男の子と女の子Ⅱ
文字数 994文字
それから毎日、二人はこっそり屋敷に通い、子猫の世話をしました。
ある夜、男の子の家に、女の子の母親があわてた様子で来ました。
「うちの子がまだ帰ってこないの!」
男の子は、女の子と子猫とのところに行ってから一緒に帰ってきたので、そんなはずはないと思いました。
「一度帰ってきてまたでかけたみたいなの。こちらにおじゃましてないかしら? どこか心当たりはないかしら?」
「今日も一緒に帰ってきたんでしょう? あんた何か知らないの?」
男の子は、母親に問いつめられる前に、もう家を飛び出していました。
女の子がいるとしたらあの場所しかありません。
男の子は息を切らせながら、屋敷の奥に入っていきます。
子猫の鳴き声が聞こえます。
階段を上り、触れた手すりは、どこかなつかしい感触でした。
二階の奥、そこが寝室であることを、男の子はすでに知っていました。
初めて入るはずのこの部屋のドアノブに触れた瞬間、何度もそうしてきたような感覚が手に残りました。
ドアを開けるとそこは青白い薄明かりの空間でした。
窓から差し込む月明かりに照らされて、女の子が子猫を抱きしめて、古いベッドで眠っています。
男の子は女の子の顔をのぞき込みました。
不思議な感情が湧き起こります。
女の子はゆっくりと目を開けました。
「……夢を見たわ」
「どんな?」
「ずっとここで眠っている夢よ。夢の中でさらに夢を見ていた」
「どんな夢?」
「猫を追いかけて走る夢。丘の上の木にもたれて、誰かが待ってるの。私はその人に会いたくて会いたくて……。もう少しでその人の顔が見れるところだった。その人は猫を抱き上げて、そして振り向くの。そうしたら……」
「そうしたら?」
「そうしたら、目の前にあんたの顔があったのよ」
女の子は口をとがらせて、男の子の頬をぎゅっとつねって起きあがりました。
「こんなところで何やってるんだよ」
男の子は、つねられた頬をなでながら、非難がましく言いました。
「だって夜は寒いから。最近特に寒いじゃない? だからこの子が心配で」
女の子は猫をなでながら言いました。
「とにかく帰ろう。おばさんが心配して家まで来たんだ」
「たいへん!」
女の子は男の子と手をつなぎ、走って家に帰りました。
二人は両方の親からきつく叱られましたが、今度もまたこんなことがあってはたまらないと思った女の子の母親が、とうとう猫を飼うことを許してくれました。
ある夜、男の子の家に、女の子の母親があわてた様子で来ました。
「うちの子がまだ帰ってこないの!」
男の子は、女の子と子猫とのところに行ってから一緒に帰ってきたので、そんなはずはないと思いました。
「一度帰ってきてまたでかけたみたいなの。こちらにおじゃましてないかしら? どこか心当たりはないかしら?」
「今日も一緒に帰ってきたんでしょう? あんた何か知らないの?」
男の子は、母親に問いつめられる前に、もう家を飛び出していました。
女の子がいるとしたらあの場所しかありません。
男の子は息を切らせながら、屋敷の奥に入っていきます。
子猫の鳴き声が聞こえます。
階段を上り、触れた手すりは、どこかなつかしい感触でした。
二階の奥、そこが寝室であることを、男の子はすでに知っていました。
初めて入るはずのこの部屋のドアノブに触れた瞬間、何度もそうしてきたような感覚が手に残りました。
ドアを開けるとそこは青白い薄明かりの空間でした。
窓から差し込む月明かりに照らされて、女の子が子猫を抱きしめて、古いベッドで眠っています。
男の子は女の子の顔をのぞき込みました。
不思議な感情が湧き起こります。
女の子はゆっくりと目を開けました。
「……夢を見たわ」
「どんな?」
「ずっとここで眠っている夢よ。夢の中でさらに夢を見ていた」
「どんな夢?」
「猫を追いかけて走る夢。丘の上の木にもたれて、誰かが待ってるの。私はその人に会いたくて会いたくて……。もう少しでその人の顔が見れるところだった。その人は猫を抱き上げて、そして振り向くの。そうしたら……」
「そうしたら?」
「そうしたら、目の前にあんたの顔があったのよ」
女の子は口をとがらせて、男の子の頬をぎゅっとつねって起きあがりました。
「こんなところで何やってるんだよ」
男の子は、つねられた頬をなでながら、非難がましく言いました。
「だって夜は寒いから。最近特に寒いじゃない? だからこの子が心配で」
女の子は猫をなでながら言いました。
「とにかく帰ろう。おばさんが心配して家まで来たんだ」
「たいへん!」
女の子は男の子と手をつなぎ、走って家に帰りました。
二人は両方の親からきつく叱られましたが、今度もまたこんなことがあってはたまらないと思った女の子の母親が、とうとう猫を飼うことを許してくれました。