第31話 持ち帰り弁当はプラゴミの塊なので

文字数 3,778文字

 我が家では、ほとんど市販の弁当を食べない。
 コンビニ弁当は、お出かけ時以外では全く食べないが、月に一度くらい、妻が、デパ地下や専門店系の弁当を買ってくることがある。
 どうも、たまに折り込みチラシや開店セールなどの割引券が郵便受けに入っていて、料理が面倒な時にそれを利用するらしいのだ。しかし、この持ち帰り弁当ってやつ、プラゴミがハンパなく出るので、毎回『もうやめとこう』という話になる。
 そう、我が家が弁当をあまり買わないのは、健康がどうとか味がどうとかではないのだ。
 ゴミの発生量が多すぎるから、買わない、ということである。
 まず、基本的に容器はすべてプラ。手提げの袋もプラ。お手拭きもプラ包装。中身の葉っぱや花などの飾りもプラ製。味移りを避けるための小容器や敷物もプラ。そして、場合によっては全体がラップで包まれていて、これもプラである。
 なんなら飲み物もペットボトルでプラだし、最近話題のプラスプーンも付いているかもしれない。
 これほどまでにプラスチックで彩られた食事が、他にあろうか。
 それが分かっていても、月一で買ってくる妻も、何を考えているのか分からんが、自分でゴミ出ししないから、大変さが実感できないのであろう。
 我が家は、ただでさえプラゴミが一番多い。
 どのくらいかというと、家庭内から出るぶんだけで、一週間で市の指定ゴミ袋(大)がパンパンになるくらいである。
 言い訳しておくが、家庭からのゴミにプラが多いのは、徹底的に分別するからであって、べつにプラ製品や過剰包装品をやたらに買っているからではない。
 それが証拠に、燃えるゴミと燃やせないゴミは異様に少ない。燃えるゴミなど、俺の拾ってくる野外ゴミを合わせても、一週間に(大)サイズ一つで充分である。
 燃やせないゴミはもっと少なく、家庭内ゴミだけなら月に一回でもゴミ袋(大)半分くらいにしかならないが、野外ゴミがかなりの量集まるので、二週に一回の指定日には、二袋程度は持って行くことになる。
 どのように分別しているか、というと、汚れているものを綺麗に洗うくらいは当然として、包装のシールは徹底的に綺麗に剥がすし、分解すれば紙とプラに分けられるものなどは、必ずそうする。やってみれば分かるが、これを徹底的にやっていくと、一番多いのはどうしてもプラゴミになるのだ。
 そこへ持ってきて、プラだらけの弁当容器が家族分、というのは、俺にとってはもはやテロに近い。ゴミ袋(大)を二つにせざるを得なくなり、拾ってきたプラゴミを加えてゴミ袋(大)三つを抱えてゴミステーションへ行くことになるのだ。
 つまりこうしたゴミをポイ捨てするというのは、ただでさえ怒っている俺の不興をさらに買うことになるのだと、覚えておいていただきたい。
 弁当容器は、ゴミ出し時だけでなく、回収時にもかなりかさばり、持ち帰るだけでも一苦労なのだ。
 公園で数人が飯を食い、そのままそこに放置していったような跡にもたまに遭遇するが、しばらく怒りで立ちすくみ、動けないほどだ。
 丁寧に積み重ね、レジ袋にきちんと入っているような状態のポイ捨ても妙に腹が立つが、食い散らかしてその辺にバラバラと投げ捨ててあるのは、もっと腹が立つ。
 しかも、そこに至るまでに他のゴミも回収しているから、弁当容器なんぞ詰め込むと、俺のゴミ袋はいっぱいになってしまう。
 軽いのと、分別が容易いのはありがたいのだが、プラゴミとして出すなら破壊するわけにもいかない。よって、一度袋をひっくり返し、ペットボトルや空き缶を潰し、スペースを確保して、弁当容器もバラして同じもの同士を重ね、もう一度詰め込むなんてことをせねばならないこともある。
 我が家の犬たちは、普段はおとなしいし、ふつうにゴミを拾う場合には、特に邪魔にはならない。
 だが、手持ちのゴミ袋をひっくり返すという行為は、彼等にとって一大事なようで、二匹ともパニックを起こして逃げようとする。
 そうなると、ゴミを整理し直し、もう一度ゴミ袋に詰めるなどという行為は、相当時間がかかるし疲れるわけだ。
 先日も、公園脇で数個の弁当容器を発見したものの、散歩中盤であったことから、すでに袋にはいくらかゴミが既に入っていた。弁当容器を拾い始めたものの、すぐに入りきらなくなった俺は、道端で袋をひっくり返した。
 当然のように、パニックを起こした犬どもは、俺が左手に持った引き綱を引っ張って、その場から逃げようとする。前述したように、十五キロクラスの中型犬だから、どちらのパワーも大したことはない。だが、二頭で力を合わせて同方向に向かって駆け出されると、人間は著しく行動を制限されてしまう。
 この日も、俺だけならば数分で済むはずだったろう弁当ゴミの回収が、犬たちの妨害によって十数分を費やすこととなり、帰宅が遅れて慌てる羽目になった。

