如月真琴

文字数 2,364文字

ここは如月真琴の執筆ステージ!

関係者以外立ち入り禁止です!

『みんなーーー、おはえるーーーー!!

 今日は私の緑化運動に賛同してくれてありがとーーーー!!』

『うおおおおおおお!!』
あ、えるちゃんのライブはじまった。

相変わらずぶっ飛んだ娘だなぁ……。

『ねぇみんな、今日はどんな色がいいかなー?』
『グリーン! グリーン! グリーン!!』
『それでは一曲歌います!

 桜庭えるで、有機栽培をあなたに!』

出た! 空前のヒットを生み出した『有機栽培をあなたに』だ!

CDの売り上げは全て園芸施設に寄付されたんだよね!

おーい、窮人!

そろそろ今日の仕事に遅れるぞー。

もう、分かってるよ……。

ちぇっ、最後まで聞きたかったな……えるちゃんのライブ。

僕の名前は幕内窮人。どこにでも居る普通の弟だ。

でも、兄ちゃんが極度のドルオタかつ、TS萌えのせいで望んでもいないアイドル活動をさせられる。

あーあ、こんな生活が続いたら、アイドルを見るのも嫌になりそうだ。

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『恋のハーブが止まらない~♪ 四葉のクローバーを探さなきゃ♪

 栄養のない土では育たないの~♪』

はぁ……僕も好きなことだけしていたいなぁ。
俺は好きなことだけして生きている。
うるさい。変態。
◇ ◇ ◇

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ん、しょ……。

慣れないなぁ、この身体。

うんうん、今日もよく似合っているぞぉ!

これでこそ我が弟、幕内窮人だ!

僕の兄、新瑛太は魔人だった。

何故か僕にだけ有効な、女体化の能力。

この能力を受けた僕の身体は余すところなく美少女で、服や下着まで取り替えられてしまう。最初は違和感と羞恥で飛び降りモノだったが、今は多少なりとも慣れている。


しかし――。

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ねぇクソ兄貴。

僕はアイドルになるつもりは無いって言ってるよね?

おほっ、良い言葉責め……!

――いやいやイカンな。

ファンの皆様の前でそんな言葉遣いをするんじゃないぞ。

スマイルが大事だといつも言っている!

聞けや。
◇ ◇ ◇

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誰ですか、この時間に出れば電車に間に合うとか言った人ーーー!
すまん! 平日ダイヤと休日ダイヤを見間違えた!!

このままでは遅刻してしまう!!

ドタバタドタバタ……。

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ゴチン!!

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ひゃっ、す、すみません!!
どこ見て歩いてんでぃ!!
すみませんーーーー!!
一心不乱に走り回る。

この身体、服がひらひらだし筋肉が全然無いし、動きにくいったらありゃしない。

急げ、まだ間に合う――!!

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あの、ハンカチ落としましたよ。
うえぇ!?

あ、ありがとうございます! 急いでいるので――!!

ってえるちゃんんんんんんn!?
思わず足を止め、後ろを振り返る。

そこには――植物に囲まれた天使が居た。


本物かどうか疑うのは一瞬。纏ってるオーラが違うし、何より……周囲だけ異常に生態系が違っていた。間違いなく、えるちゃんだった。

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あら? どこかで会っていたでしょうか?
い、いえ、ずっと前からファンだったんです!!

こんな場所で会えるなんて……!

えへへ、ありがと(パァァァァ
すごい! 本当に足元から花が咲き乱れてる!!
おーい、キュート! どこだー!!

……っと、居た居た。こんな時にはぐれるんじゃない!

あ、くs……お兄ちゃん!

ごめんなさい、それより――。

あら、よく見たらあなた、最近人気急上昇中のQ・U・T・Eさんですね。

ファンの方が熱心に教えてくれました。

こんなところで会えるなんて、こちらこそ光栄ですわ♪

むむっ……お前は確か……。

ここで会ったが百年目、お前には言いたいことがあったのだ!

奇遇ですね。

私もQ・U・T・Eさんには言いたいことがあったのです(パァァァ

え、何この剣呑な空気は。
植物と人間の共生は、お前が思っている以上に成り立っている!

それを一方に傾けるのはやめてもらいたい!

くすくすくす……あなたもグリーンに染める必要がありますね!

それにファンの心を弄ぶあなた達も、大嫌いですよ!(パァァァ

え。これ僕が戦わされる流れ?
ゆけ、キュートよ! おっぱいミサイルで先制攻撃だ!
出来るかあああああ!!
むきゅむきゅ……ぼんっ。

チュイーン、ズドドドッ!!

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うわあああ!! なんか出来た!!?
説明しよう! 我が魂に宿った魔人能力、それはCheer Up my Tiny Elf !

俺が思う「女の子としての魅力」を窮人に押し付けることが出来る!


すなわち――お前の身体は俺が自由に弄れるのだ!!

見損なったよお兄ちゃんーーーー!!
ふふふ……素晴らしい兄妹愛ですこと。

咲きなさい、荊棘の盾!! ミサイルを包み込み、無効化!

不可抗力の攻撃は、能動的な盾によって防がれる。

そうか……僕が部外者なだけで、これは立派な魔人同士の戦いなのだ。

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今度は私から行きますよー!!


