第14話

文字数 600文字



 バサバサバサ!!

 突然、大きな音がした。たいした風もないのに枝が揺れ、何枚もの千切れた葉が空を舞った。木々の間から茶色い塊が滑るようにすっと降りてきて、小夜の頭の上あたりでフワフワと漂った。

 老人たちは突然の闖入者にざわついた。

「お……おい! 何だべ?」

「ありゃあ……まさか!」

「た、確かに似てるが……こんな時間だよ?」

「こんな真っ昼間に見たことはねえ。だけんども、あのまあるっこくてフワフワした感じ、ありゃあ……」

 大人たちは顔を見合わせて叫んだ。「森っ子だ!!」


 小夜たちの目の前に現れ、フラフラと宙に揺れている物――それはブーンとけたたましい音を立てて空を飛ぶ毛玉だった。老人たちが断言したように、物体にはこんもり・ふわふわしていて、特に丸みがある姿はフクロウそっくりだった。

 『森っ子』は人間たちを値踏みするかのように、右に左にと揺れていた。音はうるさいが威嚇するわけでも、襲いかかってくる様子もない。どちらかというと監視しているようだった。

「はー、森っ子がこんなトコに迎えに来てくれるだなんて、まあ(めんずら)しいらしい事もあるもんさ。ワシら獣に襲われたわけでもねえのによ」

「最近姿見なかったけんど、元気にやってたんだなあ」

(やった、成功!)

 キヌと治兵衛が懐かしそうに目を輝かせる様子に、小夜は興奮を押さえられなかった。

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