2 ✿ 理々の忘れ物

文字数 983文字

IGCIに招待された翌日、6月11日の朝のこと。

腹が重い。

食ーべーすーぎーたー!!

朝ごはんを食べたあと、食事会場から部屋に戻ってきた理々は、大の字で仰向けにベッドへ転がった。
理々。胃薬いる?
うん、もらう
理々は、咲良のくれた胃腸薬を飲んだ。
ええと。今から博物館行くんだっけ?

そうだよ。

プラナカン博物館と、シンガポール国立博物館ね。


午後は自主研修で、昼食は各グループに分かれて

ワンタンミー!

チキンラーイス!

スノーアイス!!

ランチの計画はしっかり出来てるのね
もちろん!
自主研修の各グループで自由に取る昼ご飯を、理々はなによりも楽しみにしていた。

ホテルから歩いて、理々たちはプラナカン博物館にやってきた。

ねぇ、プラナカンってなに?

ガイドブックによると……・

十五世紀、国際貿易拠点マラッカに来た中国人がマレー人などの現地妻を娶ったんだって。

その子孫がプラナカンって言うそうだよ

国際結婚、ハーフってことね。
そうだね。プラナカンの方たちが、マレー・中国文化に、アジア・ヨーロッパの移民文化を折衷させたって書いてあるよ
和洋折衷みたいなもんかー

プラナカンルーツをたどる一階フロアを鑑賞後、


生徒は「結婚」をテーマにした二階フロアへ移動した。

このテーブルクロス、百万個のビーズで作ってるんだって!

薔薇模様だね。

ヨーロッパのお茶会に出てきそう……ステキ

人がいっぱいで、近くで見られないや

五月と結は、展示へ吸い寄せられるように前の方へ行ってしまった。


理々は近くで見るのをあきらめた。

理々、こっちこっち。


見てこれ、プラナカンの花嫁衣装だって。

うおっ、豪華!

着てたのは絶対お金持ちだな!

綺麗だね……

ねぇ。咲良は将来、結婚したい?
え…えぇ!? い、いきなり…な…

そうか、結婚したいか

理々は?
うーん、結婚するとしたら本当に好きな人とがいいな
理々は、目の前の花嫁衣装を見つめる。
こんなキレイなドレスを着て祝福されたら、一生忘れられないだろうね
心臓がチクリと針を刺されたように痛んだ。
へんなの。シスターになる前に好きな人でもいたのかしら)
理々は肩をすくめた。
理々、浮かない顔して、どうしたの?

ん? ちょっとね。

忘れ物があったかなーって思っただけ

大事なもの?

分かんない。

でも、大丈夫。

今は……忘れたままでいいんだよ、きっと

(全部思い出したら苦しいから、記憶に鍵がかかっているのかもね)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色