咲き乱れよ、魔界の花、デスポワール!!

偽りのアイドルを食い散らかすときです!!


(パァァァ

うちの息子を踏み荒らしたのは誰ですか!

お母さん、許しませんよ!

可愛いアイドルからおよそ可愛くないクリーチャーだ!
どうするの、お兄ちゃん!!
焼き払え。
アンタの思う「かわいい女の子」ってなんだあああ!!
僕の思いとは裏腹に、体内から熱がこみ上げてくる。

そしてそれは――火炎放射となって、体外に噴出された。

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わぎゃあああああ!!
ひどい、こんな人気のある場所でこれほどの火遁を……!!

ていうか何でもありですね! 私が言うのも変な話ですが!!

さぁ、クライマックスだ。キュートよ。

この女を食べてしまえ。

た、助けてえええええ!!
やはり……人間は滅び、植物に星の運命を任せるのが正解でしたか。

それでは一曲歌います、有機栽培をあなたに!!

恋のハーブが止まらない~♪ 四葉のクローバーを探さなきゃ♪

栄養のない土では育たないの~♪

そして、世界が緑で埋め尽くされる――。

ただの一般人たる僕らには止める術など無かった。

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グリーン! 素晴らしきグリーン!!

あなたも緑化運動に賛同してくれますか?

おしまい。

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そこまでです!

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登場人物紹介

「緑化運動に賛同していただけますか?」



天然モノの侵略者

○桜庭 える(さくらば える)

性別:女



植物好きの両親から生まれ、目一杯の愛を注がれて育ったアイドル。

物心がつく前からガーデニングの知識を叩き込まれ、

初めてしゃべった言葉は「防虫対策」だという。

好きな花は濃紅色のバラ。恋焦がれて止まない。


幼少期を緑化特化政策が施された田舎で過ごし、

どこにでも植物は育つと信じていた純粋無垢な乙女。

可愛い見た目と佇まいが休暇中のスカウトマンの心を射抜き、

12歳にしてアイドルになる権利と上京のチャンスを得る。

意外にも両親の反発も少なく、意味深な笑顔で送り出される。

「あなたも外の世界を知るときが来たのね」

母が最後につぶやいた言葉の意味を、その時はまだ知らない――。


トンネルを抜けるとそこは東京だった。

電車を乗り継いだ先に彼女が見たものは、あまりに無情な大人の世界。

人間都合で近代化の進められた街の末路を見た彼女は、ショックの余り過呼吸を起こし、病院に搬送されてしまう。


舗装されたコンクリートの上ではぺんぺん草一本も生えない。

外の世界を知った彼女は、もう昔のようには振る舞えなかった。

もう植物に囲まれた暮らしは出来ないのだろうか――。


だったら、私が文明を作り変えてしまえばいい。

植物がピラミッドの頂点を飾る時が来た。

病院の個室に少女の狂った笑いが響き渡る。

ナースが駆けつけたとき、そこは草花で埋め尽くされていた――。




能力名:スマイル・ガーデン

笑うことで周囲に草花が咲き乱れる能力。

生える植物は指定が無ければランダムに、

意識することで特定の種を繁殖させることも可能。

冬に向日葵を咲かせるような芸当も出来るが、

その寿命は元の植物のまま。

地球上には存在しない植物を咲かせることも出来る。



彼女は世界有数の魔人アイドルとしてファンを獲得し、

握手会会場やステージを緑に変えていく光景が目撃されていた。

世界が緑一色になる日も遠くない。




戦う動機:武道館を緑に塗り替えるため。




作者:如月真琴


幕内 窮人(まくうち きゅうと)

 

性別:男性

 

非魔人の中学生。

アイドルオタの兄・新瑛太(しんえいた)が魔人として目覚めたことで、女性アイドル《C・U・T・E》として嫌々デビューすることになる。

本当はもっと男子中学生らしい青春を送りたいがアイドル業の多忙さがそれをさせてくれない。

しかし気が弱いので魔人となった兄に直接文句を言うこともできなかった。

プロデューサーとしてもマネージャーとしても才能に溢れていた新瑛太が完璧にガードしているため、C・U・T・Eの正体は誰も知らない。

アイコンはC・U・T・Eの姿。

 

能力名:Cheer Up my Tiny Elf !

新瑛太の魔人能力で、窮人にしか効かない。

窮人を一時的に女体化させる。

窮人は女体化している間、新瑛太以外の人の前では「かわいい女の子」な言動を強制される。

また、新瑛太が激しく応援すればするほど、女の子としての魅力が上がっていく

 

新瑛太はアイドルオタを拗らせて「我が家にもアイドルがいればいいのに」と思っていた。

だが現実には弟しかいない。

男性アイドルは望んでいないのだ。

深い絶望が彼を襲った。

弟ではなく妹ならば……。

その考えが新瑛太を魔人へと変えたのだった。

 

戦う動機(窮人):他の子と揉め事を起こせばアイドル辞められるかな……。

 

戦う動機(新瑛太):積極的に仕掛ける気は無いが、相手がC・U・T・Eを引退させるつもりなら致し方ない。

 

作者:qaz




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