月詠三言の求愛(3)
文字数 3,582文字
レッドドラゴンがいるウルチ火山をめざし、
順調に冒険をつづけた。
そして3週間が経過―
だが、その間も隊長(荒部)と巨乳(花咲)の間には会話がない。
隊長は「戦闘力」「人格」とともにリーダーとしての素質は申し分なく、
わたしやしいたけ(身ノ丈)に気さくに声をかける。
なぜ巨乳にだけ、声をかけないのか?
この2人の間には……なにかある…。
だが、原因を聞けるハズもなく……
しかし、ウルチ火山に近くなればなるほど、
「早急に手を打たねば」
と長年のわたしの勘がそういっている。
なぜなら、敵が強敵であればあるほど、
パーティーの連携が絶対に必要だからだ!!
とくに巨乳は魔法使いなので、魔法で先手を打ち、突破口をつくる必要がある。
そのあと、戦士や剣士が接近戦に持ちこむのだが、
その間、魔法使いや僧侶はタイミングを見はからって
限定的な攻撃魔法や回復魔法で、戦士や剣士をサポートする。
そこで大事なのは日ごろの声かけなどの
コミュニケーションなのだ!!
わたしが他社で隊長として仕事をしていたときは、
コミュニケーションを一番に大切にしてきた。
今となっては問題かもしれないが、部下の敬語は禁止にし、
気軽にモノを言える雰囲気づくりをめざした。
そして仕事のあとに必ず飲み会を開いていた!!
(今どきの若者はウザいと思うかもしれないが……)
ただ飲み会といっても自由参加で、
「来たいヤツだけくればいい」
という趣向だ。
もし飲み会にきたら、
「わたしに言いたいことがある」のかもしれないし、
「皆で共有したい悩みがある」のかもしれない。
飲み会にこなかったら、
「疲れていたり、体調が悪い」のかもしれないし、
「ナイーブなことがあって、他人と接したくない」のかもしれない。
そのときは、後日、個別にそいつに話しかければいい。
なによりも人間は酒が入ると、心の垣根が崩れやすくなり、
悩みやグチをいいやすくなる。
まぁ、これも良し悪しがあって、深酒をすると翌朝にヒビいたり、
上下関係がキビしい会社で、敬語を禁止にすると、
会社と対立し、もめる原因にもなる。
それで退職したことも多々あるのだが……
………おっと、すまん!
長々とモノ想いにふけってしまった。
周りを見ると、いつの間にか太陽が沈み、
我々はウルチ火山周辺の街に、停泊することになった。
かなり疲れているようで、体のあちこちが痛い……。
10代や20代のころは、筋肉痛などで苦しむことはなかったが、
30代なかば、40代にさしかかると……。
若いころに親が「腰が痛い」とか「階段、のぼるのめっちゃしんどい」とか
いっていたが、今になってその気持ちがわかる…。
老化はダレにでもやってくる、自然の原理なのだ。
確実に肉体は衰えていく……。
観光地として有名で、川魚や山菜など旬な料理も楽しみの一つだ。
観光地とあって、周辺警備も徹底しており、
有名な警備会社が入っている。
わたしは、頭の呪符をとり、服をぬぎ、浴衣に着がえた。
この街は浴衣で外を歩けるのも楽しみの一つ。
和風総本家的に言うと
「日本っていいなぁ」と思える場所なのだ。
さっそく、浴衣姿で宿の温泉に向かう。
そのときだった―
そういうと、隊長は男湯に入っていった。
ふはははははははははは!!!!!!!!
おかぁちゃん! わたしは見合いをせんでも、
自力で阿部寛をモノにできるんやっっっ!!!!
隊長がテルマエで、肌がスベスベになった
浴衣姿の大人の魅力いっぱいのわたしを
部屋にいれたいのは
まるっと、全部お見通しなんやぁぁぁぁ!!)
※阿部寛が好きすぎる三言さんの妄言です。
温泉に入り、体をお清めしなくては!
脱衣所で浴衣と下着を脱ぎ、タオルを片手に、
浴場の扉をスパーンとあける。
湯につかり、腕などを揉んでいる。
う、胸がでかい!!!!!!!!!
まるで、夕張メロンやないかぁぁぁ!!!
ほとんどだから、体はキズだらけになる。
そういうこともあって、女性のほとんどが、
遠距離攻撃の魔法使いや僧侶だ。
剣士や戦士もたまにいるが、体に傷がつくので少ない、
傷が付いたら、引退するヤツが多いのが現状だ。
魔法剣士は、魔法を剣から創出する特殊ジョブだ。
わたしの場合は剣の重さに加え、
魔法(月の力)の重量もかかってくる。
だからある一定の筋肉を維持しなければ
自らの魔法でケガをすることもある。
なんで、毎日の鍛錬のつみかさねが重要なのだ。
こ、このままだと……
体に傷がついて、子供が産めない体になったりとか…
体力的に歳をとっても続けられない仕事だとか…
だったら、早めに転職しないと、とか…
そう思って…しまって…
いまさらワードもエクセルも会計ソフトも
使えないわたしが事務員になれると思うか?
企業も馬鹿ではない。
経験者でなければ、より若い新卒をとって育てるだろう。
即戦力がほしいなら、経験者をとるだろう。
わたしは、若くもなく、経験もない。
じゃあ、企業にとってのメリットは?
採るわけないのだ。
だから歳をとれば、経験しかなくなる。
それか思いきって、時間と金をかけて勉強し、
新しい道を切り開くかだ。
わたしは風呂からあがると、丁寧に体と髪を洗い、
ふたたび湯につかった。
恐らく仕事を辞めようか迷っていて…それで隊長に…
相談しているのだろう…。
おっとり巨乳は、若いながらも上級魔法を扱うことができる
スバらしい人材だ……会社としての損失はでかいからな…)
脱衣所に向かった。
タオルで髪をふきながら、鏡にうつった自分の
体をマジマジとみる……。
女性らしい体の丸みはなく(胸もなく!)
あるのは無数の傷……。
腹は6つに割れ、手や足や肩には、
アスリートのような筋肉がついている。
女性としての魅力は皆無に等しい……。
おっとり巨乳のマシュマロのような大きな胸、
しっとりとした、ヤワらかそうな肌が脳裏をよぎる。
脱衣所に置いてある、乳液を顔にぬる。
い、いかん、下着が上下ちぐはぐだ!
グロスも買わねば! 髪の毛も! 香水は…いいか……
い、忙しくなってきやがった!!!
し、しかし、恋とか愛というのは、
強敵があらわれたときよりも100倍緊張する!!!
隊長まっててくれ!
女になって、そちらに向かう!!
わたしの花の乱がはじまる……っっ!
つづく