校内のフリーピアノ

文字数 389文字

最終下校時間が近づくと、どこからかピアノの音が聞こえる。
それが東校舎4階の音楽室からであり、犯人がK君だということも私は熟知している。

ある日生徒会が終わって廊下を急ぐと、伴奏が聞こえたので、部屋を覗いたらそこには彼がいた。
彼は短い髪を精一杯揺らしながら、人が変わったように指先を躍らせていた。
そんな姿に、不覚にも心を射抜かれてしまった。だから犯人というわけ。

秋の合唱コンで、彼を伴奏者に推薦しよう。
私は指揮者に立候補なんかして、彼の有志を一番近くで見るの。
でも、あの音色を私だけの秘密にもしたい…
それから生徒会終わりには、私は独演会のリピーターになっている。
階段のへりに座って。

同じ時刻、青年はピンマイクに指令を出した。
「さあ、次は例の曲だぞ」
別室の友人がPCを手際よく操作すると、
青年の襟に隠れた小型スピーカーから合唱コンのメロディが流れ出した。
「いいぞ、何もかも手順通りだ」
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