ガンマディオラ(4)
文字数 1,422文字
船室の窓からは沈んでいく夕陽が見える。
ラオがいるのは船尾甲板の真下、船長室だった。
船長が超星力(アストラ)で船を操っていることもあり、乗員はとても少ない。海魔と戦う際に発生する被害を最小限で食い止めるため、星力者(テーラ)以外は乗せない方針なのだという。
一人でいると、どうしても姉――ミルッカのことが思い出される。
星力者を不気味がり、ラオとミルッカは集落で孤立していた。
頼れるのは姉だけだった。
その姉はもういないのだ。
ポドカルガス島近海を荒らすようになったクラーケン。
――奴を狩ってくれるのなら、集落に居場所を作ってやる。
集落の長に提案され、姉は乗った。
そう言って出て行ったミルッカ。
温かいご飯どころか、温かい居場所すらラオは失ったのだ。
木製のテーブルに食事が並べられた。
椀に入ったスープは温かそうだ。
粥には細かく刻まれた焼き魚の身が入っている。濃密な匂いがして食欲をそそった。
すさまじい勢いで食事がなくなっていく。
山ほど盛られていた粥もあっという間に空っぽになった。
シュトラの力強い言葉に、ラオはこれ以上ないほどの心強さを感じた。
『ガンマディオラ』のみんながいれば大丈夫。
かすかではあるが、復讐への道が見えてきたような気がした。
静かに時が流れ、日が没していく。
暗くなった室内で、ラオは両手を握りしめた。
明日がこれほど待ち遠しく感じられる夜は、初めてだった。