緩慢、あるいは、動いてみるということ
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逆に、アルテミスが危険な存在であれば破壊や撃退も視野に入るわ。
この場合は、もしかするとSDEを味方につけることも考えないといけないかもしれない。
まあ結果がこうなるくらいなら最初から首を突っ込まなければ良いのだけど……事実、殺人までやっているSDEは信用できないからね。私が独自にアルテミスを追っているのは其れが理由。
殺人が穏やかじゃないのはわかるが、アンタはなぜそこまでアルテミスに疑問を持ってるんだ?
アンタも結局の所、アルテミスについて正確な情報はない。
SDEの動きだけ見て、それが妙だから騒いでやろうってだけなのか?
アルテミスだけなら、私も首を突っ込むつもりはなかったわ。けど、ちょっと看過出来ない事実を見つけちゃってね。
魂の情報化技術は、魂の在処を見つけたことによって進展した。けれど、発表された論文には「実験方法と得られる結果」しか書かれていないの。
魂の在処へのアクセス方法は明確にしてあるけど、アクセス先がどこなのかはぼやかされている。
それがどこかは分からないけど、その魂の在処に発生したイレギュラーがアルテミスということは間違いないわ。
魂の製造ラインのようなものがあって、その失敗作として出来ただけかもしれないけど、魂の管理運営上、重要な位置にある可能性もある。
私が考える最悪の事態は、アルテミスという存在を解読することでSDEが魂の管理権限を掌握してまうこと。
世間に隠すような事実と、口封じまでして捜索している明らかに特別な存在。アルテミスが計画の最後の1ピースだとしたら、それを手に入れることで世界はSDEの手に落ちるかもしれない。
冗談みたいな話だけど、状況的にはありえなくはないでしょう。
だから私たちはまずアルテミスに接触して、それがどんな存在なのかを知る必要がある。正直にいって、杞憂なら嬉しいわ。あなたたちも空振りは覚悟して頂戴。
私の妄想だと思うなら計画から抜けても良いわ。どう思う?