【第7話】拡散。
文字数 2,574文字
フィリップは倒れたまま動かない。抱きかかえ事務所へと急いだ。リビングの端のソファを繋げそこに寝かせた。
より清潔な衣類へ着替えさせ、苦しむ顔をタオルで冷やす。
より清潔な衣類へ着替えさせ、苦しむ顔をタオルで冷やす。
時間ばかりが経過していく。
やがて歩(あゆ)がその強張った口を開いた。
1本のメモリを俺に手渡す。金色のメモリがこの手の中に有った。
歩は首を振る。釈然としない表情で俯いていた。
手を広げ言い募る。悔しげに眉根を寄せていた。
記憶が無い。それだけを執拗に強調した。
1時間ほど経っただろうか? 俺は行動に移した。徐々に黒く染まっていく相棒を見ているだけなんて出来ない! アタリかハズレか解らねえ、けど、俺は、俺の勘に賭けた。
寝かせたフィリップをソファに無理やり座らせ、そのΣドライバにH(ヒート)のメモリを差し込んだ。
【H『ヒート』!】
俺は自身のドライバに歩からもらった新たなメモリ、H(ハート)メモリを差し込む。
【H『ハート』!】
俺とフィリップのドライバを同時に左へ倒す。
【『H』ヒート×『H』ハート】
フィリップの操る上半身を壁に寄りかからせ、俺は自身が操る両足を踏ん張った。
上半身の制御を無理やり奪い重い右手で腰の『マキシマムドライブスロット』を叩き続けた。
【マキシマム・Σ!!】
【マキシマム・Σ!!!】
【マキシマム・Σ!!!!】
【マキシマム・Σ!!!】
【マキシマム・Σ!!!!】
【HH(ヒート・ハート)マキシマム・シグマ(最高合算)!!!!】
俺達2人で1人の仮面ライダーは燃え上がった。炎を吹き出し、身体を燃焼させる。黒く染まりかけた上半身は、赤く、その色を輝かせた。
俺達は変身を解いて2人に分かれる。
その頬は火照っていたが、黒い斑点は薄れている。俺は帽子を目深に被って答えた。
最近覚えたスマートフォンで情報屋の『サンタちゃん』へ話を繋げる。サンタちゃんは一年中いつもサンタクロースの格好をしている情報屋だ。
ーー依頼から30分後、仕事を終えた情報屋『サンタちゃん』が事務所へやって来た。
サンタちゃんにはある画像を拾ってきてもらった。それの引き伸ばしを追加料金で頼む。歩(あゆ)にも仕事を頼んだ。
頭に衝撃が! このクソアマ、俺を足蹴にしやがった。
「H(ハート)のメモリ、高くつけとくわ♪」
と、至極お仕事ライクに笑ってくれやがる。
俺が宝田さんちの『ベアちゃん』からウ○コをもらってくるのと、特大のパネルをサンタちゃんが持ってくるのは、ほぼ同時だった。
フィリップが覚束ない足取りでソファに寄りかかり俺を評価してくれた。
そして俺達は風都の中央公園に『それ』を設置した。
街の人が写していた歯車貞女(はぐるま さだめ)の画像を引き伸ばし宝田さんちのベアちゃんのウ○コを供える。
その経過をサンタちゃんにネット配信してもらう。フィリップが自身のツイッ○―で拡散、歩がそのフォローを担当する。亜樹子にはおばちゃん相手に井戸端会議で広めてもらう。
その経過をサンタちゃんにネット配信してもらう。フィリップが自身のツイッ○―で拡散、歩がそのフォローを担当する。亜樹子にはおばちゃん相手に井戸端会議で広めてもらう。
遠巻きに見守る一般市民(ギャラリー)の中からこちらに向かってくる影が3つある。記憶に新しい顔ぶれだった。
V(ヴァイラス)V(ウィルス)V(ビールス)の3人組だ。その手にメモリを持って俺達に近づき、それぞれの頭にメモリを突き立てる。
映像の中を自由?に行き来した貞女、そんなアイツが俺達の動向を見逃す訳がない。俺達を監視し、その苦しむ様を見て悦に浸る。そこまで推測出来た。そして、自身の手は汚さない。つまり、手下をこちらに寄越す。
相棒に声を掛ける。
それぞれのベルトにいつものメモリを突き刺した。
【C『サイクロン』!】
【J『ジョーカー』!】
顔を見合わせ、2人同時にドライバを倒す。
【サイクロン×ジョーカー】
俺達2人で1人のライダーは3匹の怪人を見渡し指を差し伸ばした。俺達Σライダーはお決まりの文句で奴らへ問うた。俺達が正義で在る為に、正義で在り続ける為に!