第65話  家事審判被害者の会(仮)

文字数 1,700文字

 元妻には、もう何の怨みもない。
 関心も興味もない。赤の他人だ。
 人格障害か愛着障害か発達障害か、病名は何か分からないが、本人が正常だと言い張る以上、治しようもないし、家庭内で異常な言動を繰り返し、夫や娘、義父母を思いやるどころか、家庭内では一方的に責め立て、自分の演技や嘘が破綻すると、家の外でわめき立て、裁判では嘘八百の申立てをし、家庭崩壊へ追い込むという壊れた本性が露見した以上は、生涯の伴侶として共白髪など望むべくもない。
 精神障害者を伴侶に選んだ過失は、私にある。
 無駄な裁判費用を使い、最終的に家庭を壊し、娘を片親にした原因が、すべて精神的に壊れた人間を選んだことに起因する以上、すべては私の過ちと受け止めることができる。
 愛する娘に関しても、精神的に壊れた母親のもとに生まれる運命だったと甘受できる。もちろん、父親の務めとして、月一回の面会で娘の身の安全を確保し続けなければならない。
 精神的に壊れた人間を責めようがない。
 嘘を悪いことだという認識がない大人に、どうやって嘘の不道徳さを教えられるだろうか。
 小さい頃に愛が欠け、自分を守るために必死で嘘をつき、演技をすることで社会に適応した人間だ。嘘を注意して態度が改まるようなら、最初からこんな人間にはなっていない。
 根本的に人としてボタンを掛け違っていて、今さら正しようもない。普通じゃない人間に、普通に生きろなんて、最初から無理難題だし、難題を押し付けることに無理がある。
 自分でトラクターを選んでおいて、「なんでこれは高速を走れないんだ!」とクレームをつけるぐらいの理不尽さだ。そういう人間だと思って、さようならするのが、夫としてではなく、人としての愛情だと思う。

 家庭裁判所や家事審判の問題は、これとはまったく別だ。
 人格障害の人間が嘘八百の申立てをする可能性は多分にある。そのように生まれついた人間だから、止めようもない。
 しかし、裁判所が公的機関として、嘘の見極めもしないどころか、百パーセント鵜呑みにして、母性優先の原則に従い、子の福祉を犠牲にして、母親の権利だけを守るというのはどうなんだ。
 この母性優先の根拠って、誰が主たる監護者だったかなんていう事実は一切どうでもよくて、子供は母親の腹から出てきたから母親の所有物という即物的な理由じゃないのか。
 幼児は人格を持つ人間ではなく、ただの物だから、それを製造した所有者の元に戻すのが当然というのが、裁判官の本音じゃないのか。
 その根拠に基づけば、子供の声も父親の主張もすべての事実もねじ伏せた上で、調査官のねじ曲がった主観というスパイスを効かせれば、子は母親にという家裁の判断は、社会的には非常識で理不尽で不条理で不合理であっても、家事審判という密室では正当なものなのだろう。
 これが本当に正義かどうか、家事審判の内実を社会的に明らかにして、国民全体の目から見て本当に正しいかどうか判断を仰ぐ時期が来ていると思う。

 娘も私も精神障害者の被害者だったわけではない。曲がりなりにも、家庭を築き、二親の元に娘は生まれたのだ。精神的に壊れた人間を、妻に持ち、母に持ったのだと諦めることができる。
 ただ、家庭裁判所という国家機関の現状については、とうてい諦めることもできないし、許すことも、認めることもできない。一国民として、嘆かわしい組織の在り方だとさえ思う。
 娘と私は、家庭裁判所によって家庭を壊された、家事審判の被害者だ。

 執行官は言った。
「裁判所には、裁判所を変えることはできない。裁判所を変えるなら、国会で変えてもらうしかない。」
 裁判所を正すには、国民の代表である国会議員の力が要る。そのためには、家事審判の実態を広く国民に知ってもらう必要がある。
 理不尽な家事審判を経験した人は皆、声を上げるべきだと思う。おかしいものはおかしいし、不正は不正だし、間違いは間違いだ。
 嘘は、絶対に正義ではない。
 理不尽な家事審判で同じ苦しみを経験する同志とともに戦い続けたいと思う。家事審判被害者の会(仮)の一員として。
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