第34話  体力テスト 女子の部 2

エピソード文字数 4,342文字


  ※



さあ各馬一斉に、スタートしましたぁ!

 馬じゃねーと心の中で突っ込みながら、俺達も女子生徒の雄姿を見守る事となった。

 というのも、測定する先生まで作業を止め、走る姿を見てるじゃないか。


 グラウンド五週だから、1キロくらいか。

凄いね美神さん。陸上部と互角じゃん

 染谷くんの言う通りだ。先頭を走る集団に紛れてペースを落とさず滅茶苦茶真面目に走ってやがる。


 まぁあいつは昔から、こういう行事は頑張る方だったしな。

竜王さんって子も早いなぁ。運動神経も良さそうだね

 確かに。これは染谷くんに同意した。

 あんな美人でありながらも綺麗なモーションしてやがる。聖奈と同じくハイペースだな。

AABABBCAAACB……
西部? おい。何言ってるの?
多分……トップ集団の女子生徒から順番に何カップか調べてるんだと思う。
やっぱ西部は……かなり痛いヤツだと認識した。

っつーか。雑魚ばっかりでつまんねーな。


やっぱりここは……白竹さんしかいねぇだろ。


って……だっは! やっべーよ白竹さんっ! なんだあれは!

 先頭集団から遥か後方。


 白竹さんが一生懸命走っておられるのはいいのだが……こりゃすげーな。


 ものすごく。揺れてるぞ。

上下にぼよよんぼよよん。うっはーたまんねー!


さすがFカップ確定なだけあるぜっ! 大迫力だっつーの!

いや~これは本当に凄いや。


なぁ西部。この動画をさ、おっぱい職人のページに投稿したら、かなり上位にいけるよね?

何言ってんだこいつら。

ってゆーか真鍋もかなり痛い頭の持ち主なのか?


おっぱい職人って何だよ!

そりゃそうさ。だって彼女は恐らく……


レジェンドおっぱいである「魔乳」の継承者なのだからな!

やばいこいつ。レジェンドおっぱいとか言い始めたぞ。


流石に今の発言で、友達が欲しい俺ですら引いちまった。

やべーよ白竹さぁん!


ぐわんぐわんだぜよ~~! 

すんばらしすぎるっぺよ~!


まさにおっぱい完全体とは彼女のことだな

 うるさい西部。さっきから猿みてーな声を出すなよ。


 だが、そんな奴は西部だけにあらず、色んな場所から「すごい揺れてる」やら「卑猥すぎ」とか聞こえてくる。

おい、魔樹。ねーちゃんが好き放題言われてんぞ
……ふぅ

 ん? 落ち込んでるのか? 

 額に手をあてがい、溜息を漏らす魔樹。

 

