(二)‐17
文字数 235文字
焼香を済ませた会社員が、俺たちに一礼した。そして礼儀作法通りの挨拶に続けて「三友銀行の上杉千治と申します」と言って名刺を差し出した。俺は妹と一緒にその名刺を眺めた。きっと以前の同僚か、部下だった人か、何かだろうと思った。が、違った。
「こんなところで申し上げるのも失礼な話なのですが、一応お知らせしておこうと思いまして」
そう前置きをして、上杉氏は言った。よく見ると、俺とだいたい同年代くらいに見えた。
「実は当銀行ではお父様に対して貸し付けをしておりまして……」
(続く)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)