第9話

文字数 7,526文字

 その日、ミイ姉ちゃんと手を振って別れたあとも、一日は終わりにならなかった。
 いったんミイ姉ちゃんと別れた後、わたしはドキドキを抑えて、いつも通りお母さんと弟とお風呂に入って、そうこうしているうちに早めに帰ってきたお父さんも食卓について、家族四人で夕飯を食べた。その日の夕飯は冷やし中華だった。
 冷やし中華も、普通の醤油味ではなく、わたしの好きなごまダレだった。つるつるとした冷たい麺が喉に心地よい。嫌いなきゅうりを避けて食べる弟が、お母さんに怒られているのを片目で見ながら、わたしの意識はテレビのアナウンサーの声に集中していた。
「ペルセウス流星群、今夜は綺麗に見えそうですね」
「雨や雲の心配をせずに流星群を楽しめそうです」
「流星群を綺麗に見たい方は街の光が少ない場所がおすすめですよ」
「ほら! 夏希も早く食べちゃいなさい!」
お母さんの大きな声に驚いて、口に入れていた中華麺を勢いよくずずずっとすする。
口に麺を入れすぎてしまったけれど、出すわけにもいかず、一生懸命に弾力のある麺と戦う。歯で麺を噛むことに集中すると、ふわふわとした気持ちも多少落ち着いた。噛みながらまるで自分の緊張も噛み砕いて、消していっているみたいだった。
お風呂も、夕飯も、家族みんなでテレビを見ている時間も、特に問題なく過ぎていった。そしていよいよベッドに入る。
 そこからが大変だった。
何しろ、眠い。一日遊び通しているから、とにかく眠い。
ほんの少し空いている窓から入ってくる夜風が心地よくて、あっという間にタオルケットの帆を張った船に揺られて眠りの海へと引っ張られていってしまう。
一応、約束の時間(なんと深夜十二時!)の十五分前に目覚まし時計はセットしておいた。
でも、目覚まし時計の音のせいで家族の誰かが起きてしまうかも、と思うと、やはり、目覚まし時計を頼りにして少しの間寝入ることもできなかった。
くーくーすーすー弟の寝息が夜に響く。これ以上ない催眠効果のあるメロディーだ。ドア一枚を通して、両親が談笑する声やテレビのバラエティ番組のわっはっはという笑い声も聞こえてくる。
やがて、テレビの音も両親の話し声もなくなり、完全な静寂が家にやってきた。
 静かすぎて、外から人の話し声まで聞こえてくる。なんと言っているのかはわからないが、多分、高校生や大学生たちだろう。会話が盛り上がったときだけ大きく聞こえてくる笑い声を、わたしはベッドの中で不思議な気持ちで聞いていた。
 わたしは夜の暗闇の中で活動する気には全くなれないし、窓の外に広がる世界へ歩いていっても溶け込むことなんて、到底できそうにない気がする。だけど、今楽しそうに話をしているお兄さん、お姉さんたちは、夜なんてものともせずに(むしろ味方につけて)、思う存分おしゃべりを楽しんでいる。
 あの人たちも、昔はきっとわたしと同じ小学生だったはずなのに、いったいいつ夜を味方につけたんだろう。小学生のわたしは当然、暗闇が広がる夜は、出歩く世界じゃないと思っている。夜は、安心できる場所に隠れて、丸くなって眠るための時間だ。太陽も休んでいることだし、夜は寝心地の良い場所でゆっくりと体を休めるときなのだ。
 しかし、大きくなると、夜は眠る時間という概念は崩れるんだろう。夜になるとああやって、友達と会っておしゃべりしたり、散歩にでかけたりする人もいるんだろう。
いったい人はいつから、月や星が浮かぶ夜と一緒に過ごすことができるようなるんだろう。人はいつ、暗闇の夜を自分の味方につけるんだろう。
 そんなとりとめもないことを、夢の中で、あるいは現実で、永遠と考えていると、ピピ……と枕の下でくぐもった目覚まし時計の音が聞こえた。
