【読書日記】今村夏子 あひる

文字数 487文字

今村夏子の代表作、あひる。
この作品の要は、代替可能なものと、消耗品の差異にあると思う。

どういうことだろうか。作中、あひる小屋が撤去されるのは、赤ちゃんを家族として迎えたときであった。

普通に読解すれば、これは、あひるが家族のなかで担っていた役目を終えた場面ではなく、あひるがそれを赤ちゃんに継承したシーンととれる。

つまり、あひるはあの家族のなかで、ペットして消費されるにはあまりにも存在が大きすぎたのである。それはあひるが家族の一員であったとも言い換えることができる。

日本は、一方で家父長制という保守的で血縁関係を重視した家族のかたがあるが、他方ではペットも家族なんだというある種拡張性の高い家族のかたちもある。

多くの読者は、ラストであひるの代替として示唆される赤ちゃんに気持ち悪さを覚えるだろう。あひるの代替が人で良いのか?と。

しかし、言い換えれば、あの家族のなかのあひるは血縁関係のある新生児に等しい存在であったともいえる。

この作品はあひるを消耗品にさせてくれないのが気持ち悪いのだ。そして、家族という概念を考えるうえであまりにラジカルで本質的な問題を突きつけてくるのだ。

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