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文字数 797文字

 中間テストの範囲が示されたプリントが配られ、その日は終礼となった。いつもなら早々に教室を後にするが、まだ自席に座ってプリントの内容を一字ずつ読み拾っていた。
「お、今日は碌いるじゃん」
 プリントから目を離すと、永冨と沙川がいた。
「いつもいるけど」
「いやいや、終礼したと思ってすぐお前の席みても居ないからな」
 永冨がそう声を漏らすと、続け様に沙川が口を開く。
「テスト前で部活も無いから、一緒に帰れないかなって思ったんだけど、どう?」
「いいよ」
 特に何も考えることも無く、返事をした。そして罪悪で苛んでくるものが滲み出てくるのを感じた。
「あとあれだ、勉強も教えて貰おうぜ」
「僕の家が近いから、僕ん家で良いでしょ」
 二人の会話に耳を傾けながら、荷物を片す。帰り支度が済んだのを察したのか、二人は目配せした。
「碌って授業終わったら、いつもなにしてんの?」
「友達と帰ってるけど」
 いつもは立ち寄る駄菓子屋を素通りし、交差点に差し掛かる。同じ様に、普段は折れる道も真っ直ぐに行く。
「えっ、誰? 同じクラスのやつ?」
「否、汰瀬だよ」
「汰瀬って、あの水泳凄い奴だっけ」
 そうだと相槌を打つと、冨永が意外だとでも言いたげな表情をした。そうなるのは分かるが、少し失礼じゃないだろうかそれは。
「碌って過去に水泳とかしてたの?」
「うん」
 沙川はそれを聞いて納得したようだった。
「あそこが僕ん家だよ」
 彼が指さした方には、ベージュの外壁をした一軒家があった。築十年は経っていないと思われるその家をみて、何となく察してはいたが裕福な人であるのは確かだった。それは普段目にする所作を見てもそうだ。
「今の時間は誰も居ないから」
 玄関に入った沙川はそう言い残して、廊下の奥に進んで行った。永冨はどういうことか分かっているらしく、家に上がって直ぐにあった階段へと向かっていた。
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