第9話

文字数 952文字

その後、数日が経過した。
シャーロットは父と再会を果たし、その満面の笑みをクリスティーンは見て微笑んだ。
最近ではよく、シャーロットから父親と出かけている写真がクリスティーンのもとに送られている。
寄宿学校はやめて転校することにしたらしい。
『まあ、正しい選択だ・・・』とクリスティーンの母はうなづく。
ニクソン氏はその無謀な投資によってファンドを縮小させたことから、職を解かれた。
ミセス・ドウグラスもメディアの影響から引責辞任を迫られ、それに応じた。
アンダーウッド議員も共謀の罪で逮捕された。
元々、スキャンダルも多かったので、議員としての復帰は難しい見通しだ。
それに現在の奥さんとの離婚調停中だ。
アンダーウッド氏の娘もそのいじめ等の現状を明るみに出され、メディアやネットからの度重なる批判によって、さらに行き場を失った。
この話で最も不幸な子どもは彼女かもしれない。
結果、彼女は鬱病になった。
しかし、この作品世界に、いや世界に絶望という文字はありえない。
それは、見えざる神の手が市場のみならず社会でも存在するからだ。
流石に世間もこのニュースを知って自分たちが行き過ぎたことをしたことに気付く。
彼女は教育に長けたとあるフランス人が手を挙げたことによって、フランスのリヨンに移住することになった。
おかげで鬱病も回復し、今では彼女も笑顔をみせるようにはなったようだ。
報われないことも多々あるが、結果この世界に見えざる神の手が市場や社会に存在する限り、共感によって完全無欠な不条理の不幸はありえないとクリスティーンの母は思うであった。
そんなこんなで一時の騒ぎは収まり、また普通の日常が戻ってくる。
クリスティーンも相変わらず憂鬱な天候の下、ステラさんの運転する車で学校へと向かう。
車を降りると見慣れた顔が前方に歩いているのが見えた。
「あれ?」
彼女は急いでその女の子を追っかける。
追いついた彼女はその女の子の肩を叩く。
「もしかして?」
オドオドした様子のその子は恐る恐る振り返ると、
表情を一転させた。
「クリスティーン!」
「シャーロット!あなたどうしてここに?」
「転校してきたのよ、あなたを追っかけて!」
二人は飛び上がり、手を繋いで学校の校舎へと歩き始めた。

<了>
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