死んだはずのカノジョが、スマホになった件
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文字数 1,822文字
スマホのショップ、すごい、混んでるね
うん、順番待ちだね……
なんか、たっくん、元気ないよね?
うん……
このまま、アイちゃんのスマホが壊れちゃったら、どうしようかと……
まだ、自分で修理する自信ないし……
そんな、心配しなくて、大丈夫だよぉ
多分、バッテリー交換すれば、すぐ直るから
……それにさ
ここのショップ
今、受付の店員さん、みんな、男の人じゃない?
他の男の人が、アイちゃんのスマホに触るかと思うと……
なんだか、ちょっと、胸がモヤモヤするんだよね……
えっ!?
いや、焼きもち、焼いてくれるのは嬉しいんだけど
でもね……
お医者さんが男の人だからって
彼氏が、焼きもち焼いたりはしないでしょ?
い、いや、まあ、そうなんだけどさ……
そっか、お医者さんだと思えばいいのか……
番号札、169番でお待ちのお客様
じゃあ、あたし、怪しまれないように
ずっと、黙ってるから
うん、わかった
さすがに、こんなに勝手に、よく喋るスマホ、あり得ないもんね
お待たせいたしました
今日はどうされましたか?
いや、ここ最近、スマホの調子が悪くて……
電池の消耗が激しくて
半日に一回は、充電しなくてはならなくて
それに、充電にも、すごい時間がかかって
それでも、充電されているのか、されていないのか、よくわからない状況でして
なるほど
ちょっと、スマホ、拝見してもいいですか?
は、はいっ……
どっ、どうぞっ……
では、失礼しますね
ああ、アイちゃん……
アイちゃんが、他の男の手に……
(ちょっと、たっくん、心の声が漏れちゃってるよっ)
お客様、どうかされましたか?
いっ、いえ……
なんでもないです……
あの、スマホのカバー、外させてもらってもいいでしょうか?
そ、そんな、ひどいことを……
スマホカバーを外すだなんて……
なんという辱め……
お、お客様?
(ちょっと、たっくん、落ち着いて、落ち着いて)
い、いやっ、せめて
せめて、俺のこの手で
優しく脱がせてあげますから
ごめんね、アイちゃん
恥ずかしいだろうけど、我慢してね
(いや、今のあたしはスマホだから、恥ずかしいとかないから)
(人間じゃあないからね?)
そうですね、多分、バッテリーだと思いますし
中を開けて調べてみて、交換になるかと思うのですが
中を開けるって……
やはり、手術ですかっ!?
(ちょっと、たっくんってばっ!)
アイちゃんは、助かりますよねっ!?
お願いします、どうか、どうか、アイちゃんを、直してくださいっ!
お金をならいくらでも出しますからっ!!
(たっくん!たっくん!)
そうですね、修理代も、結構かかりますし……
この機種も、かなり長くお使いのようですし
この際、いっそ、新しいスマホに変えられては、いかがでしょうか?
そ、そんな、新しいスマホに変えろだなんて……
あなた、それでも人間ですかっ!?
あなたには、人の心ってもんがないんですかっ!?
お、お客様ぁっ!?
たっくん、いい加減にしてっ!!
……あっ
(しまった!! つい!)
??
……えーと
……ああ、アラームですかね
ああ、アラームですか……
随分と、変わった、アラームをお使いで
このスマホには、すごい思い入れがあって
どうしても、このスマホじゃないとダメなんですっ
だから、絶対、修理で、お願いします
なるほどですね
よかった、アイちゃんの手術が無事に済んで
だからあ、たっくんは、心配し過ぎなんだってばぁ
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