 まぁこの場で西部や真鍋をボコっても、大勢は変わらんだろうし。

 みんなねーちゃんの胸に夢中だなこりゃ。

あぁくっそ~~! 必死に走りつつも悶える白竹さんをスマホに納めておきたかったぜ。


もちのろん! 自分用にするんだけどな

だね。僕もこのシーンは撮りたかったよ。


今度の体育は休もうかな

 西部と真鍋。お前らはアホか。

 こんなシーンを撮って何が楽しいんだか。



 そろそろ魔樹の鉄拳でも飛びそうだとは思ったが、魔樹は腕を組んで目を閉じ、じっとマラソンが終わるのを待っているようだ。



 すげー我慢してる。オーラが滲み出てて怖い。

 こいつは嵐が去るのをじっと待ってるぞ。



 さて、そのマラソンの方は……あっさりと周回遅れになる白竹さん。

 後方にいた集団からも徐々に離されてしまい、ぶっちぎりの最下位になってしまう。

美優。頑張りなさい
あぁ~ふぅ。聖奈ちゃ……あん

 聖奈が追い越し際に声を掛けるが、既にヘロヘロな白竹さんだった。


 しかも男子生徒が見守る前でペースを落とした白竹さんは、呼吸を荒げながら、とうとう膝に手を付け走るのを辞めてしまった。


はひぃ~はひぃ~~はぅうあ~~

 ああっ。白竹さんの瞳の奥にグルグル模様が見える。

 最早限界と言わんばかりな彼女は、ゆっくりと崩れ落ちるように倒れるのだった。

も、もうダメです。力を使い切ったのでし
ぐあっ! 白竹さ……なんつー卑猥なポーズなんだぁ!
も、もう少し捲れれば下乳が!
サービスシーンすぎっだろ

 男子生徒達がお祭り騒ぎになってしまうと、もう収拾が付かなくなる。さっきまで「騒ぐな」と言っていた体育教諭すら何も言わない。それどころか男子生徒と一緒に悶える白竹さんを見てる始末。




 白竹さんはもう限界だ。これでリタイアでいいじゃないか。



 ってか。倒れこむ彼女に、誰も救いの手を差し伸べないのはどうなのだ? 

 そのまま走ってる女子生徒もみんな薄情なものだ。

美優っ!

 いつの間にか男子生徒の最前列で吼えたのは魔樹だった。


 だが、その声も彼女に届いているのか……

 というか聞こえてなさそうだな。完全に仰向けになってしまった。

うぉっ! そそり立つ二つの巨塔すんばらしい

仰向けであんなに出てるなんて。


プリンみたいに微妙に揺れてるし……すごい!

 そして俺の横でアホな会話をする西部と真鍋。


 更には他の男子生徒まで白竹さんを好き放題いいやがる。


 なんつーか。

 そろそろ……ウザくなってきた。

そう思っていると……

  

いい加減にしろよ。あれでも美優は頑張ってる。馬鹿にするな!

 そう叫んだのは魔樹だった。美優ちゃんを背にして男子生徒全員に喧嘩を売るように睨みつける。


 おいおい。魔樹。公衆の面前なのに容赦ねぇな。

なんだこいつ。彼氏?
双子の弟らしいぜ
外野もその魔樹の態度にエキサイトしはじめる。
美優を馬鹿にする奴は僕が叩き潰してやる!

 おいおい。こいつ……マジで切れちまってるぞ。


 こんな大衆の中で、尋常じゃない空気が漂い始めると、俺は染谷くんと一緒に魔樹の横についていた。


 というか。

 白竹さんが面白おかしく言われているのは我慢ならない。

みんな。白竹さんも頑張ってんだ。そう言うのは止めにしない?
俺はやんわり言うと、まさかの西部に突っ込まれる。

てめー黒澤。染谷。そんな所で彼女のポイントを稼ごうったって汚ねーぞ!


それな……ぐっ!

黙れよ!

 魔樹が西部の胸倉を掴むと、周りは騒然となった。

 本気のマジキレ顔な魔樹に、染谷くんはいつもの笑顔で、

魔樹くん。やるだけ無駄だ

 そういいつつ、胸倉を掴んだ手を開放していた。

あの。みんなに言っとくけど。この白竹さんの弟さん。怒らすとめちゃ強いぜ。いう事聞いた方が良いと思うけどな

 染谷くんの一言で、周囲もやたら静かになる。

 そのタイミングで俺も魔樹を宥めようとした。

魔樹。とりあえず落ち着け。

こんなので停学になったら、つまんねーだろ? 遠方組の仲間じゃないか

は? 僕は君達と仲間になったつもりはない。余計な事をするな!
こいつは何で……突っかかってくるかな?

ああそうかい。別にてめーがどう思おうと構わんが……


俺は白竹さんに対しては。そういう仲間意識があるんだよ

…………
だんまりを決め込む魔樹だったが、俺達を睨むのは忘れない。
なぁ魔樹。てめーが停学になったらその間、誰がねーちゃんをナンパから守るんだ?

 染谷くんも魔樹を呼び捨てにする始末。


 そしてさらっと上手い事を言いやがる。

 というのも、一瞬魔樹の顔がハッとなったからだ。

…………

 さて。だんまりを決め込む魔樹は放っておこう。

 勝手に俺達を睨んでろ。

白竹さ~ん。頑張りましょう

う、うぇ~~~。


私わきっと、ゾンビに追いかけられたら真っ先に食べられる運命なのでし

 本当に限界っぽいな。目がずっとグルグルだし。



 丁度その時。もう一周回ってきた聖奈が目に入ると、

聖奈っ! 白竹さんを頼む!