 また分別が容易いとは言ったが、拾いゴミだと厄介な場合もある。
 まず厄介なのが、残飯が入っている場合だ。何を考えているのか知らないが、弁当を買っておいて、米飯を半分以上残すヤツがいる。
 お米一粒あたり、十人の神様(諸説あり)が宿っていると、ばあちゃんに習わなかったのであろうか。これでは神様数万人の大虐殺だ。
 食いきれないと思うなら買うな。途中で食えなくなったのなら持って帰れ。家で雑炊にでも何にでもして食え。
 ていうか、そもそもポイ捨てすんな。
 それ以外にも、何が気に入らなかったのか、漬物だけ残してるヤツ。
 千切りキャベツを始め、一切の野菜を食ってないヤツ。
 揚げ物を半分残すヤツ。
 煮物を全部残すヤツ。
 ポテトサラダを残すヤツ。
 何故か半分食ったサンドイッチを詰め込んで捨てるヤツ。
 噛み切れなかった肉を吐き出してあるヤツ……
 中でも最も迷惑なのは吸い殻を入れるヤツで、残飯に灰がまぶされていたりすると、生ゴミ処理機に投入もできない。全く非常識なバカもいるもんだが、ポイ捨てしてる時点で、すでに充分な非常識。たとえ全部きれいに食べていようと、吸い殻が別になっていようと、非常識なバカには変わりない。
 「都会にもいろいろ住んでいるので」の項にも書いたが、この弁当の空き容器はカラスやタヌキ、ネコなどに狙われるものでもあり、見つけた時点で噛み砕かれていることも多い。
 そうした状況で発見すると、残飯は何も見当たらないことがほとんどだが、これは食い尽くされたのか、それとも何も残っていなかったのかは分からない。
 残飯など入っていなくても、残った臭いに引き付けられ、空き容器を噛み砕く場合もあるだろうとは思うが、まあ、そんなことを推理、検証しても始まらない。
 問題なのは、動物たちがバラバラにして、さらに風に飛ばされ、広範囲にわたって捜索しないとゴミを拾い集められないことなのだ。
 かように弁当ゴミは、面倒、かさばる、環境への悪影響の三拍子そろっていて、様々なポイ捨てゴミの中でも、筆頭格にたちが悪い。
 というか、実はポイ捨てされてなくても、厄介なことに変わりはないのだ。
 もうなんというか、正直なところ、コンビニ弁当を筆頭とした持ち帰り弁当は、絶滅してほしいくらいの気持ちだが、コロナ禍によって、テイクアウトで命脈をつないでいる飲食店も多い昨今、そうも言えない。

 だったらどうすべきかであるが、もっとも重要なのは、容器をもっとコンパクトになるようにすることであろう。
 弁当容器は、発泡樹脂のトレイが非常に多く使用されているが、これがかさばる元凶である。では、これを折りたたみ式にしてはどうか。
 どんな素材で作るかだが、内側をコーティングしたボール紙が良いと思う。これなら、燃えるゴミに出来るし、畳めばかさばらない。もしもポイ捨てされても、大半が生分解されるという次第である
 もちろん、飾りの菊の花や仕切りなども、紙か本物の葉っぱで作ればいい。まあ、飾りは入れんでもいいように思うのだが。
 容器自体はコストアップになる可能性はあるが、容器の輸送コストは下がると思うのだが、どうだろう?
 またもし、フラットな箱では困る、あのいくつも凹みがある、仕切りいらずの容器がいいのだ、と言うならば、それこそ紙で作ればいい。
 型さえあれば、そういう形に出来ることは、電化製品の緩衝材や卵容器で証明済みである。
 これに防水コーティングを施せば、充分使用に耐えるはずだ。発泡樹脂との違いは、割れて飛び散らないことである。踏みつぶされたり、動物や鳥につつかれても、紙ならば細かく飛び散らない。
 これならば、ポイ捨てを拾う際も、踏みつぶして集められる。もし、破損するほど水を吸ったりしているならば、日を経ずして生分解されるはずで、見逃しても大きな影響はないだろう。
 何より、紙ゴミを使って作れるのがいい。どうせコーティングするのだから、食い物入れても問題はなかろう。
 もしこれ読んだ容器メーカーさんがいたら、ぜひやってほしい。せっかくの俺のアイデアだが、今のうちなら無料でいいから。
 今の環境相は、最終的に使い捨てプラを全廃する気らしいから、たぶん弁当容器にも口を出してくるだろう。
 少々コスト高でも、たぶん、売れる。法整備されてしまって右往左往する前に、少しでも早く開発しといた方が、生き残れると思うのだが、如何か。
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