ふたつの湖

文字数 1,237文字

 レイ・ブラッドベリ作「みずうみ」も、エリナー・ファージョン作「パニュキス」も、
 あらすじが、かなり似ています。共通しています。
 どちらも、美しい湖のほとりが舞台。
 どちらも、おさない子どもどうしのピュアな恋のおはなし。

 ほーっ…… ←私のため息です(笑)

 湖って、それだけでもう、
・神秘
・純愛
・追憶
・哀切
 とか、とか、そういうおはなしになりそうじゃないですか?

 まあ現実には湖畔に工場が建ってたり、合宿所が建ってたり、「白鳥の湖号」なんていうやらかしちゃった感満載のネーミングの遊覧船やそれをちっちゃくした足でぱたぱたこぐタイプのアヒルのボートが浮かんでたり、どこから来たのかリア充な人たちがバーベキューや花火できゃあきゃあ大騒ぎしてたり、とか、とか、……
 私はそんな体験しかないですけど。ええ。
 どことは言いませんけど諏訪湖とか河口湖とか山中湖とかですけどね。ええ!orz

 忘れましょう!(^^)/

 レイ・ブラッドベリの「みずうみ」は、『10月はたそがれの国』(宇野利泰/訳)または『黒いカーニバル』(伊藤典夫/訳)という短編集におさめられています。
 私はじつは次のアンソロジーで読みました。
『30の神品(しんぴん) ショートショート傑作選 』(江坂遊/選、扶桑社、2016年)
(訳は伊藤訳のほうです。)
「神品」ってすごくないですか。神ですよ。そこまで言う?

「みずうみ」のあらすじは、こうです。
 主人公の男の子の名前はハロルド。夏に湖のほとりで、なかよしの女の子タリイと砂の城をつくって遊びます。子どもといっても二人は十二歳、それほど幼くはありません。
 少女タリイが湖に消えます。
 遺体も見つかりません。
 ハロルドは深い悲しみを抱えたまま、母に連れられて街へ引っ越していきます。

 遠い街で大人になったハロルドは、別の女性と出会って結婚します。彼女の名はマーガレット。明るくて、タリイとはまったく違うタイプの人です。
 新妻の彼女を連れて、ハロルドは、あの夏を過ごした湖畔を訪れます。

 その日、水死体が上がるのです。あの日消えた少女の。十二歳のままの。

 最後の一行が有名です。
「私は浜辺にあがった。そこには、マーガレットという見知らぬ女が微笑をうかべて待っていた……」(伊藤訳)

 悲しい、悲しいおはなしですね。
 この後、ハロルドはどうなるのでしょう。というより、マーガレットは。
 そうです。私はそっちがとても気になりました。マーガレットはどうなるのでしょう。
 どうしようもありませんね。たぶん。

 ハロルドも、どうしようもありません。

 そんな悲しいおはなしです。
 正直、読んだ後、私はとっても悲しくなりました。

 全世界のハロルドさんに言いたいです。
 タリイが好きなら、忘れられないなら、
 どうか、マーガレットと結婚しないでください。
 お願いします。

「みずうみ」には熱狂的なファンが多いので、これくらいで(ぎりぎり)がまんしておいて、
 私の大好きな「パニュキス」の紹介に移りたいと思います。
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