謎は 多分 解けた

文字数 1,430文字

 地元警察の指示によって部屋から出されたサークルメンバー達は、食堂に集まったままの者達と合流した。そして、食堂に居た者達の中には、戻ってきたサークルメンバー達の様子から、ただならぬことが起きたことを肌で感じる者も居た。
 サークル代表は、食堂に居るメンバー達に何が起きていたかを説明すべきか迷っていた。しかし、動かなくなったメンバーと同室の者が泣き崩れ、泣きながら死人が出たことを食堂に残っていたサークルメンバー達に告げた。
 この為、食堂は大変な騒ぎとなり、サークル代表はそれを収めるのに苦労した。サークル副代表がメンバー達の騒ぎを何とかして落ち着け、そうこうしている内に地元警察がサークルメンバー達に話を聞きに来る。
 そうして、一度収まった騒ぎは再発し、サークル代表は疲れた様子で項垂れる。だが、若者であっても徐々に事の重大さに気付いたのか黙り始め、地元警察は「順に話を聞くので、この場から動かないこと」と告げた。また、ここに居るサークルメンバーの安全を名目に見張りを残すことを告げ、地元警察は食堂から立ち去った。

 その後、サークルメンバーは一人一人別室に移され、地元警察から話を聞かれた。そして、何故か落花生売りがその背後で話を聞いていた。その異様な状況を問うサークルメンバーも居たが、地元警察は華麗にスルーを決め込んだ。地元警察がサークルメンバーに与えた質問は、「昨晩から遺体発見に至るまでの時間に何をしていたか」を確認する程度のもので、サークル代表や同室のメンバー達だけが詳しい話を聞く為に連行された。

 そうして、合宿場に居るサークルメンバーの数が減った時だった――
「この事件の謎、これから2004秒で解いてみせましょう」
 その声は無駄に食堂に響き、サークルメンバー達は発言者を疑わしそうに見た。
「2004秒で、タイマーセット!」
 そう言うなり、発言者はタイマーのスイッチを押し、姿を消した。相変わらず食堂に見張りの警察は居たのだが、それを気には留めて居なかった。しかし、暫くして見張りの警察は居なくなり、それを良いことに食堂を離れるサークルメンバーも居た。
 タイマーをセットした人物は、合宿場内を無闇に彷徨いていた。歩き回る間に、網が大き過ぎる虫取り網を見つけもした。落花生売りは、その虫取り網をいじくりまわし、簡単に網が外れることを確認した。それから、輪になっている部分は壊れにくい金属で作られており、棒の部分の端に在る突起を動かすと、それに応じて輪の大きさは変化することも確認する。

 落花生売りは、満足そうに虫取り網を元の位置に戻した。それから、落花生売りは特に何をするでもなく歩いた。落花生売りは、合宿場を三十分位彷徨いていた。そして、人気の無い位場所に来た時だった。その首に、金属製の紐が食い込んだのは。
 その瞬間、セットされていたタイマーがけたたましい音を立てた。それに犯人は驚いたのか、タイマーをセットした人物の首に食い込んでいた金属製の紐は緩み、その紐を操作していた人物は警察達に取り押さえられた。落花生売りの首には血が滲み、目からは涙が流れた。それでも、タイマーは鳴り響く。
「げふ……ふう。はい、事件は2004秒で解決しました」
 そうして、短絡的な犯人はあっさり確保され、実は疑われない為にと隔離されていたサークルメンバー達は無罪放免となった。
 その事件解決の裏に、ただの落花生売りが居たことは、一部の警察にしか知られることは無かった。
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