菊の恩返し(8)

文字数 398文字

 桜の花が咲きはじめるころ、三郎の家はすっかりできあがり、そうして才之助の家とぴったりくっついてしまいました。
 黄英は、かべにあなをあけて、両方の家をじゆうに行き来できるようにしました。
 才之助はもう、少しも口出しせず、すべて黄英と三郎にまかせ、じぶんは近所の人と将棋ばかりさしています。

 ある日、一家三人で、すみだ川の桜を見に出かけました。ほどよいところに重箱をひろげて、才之助は持ってきたお酒を飲みはじめます。
「三郎、いっしょに飲もうじゃないか。さあ、えんりょなく」



 黄英は、飲んではいけません、と弟に目で知らせますが、三郎はへいきで、さかずきを手にとります。
「姉さん、わたしはもう、お酒を飲んでもいいのだよ。お金もたくさんたまったし、わたしがいなくなっても、姉さんたちは、一生あそんでくらせるでしょう。
 菊を作るのにも、あきちゃった」

 みょうなことをいって、お酒をひと口、口にふくみました。
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