあ。わかったよ」
「決まり!」
「やった!」
二人が嬉しそうに手を合わせている。それを仕方ないなという顔で見ながらも、健も本当はちょっと行ってみたいのだった。
了
「なんでだよ」
「七人影武者の見破り方を秀郷に漏らしたのは、秀郷に通じた将門の家の女房だったって、大和、こないだ言ってただろ?」
「うん」
「最後に俺が、木刀で将門を切っただろ? 胸の傷を抑えながら、格好良く」
「……まあね」
「実はあの木刀さ、早苗ちゃんが俺に渡してくれたんだ。そのあとすぐ本人は気絶しちゃったけど」
健と大和は絶句した。
「俺のことを好きだった早苗ちゃんが、俺が秀郷の子孫であることがわかって、愛を思い出して俺に味方してくれたっていうのは、納得のいく話だよな」
「なっ……」
「待てよ。その場合早苗ちゃんは、ご託宣を下す巫女と、将門に仕える女房の一人二役ってことになるのかな。ああ、それとも巫女さんが秀郷に惚れたのか、納得……痛いっ」
健の拳が、佳亜の頭上に落下した。
「なんかむかつく」
「……それはおいとくとして、康葉ちゃんの調子はどう? その後」
大和が言った。
「うん、元気だよ。すっかり何事もなかったみたいに過ごしてるよ。あの出来事は何にも覚えてないみたいだ」
「そっか。良かった。……突然、仏に目覚めちゃったってことなんか、ない?」
「ないよ。なんで?」
「将門の娘って、将門の死後は出家したって説があるんだよ。出家して尼さんになったって」
「えっ、尼さん⁉」
「そう。仏門に入って、父親の霊を弔ったんだって。名前は如蔵尼」
「大和、その如蔵尼のお寺、どこにあるの?」
佳亜が言った。
「え? えーっと、たしか秋田かな。お墓もあるって」
「よし、行こう」
「なんで⁉」
「確かめに」
佳亜がにこにこしながら言う。
「やだよ。またなんかあるかも」
「だから行ってみるんだよ」
「……面白そうだから行ってみたいんだろ」
「あたり」
悪びれずに佳亜が頷く。懲りてない。
「やだね。俺はごめんだ」
「まあまあ、そう言わないで」
「……僕も、行ってみたいかも」
大和が眼鏡の位置を直した。
「よく言った、大和! 二対一で決定だな」
「ワホッ」
「…………あーあ。わかったよ」
「決まり!」
「やった!」
二人が嬉しそうに手を合わせている。それを仕方ないなという顔で見ながらも、健も本当はちょっと行ってみたいのだった。
了