(ん? 美神さんを名前で呼ぶ? 何となく仲は良いと思ってたけど)

 

おい黒澤! てめぇ


美神さんを下の名前で呼ぶとは……なんつー無礼なヤツだぁ!

(しまった。つい普通に叫んじまったぜ)

 手を上げて了解する聖奈は、白竹さんの元まで来ると、その身体を引っ張り起こしてくれた。


 しかも一緒に走っていた竜王さんまで二人の元でストップすると、彼女も白竹さんの手を持ち一緒に走ってくれる。

うぉ! 三大美少女が集結しやがった

 どうやら俺が聖奈を呼び捨てにしたのは、西部の頭の中から消え去ったらしい。


 そっちのがありがたいぜ。

何だかあそこだけ。世界が違うね
 確かに真鍋の言う通り、あそこだけ二次元っぽい空気になっちまってるのは否定しない。 

あ……ああっ。でぃがどございまし。

早く逃げないと、ゾンビさんが……

余計な事言わないでいいから、とりあえず一周走りきるわよ
頑張ってね白竹さん。あともうちょいです

 おおっ。竜王さんとやらも優しいな。

 聖奈と一緒に白竹さんを助けるシーンはとてもほっこりするのであった。

どーせなら。みんなでゴールしましょっか。

そだねー。みんなで歩けば怖くないっていう。


白竹さんファイトっ! ゴールは目前だぞお。

 白竹さんの回りに集まる女子生徒。


 すると「ひぃふう」という悶絶寸前な声を上げながらも歩き出した白竹さん。

 聖奈と竜王さんがしっかりサポートしてくれる。

魔樹。みんなに任しときゃ大丈夫だろ。

……美優


 まぁここまでにしておこう。余計な事を言って睨まれるよりマシだ。


 そうでなくとも……

 魔樹は視線を落とし、とてもつらそうな顔をしてたからな。




 でも……今のお前の気持ち。何となく分かる。


 白竹さんを守ろうとする魔樹を見てると、自分と重なって見えるんだ。




 俺と凛のように…… 

 兄弟を守るように、そんな風に見えたから。





 ※ 



 女子のマラソンが終わり、休憩時間になると一安心だな。


 遠方組が集まると、早速先程の話題となる。

本当に走るにぉ。苦手なんでしゅ。


昔っから体力なくて……いつもリレーは最後尾でして。

いえいえ。白竹さん。最後までよく頑張ったじゃないですか。


だね。自分で走ることに意義があるし。ナイスですよ
そうよ。私がおんぶしてあげよっか? って言ったけど、ちゃんと走ったもんね

 皆優しく白竹さんに声を掛ける。


 どんな結果であれ、ちゃんと必死になってやれば、それはとても価値があると思うんです。

美神さん。ありがとう。助かりました

 そんな丁寧語を話すのは魔樹だった。

 しかもあのマジキレ顔をしてたアイツとは程遠い、感謝という感情が溢れ出ているような、改心した、そんな悟りを開いた顔になっていた。


 こりゃマジだ。

 マジで感謝しているのは、その場にいる全員が理解できるものであった。



 うん。こいつは悪い奴じゃないんだよ。

 ただ姉を守ろうとするプロセスが、やたら攻撃的なだけなのだ。




 などと魔樹の解説をしてると、ふと俺と目が合った。




…………
…………

 

 目が合った瞬間、ジトっとした目になるのはどういう事なんだよ。



 なんだか……やたら嫌われてる気がする。

 まぁ一度言い争った関係だからな。しょーがないっちゃしょーがない。




 だけどな魔樹。



 お前が本当は良い奴だと、分かっちまったからには……

 俺とも是非、仲良くしてもらわなきゃ困るぜ。

 


 さて、こいつをどうやってデレさせようか、色々と考えるのであった。


――――――――――――


次回。体力テスト 男子の部 1~2

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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