魔法少女ナナナの日常②

文字数 1,676文字

【雨】
夜・椎名の部屋
エロはもうやめよっ!
……突然、なんだよ
BOSEくんは想像以上に清らかな精神の持ち主だったわ!

この私の魅惑的ボディで全く反応しないんだもの!

……いやいや
なによ
別に……
言いたいことあんなら、ハッキリ言いなさいよ
(彼だって男だ。今頃オナニーでもしてるだろうぜ。欲情しないのは多分、お前に魅力が……なんて死んでも言えん。つーか、言ったら殺される)

ええと、多分、彼はもっと真面目なアプローチが効くんじゃねぇかな……?

!!
あ、いや……(間違ったか!?)
ヨンシ、あんたにしては珍しく、的を射た意見だわ

私も同意見。彼にはやっぱり、王道ラブコメで攻めるのがいいと思うの

(良かった……)

だろう? で、王道ラブコメとは、具体的にはどういう?

ええとね。例えば……
次の日!
むう……降水確率は0%のはずだったが……
……あ、BOSEくん。今、帰り?
やあ、椎名さん

そうなんだが、生憎の土砂降りでね……参ってたところだよ

そうなんだぁ

(ウヒヒィ! 私のエレメント魔法にかかれば、天候すらも自由自在よぉ!)

(いやいや、普通、ここまでの規模の魔法を使いこなすなんて無理だっつの……この女、言いたかないが、魔法の素質だけはとんでもないぜ……あと料理も)
あ、あ、あの、ね?

(私ね、いつも傘持ち歩いてるのぉ♪ 良かったら、入ってかない?♡)

えと……

まあ、これも鍛錬のチャンスだと考えるべきかな

走って帰るとしよう

え……

(うそ、待って!)

(股間は押し付けられるのに、その程度のお誘いができねぇのかよ……相変わらずよく分からん女だよ)
ああ、いや、でも椎名さんを置いて帰るわけにもいかないか……
ドキンッ☆
そうだ。いいアイデアを思いついた

……ちょっと待っててくれないか?

……う、うん

(予定とは違うけど、なにかしら、ドキドキッ)

10分後
あ、お代は前払いで……ええ、お釣りは取っといて下さい

ええ、ではお願いします

……
さ、椎名さん

遠慮はいらない、乗ってくれ

僕は、走って帰るから

鍛錬、鍛錬!

あ、はい
寺って儲かるのかな……?
【雪】
夜・椎名の部屋
冬が寒くってほんとに良かったぁ~♪
ご機嫌だな、どうした
ウヒヒィ……時代はやっぱ冬よね、ってことに気がついたのよ!

ユグドラシルは名盤ね♡

今は6月だが……
クククッ……タクシーなんて呼べないくらいの大雪を降らせれば……

BOSEくんの右ポケットにお招きされてやるわ……

そしてゆくゆくは私の真ん中ポケットにBOSEくんのご子息を……(ぶつぶつ)

おいおい、ちょっと待て! いくらなんでも災害レベルの魔法を使わせるわけには……
はい、デザートのチーズケーキよ
!!
ね、ヨンシ……いいよね♡
くっ……(この濃厚な匂い……抗えん……!)

少しだけだぞ、すぐに溶かせよ!?

ウヒヒィ! さっすが、ヨンシ♡
次の日!
『降れぃ、雪よ!!』
ウヒヒィ! 大☆成☆功☆
……
あ! BOSEくん! 今、帰り?
やあ、椎名さん……
……? あれ、なんだか、元気がないみたい?
うん……こんな突然の大雪、きっと、大変な思いをしている人々が沢山いるだろうなと思うと……どうにもやり切れなくてね
え……あ……

なんて、たかが中学生が憂いても仕方がないことだけどね

さ、それじゃ帰ろうかな。せめて、帰り道で困っている人がいたら、お手伝いすることにするよ

……
あ、椎名さんはせめて雪が止むまで帰らない方がいいよ?

この雪じゃあ、タクシーや親御さんに迎えに来てもらうことも危険だと思うし……

職員室にいけば、先生方が何とか対策を打ってくれるんじゃないかな?

……あの、あの
じゃ!
あ……
……(あーあ)
……ねぇ、ヨンシ
なんだよ
私、やり過ぎたかしら?
……俺も同罪さ。とりあえず、この雪、溶かそうぜ?
……うん
ドゴォォォオオオ!!!
ビクッ!
な、なんだ!?
!! ヨンシ! あ、あれ、なに!?
あ、ありゃあ……『カゲジン』……か?

(いや、それにしてはデカすぎる……! 高層ビル並みだぞありゃ!?)

カゲジン!?

ほんとにいたのね……!

い、いや……(考えても仕方ねぇ!)と、とりあえず、向かうぞ!

魔法少女のチカラを発揮するときがきたっ!!

……ムリ
……はあ?
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登場人物紹介

椎名七瀬。

14歳の魔法少女。

使い魔のヨンシからは『ナナナ』と呼ばれている。

片想いしているBOSE君とイイカンジになるべく、魔法を悪用している。

基本的に手段を選ばないが、正攻法(真面目なお誘いなど)は苦手。

将来の夢は今どき珍しく『お嫁さんになること』であり、家事全般の腕は既に相当のレベルである。

特に料理はプロ並みであり、使い魔のヨンシには毎日絶品手料理を振舞うことで、魔法の悪用を黙認させている。

趣味は読書(少年誌のラブコメオンリー)


ちなみに、魔法少女の本分は地球上に時折現れて暴れまわる『カゲジン』と呼ばれる化け物を退治することだが、彼女が住む町には一向に現れないため、実戦経験は一度もない。


ヨンシ。

七瀬の使い魔。

この世界とは別次元にあるという魔法の国から派遣されてきた。

『カゲジン』を退治すべく、11~15歳までの女の子を半ば強引に魔法少女へと変貌させる役目を担っている。

何故わざわざ魔法の国が、別次元である地球を守ろうとするのか、その目的は不明である(ヨンシは末端であるため、知る由もない)。

七瀬の料理の虜になっており、彼女が私利私欲のために魔法を利用することは黙認している。

通常、普通の人間には姿を認識されない。


志摩満(しまみつる)。

あだ名は『BOSE』

寺の息子であり、14歳とは思えない落ち着いた雰囲気を宿している。

普通にモテる。

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