特集1:時間の効果の秀逸作品

文字数 1,562文字

これはあくまでも個人の考察です。

『金平糖』
海乃 眞 様著
*相反するイメージを上手く利用した作品。秋晴れとは澄んだ、晴れやかなイメージを持つもの。そこに、朝を加えることにより、更に透明感、爽やかさを醸し出している。暗い事件と相反するものを加えることで、より残忍さ、憎しみ、黒い感情が浮き彫りになっていく、書き出し方が秀逸。(季節、朝などの時間の効果)

混沌譚3 マラデータ王国篇
神野 佳月 様作
*なんでもないような書き出しに思えるかもしれないが、侵入、潜入する時の緊迫感を出すには、”静けさ”、”息を顰める”など緊張感が出る場面が効果的。砦に着いた時には既に夜であった、もしくは夜まで待って潜入したのではないかという想像力も掻き立てる。(夜を上手く利用した効果)

令和な日々
ひろ津 様作
*この作品は主に学校を舞台としていると思われる。そこから十日も離れていた状況から始まる。久々に友人と会う気持ち、高揚感、寂しさからの解放、連休後の気だるさなど、たくさんの感情が入り混じるのは、たくさんの人が集まる学校という場所を舞台にしている物語には非常にマッチする。次にどんな場面が来るのか期待も高まる。(連休後の日常の効果)

ブリッツ ~血(オイル)を求めるヴァンパイアを倒すもの~
くーげるフィッシャー 様作
*この物語には車が必要不可欠。それを遅くなってから自転車で変える様子は、どんな経緯があって現在こういう暮らしをしているのだろうかと、好奇心を誘う。帰宅が夜となる様子から、仕事先が繁盛している(忙しい)ことを想像させ、それなりの収入があることを匂わせる。やはり理由を知りたくなることから、過去について知りたくなる書き出しである。(境遇について考えさせる、好奇心を誘う効果)

血塗れた手巻き時計
松浦 祈流 様作
*この物語は、一見事件とは無縁に見えるホームセンターの朝のミーティングから始まっている。そこに今回の事件に関するヒントがあるのではないかと、注目させる効果があると思われる。(一見無関係に見えるミーティング(申し送り、伝達事項)からの情報を得たいと思わせる効果)

僕はモテモテです。ジミ子限定ですが。
さとみ・はやお 様作
*この物語は、学校が終わった時刻から始まっている。学校でモテると言うと、昼休みや休み時間のイメージが強い中、意外な時間から始まっているのだ。つまり、モテることに直接関係する事柄や、何か特別な事が始まるのではないかという期待を持たせる。(意外な場面からの、期待の効果)

吸血鬼は陰陽師と踊る
銀多ペン 様作
*これはもしかしたら、時間の効果よりも場面の効果に分類されるかもしれないが、書き出し一行の内容から、まるで”戦いの火ぶたが切って落とされた”のような、ゴングなどを思わせる書き出しである。読み手が、これから何が起きるのだろうかと期待させる効果を持つと言っても過言ではないだろう。(始まりを感じさせる効果)

アクナテン
あきちか 様作
*何かを予見させる書き出し。恐らくこれから長い戦いが怒るのではないかという不安を感じ、夜明け前、星、などからその戦いには希望、勝利を感じさせる。まだ静けさが残る時間帯でもあることから、予兆も表している。(希望、勝利の予見、何かが起こる前の予兆などを感じさせる効果)

最高の冒険を ~魔法を捨てた冒険者たちのダンジョン攻略~
天野 星屑 様作
*これは秀逸な効果。ただ読んでいては気づかない効果。この後主人公たちは非日常に巻き込まれる。物語は恐らく、その数時間前から始まっている。静かにゆっくりと。確実にその時は近づいている。”こんなはずじゃなかった”ビフォーアフターの違いや、日常から非日常へ、その差が後にくっきりと明瞭になる書き出し。(恐怖、過去への後悔、ハラハラドキドキ感を持たせる効果)
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