指定席B
文字数 3,412文字
あなたは毎日同じ時間に同じ電車の同じ車両に乗って、さらに同じ場所に立って学校まで行っています。
そして、あなたと同じく毎日その車両の、いつも同じ席に座っている女性に対し、あなたは大変興味を持っていました。
ある日、あなたが電車に乗っていつも通りの同じ場所に立って、いつも通り座っているはずの女性を見てみると、そこにはその女性はいませんでした。
女性が其処にいないということに気付いて、あなたが周りをキョロキョロしてみると、女性は入り口の窓の外をジッと見詰めています。
あなたは、普段そこに座っているあの人が何であそこにいるんだろうと疑問に思います。
その女性をジッと見詰め、さて声を掛けるかそのまま見詰めているか、と考えます。
あなたがいつもチラッと見て興味を持っていた女性は、よく見てみると大変美しい女性ということが分かります。
こんなにマジマジと見ることはなかったので、そうやって見てみると、彼女はとてもキレイで、芸能人と言われても全然嘘じゃないと信じてしまうようなほどキレイです。
ですが、服装等は普通のOLのような恰好をしており、目のほうは少し吊り目でキツイ感じはしますが普通に美人です。
あなたはガタンガタンと電車が揺れる音を聞きながら女性をずっと見ています。
そしてふと上を見ると、次の駅まであと5分という風に出ます。
あなたは彼女が呟いている言葉を聞くことができました。
ですが、それはすくなくとも日本語では有り得ず、外国語としても聞き覚えすらなく、人間の言葉ではないと言われれば納得しまいそうなおぞましい響きをしていることに気が付きました。
電車が目的地にそろそろ着くだろうというところで、突然、前方の、電車の進行方向に、駅のホームの各駅停車の電車の到着を待つ人の列が見えてきました。
到着を待つ人の一人、男性がホームから線路へと飛び込んだかと思うと、一瞬にして視界から消えます。
運転席の窓が、はねられた男性の血飛沫に覆われたのだと気付くのに時間はかかりませんでした。
電車は大きなブレーキ音を鳴り響かせ急停車しようとしています。
車輪が男性の体に乗り上げる度に衝撃が伝わってくることで、車両の下で何度も轢かれているだろうということがあなたに分かります。
突然の悲劇に、あなたもですが、パニックに陥っている乗客たちの中、女性だけはいつもとまるで変わらない様子で佇んでいました。
その表情はどこか満足げにも見えました。