そして現在。

文字数 582文字

 それから、僕は彼女を()でるようにくちづけるのが日課となり、現在(いま)に至る。

「ん、はぁ……。す、すまなかったの、司……」
 舌を離し、多分に濡れた目を伏せ、いつも身を縮こまらせる花姫様。
 そんな彼女へ、僕は一糸まとわぬカラダを火照(ほて)らせたまま、にこりと笑みだけで返す。
 口を開いたら、言葉がまろびでてしまいそうだったからだ。

 ――すまないのは僕のほうだよ、と。

 正直、『最後』までできないのはすごくつらいけれど、僕はわかってもいた。
 これが、彼女に

もっとも過激な行為だということが。

 彼女は『女神』だ。

 ニンゲンごときが穢していいはずもないし、本来なら、その(きよ)らなくちびるへ触れることすらおこがましい。

 それなのに。
 僕は彼女をここまで味わいつくしている。

 なんて、不遜(ふそん)で。傲慢(ごうまん)なのだろう。


「――で、では、今度はそなたの番じゃな! まずは服を着る! 本日の『めにゅー』は玉子焼きとほうれん草のおひたしと、あとは……」
「はぁーい」
 おかんモードに切りかえたらしい花姫様は、蒲団のまわりの整理を始める。

(この毎日がずうっと、続けばいいのに……)

 うつらうつらしながらも僕は、彼女がいつの間にか手早く用意してくれたらしい服一式(いっしき)へ手を伸ばした。
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