第5話(15)

エピソード文字数 2,092文字

「こっちで110番するワケには、いかないからな。シズナ、神蔵さんトコに連絡を入れてください」
「従兄くん、任せて頂戴。白金族さんの惑星は一度『遠見』してるから、早く話しかけられるわ」

 その言葉通り、20秒もしないうちに魔法での通話が開始。逮捕の話をしてから3分前後で魔法陣が広がり、チャイナ服姿の美女が現れた。

「こんなスパンでお会いするとは、思いませんでしたよ。六日前はお世話になりました、色紙さん」
「いえいえ。困った時はお互い様ですよ、魅条さん」

 犯人護送のためにやって来たのは、魅条魅里さん。王器様に駆け寄ったら、『魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!!』と蹴り飛ばされたあの御方だ。

「魅里先生、久し振りぜよっ。神蔵先生とは仲良くしゆうかえ?」
「は、はい。先日、婚約指輪を頂きました……っ」

 魅条さんは恥ずかしそうにして、左手の薬指を見せる。
 この人は神蔵さんを好いていて、神蔵さんもこの人で覚醒するくらい想ってたもんなぁ。道理至極だ――って何ほのぼのしとるんだ。

「魅条さん、お仕事お仕事。俺の下にいるのが犯人です」
「しっ、失礼致しました。野緑陽光さん、貴方を逮捕します」

 かちゃり。彼女は野緑に、錆びたボロボロの手錠を嵌めた。

「ソレ、朽ちる寸前ですね……。もっと綺麗なのなかったんですか?」
「以前お話ししましたが、我が国は千年間犯罪が起こっていません。なので必要がなく、新調していなかったのですよ」

 魅条さんは俺に微苦笑をし、すぐに表情が変化する。その変化は先程の自分と同じで、彼女は同胞に厳しい目を向けた。

「貴方は、白金族の面汚しです。なぜこのような事をしたのですか?」
「…………ランキング一位になったら、名声を得られる……。だからどうしても、一位になりたかったんだよ……」

 野緑は瞳を横に逸らし、暫しの空白を経て白状がスタート。終始絞り出すように声を発し、脅迫の動機を語った。

「……成程。この人は、本来の目的を見失ってしまっているのね」

 全てを聞いたシズナが、短く息を吐く。
 トップを獲れば評判が上がり、色々な面で得をするようになる――。その部分に惹かれてしまい、誰にも負けない野菜を作る! という想いが消えてしまったんだな。

「……皆さん……。これは、妙です……」

 切なさや虚しさを感じていたら。魅条さんが、綺麗に揃えられた眉を顰(ひそ)めた。

「む? どうしたが?」
「野緑さんは『自分はまだ未熟だから』と、名誉市民を辞退された方なんです。よって犯行理由が『名声』というのは、矛盾していますよ」

 うん、それは仰る通りだ。人気が欲しいのであれば、ソレを断らない。

「てことは、事由は別にあるな。野緑、ホントの動機はなんなんだ?」
「…………名声、だよ。名声が目当てだっ!」

 彼は声を張り上げ、しらばっくれる。
 そして今の俺は、休日を邪魔されて非常にムカムカしてる。なにが『そして』なのか自分でも分からないのだが、とにかく非常にムカムカしている。なので俺は、掌をヤツの額に当てた。

「オラ、さっさと吐け。吐かないと、『チェンジ・マナ』で魔力に変換するぞ」
「現三位のピマーン・マーピンさんに、『ランキングから降りろ。さもないと、お前の畑に害虫をばら撒くぞ』と脅迫されました! 僕は一位だったので締め切り直前に辞退するだけだったのですが二位となったので、先程「今すぐ一位を脅して辞退させろ。もし失敗した場合は罪を背負え」と命令されたんです!」

 言下、白状した。究極奥義、効果覿面だな。

「……そうですか、脅迫ですか……。野緑さんは、操られていたのですね……」
「実を言うと、自分がいるのに――奥義が何個もあるのに、何故ピストルだけで来たんだ? って感じてたんですよ。無茶をやったのは、切羽詰まってたからなんだな」

 ようやく納得がいった俺は、ここでヤツの方に顔を移動させる。そしてその顔の上にある頭を、人差し指でポリポリと掻いた。

「アンタもまた、被害者だったんだな。その、なんだ、さっきは少し悪かった」

 この男は、嫌々やっていたんだ。育月の心を傷付けられたのはイラつくが、コイツに怒りの全てをぶつけるのは間違ってるよね。

「こ、こちらこそ、スミマセンでした。あの子に謝っておいてください……」
「はいよ。代わりに謝っとく」

 俺は彼に笑顔で返し、それを終えると眼光を鋭くする。

「野緑、そのマーピンってヤツの居所を知ってるか? すぐにソイツを捕まえないと、別人を仕向けてくる危険性があるんだよ」

 殺し屋その1がミスったら、殺し屋その2を放つ――。よくあるパターンだ。

「僕ら異世界の生産者は、優れた生産者の居所を特定できるんです。あの人は二つ先の次元にいる『巨力族(きょりきぞく)』で、今現在はマーピンハウスという豪邸にいますよ」
「『巨力族』、ですか……。困りましたね……」

 正体を耳にした魅条さんが、渋面で腕組みをした。
 困った? なにが困るんだろ。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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