第18話 これは悪魔ですか?
文字数 3,470文字
フローリングの床はピカピカで、どこも綺麗に片付いている。とても幽霊が出てくるような暗い雰囲気には見えない。早智の目にも何か見えたり、鳥肌が立ったりという感じはなかった。
やがて、弥恵さんのお母さんがお盆を片付けて戻ってくると、八津貝先輩はコトリと茶碗を置いて話し始めた。
そんな話聞いたこともなかったから随分驚いたけど。
昔からそういうこと相談してくる友だちはいたけど、保護者から話がきたのは初めてだったし……しかも自分の知り合いで少し前に家庭教師してた相手のことだったから。
本当は俺か古和でやろうと思ってたんだけど、月無さんがやってくれたら話聞くのに集中できるから。書き方とかも全然気にしなくていいよ。
どう書いてもいい……と言われても正直どうしたらいいかよくわからないので、とりあえずなるべく速記することにした。
しかも、椅子まで引っ張られるというなら本人以外にも物理的な接触をしてくる存在ということになる。本人にも見えないし、早智にもまだ何かわからない厄介な存在だ……。
誤解してる人が多いけど、聖書に出てくる「悪魔」や「悪霊」って、必ずしも神様と敵対しているものばかりじゃないんです。
もともとは「神様が人々に送って不幸をもたらすもの」って思われてたし、人間が悪に傾く可能性を神様に「訴える者」として登場するところもあるし……。
今、弥恵さんを困らせているものが悪魔かどうかはわからないけど、僕らが気づかなきゃならないものを気づかせるきっかけになるものかもしれません。