 はっと目を開けて手を枕の下にもぐりこませ、慌てて目覚まし時計の音を止める。上半身を起こすと、さっきまで意識が朦朧となるほど眠たかったことが嘘のように、頭の中の霞が晴れていた。聞こえていたはずの談笑の声も全く聞こえない。別世界のような静けさが夜に満ちていた。
 二段ベッドのはしごを、音を立てずに降りる。二段ベッドの下の段をちらっと見ると、タオルケットをお腹にひっかけた弟がお腹を丸出しにして大の字になって眠っていた。いつもお母さんがしてあげているように、そっとお腹にタオルケットをひっかけてあげる。
 それから足音も、ドアの音も、どんな物音もたてないように、子ども部屋から出る。真っ暗なリビングがあった。自分の心臓の音が誰かに聞こえてしまうかもしれない。そんな不安を感じるほど、胸の中でわたしの心臓は大暴れしていた。
 あたりは真っ暗でほとんど何も見えなかったけれど、いつも生活しているからか、特に困ることもなく、電気をつけずに玄関までたどり着いた。
 手探りでサンダルの大きさを確認し、自分のサンダルを見つけて、履く。そのあと、いつもおいてある鍵置き場から、自分の鍵を手にとって、ポケットに入れた。
恐る恐る手を伸ばして、玄関扉の鍵を確認する。上下に二つ鍵がついているのだけれど、両方とも鍵がかかっていた。まずは下の鍵を握りしめて、ゆっくりと回す。カチャっという音が思った以上に大きく響いて、ドアに手をついたまま動けなくなった。
誰かが起き出して玄関の方までやってくる気配がないことを確認すると、今度は上の鍵に手を伸ばす。ぐっとつま先立ちをしてひやっとした鉄の玄関に頬を押し付けながら、鍵を回した。またカチャッとした音が静寂の家の中で響き渡る。
心臓が波打つのを必死で抑えながら、ドアノブをつかんでゆっくりと体重をかけた。ドアがきしむわけでもなく、ゆっくりと無音で開いた。体が外に出るだけの隙間ができると、体をすべりこませ、外へ出る。ふわっとした優しい夏の夜気が体を包む。気を抜かずに全神経をドアノブに集中させて、ゆっくりとドアを閉めた。
 両手をドアから離して、ポケットにしまってあった鍵を取り出して、上下ともしっかりと鍵を閉めた。それも終えてしまうと、やっと大きく息を吸って吐くことが出来た。
「あかるい……」
 団地の廊下の通路は、月明かりに照らされて、わたしの影がはっきりと見えるほどだった。わたしは照明源である月を見てみようと、通路の塀から身を乗り出して夜空を眺めた。
夜の空は思っていたよりもずっと明るかった。地上には月の真白い光がこうこうと降り注ぎ、夜空には星がチラチラと光っているのもわかる。
 思ったよりも明るいことにはほっとしたけれど、それでも見慣れたはずの風景は普段と様変わりして見えた。生活音が一切しないことも、来てはいけない世界に入り込んでしまったような感覚を強めていた。
 だからわたしは、怯える気持ちに急かされるように、音を立てずに駆け足で、ミイ姉ちゃんがいるはずの公園へ向かった。
 公園が見えてくると、ミイ姉ちゃんの姿が見えた。ミイ姉ちゃんは、パジャマ姿で滑り台のてっぺんにもう堂々として仁王立ちしていた。
ぐっと細い首をそらせ、夜風にうねった黒髪をゆらゆらとなびかせながら、夜空をじいっと睨んでいた。
 わたしが公園に入っても気が付かないようで、ミイ姉ちゃんは空から視線をそらさない。この静けさの中にミイ姉ちゃんの耳に届くくらいの音量の声を投げこむ勇気もなくて、わたしはミイ姉ちゃんを見つめながら、すべり台に走り寄った。
それから、カンカンと控えめな音を立てて、狭い滑り台の階段をのぼった。
「ミイ姉ちゃん?」
てっぺんにたどり着いて、小声で呼びかけた。わたしのささやき声はすうっと夜の空気に溶け込み馴染み、消えていく。ミイ姉ちゃんの真後ろにたって、落っこちないように柵をしっかりと握りしめる。
 ミイ姉ちゃんの髪の毛は夜風にゆらぎ、たまに顔にかかりそうになる。くすぐったさを感じながら、じっとミイ姉ちゃんの返事を待った。ミイ姉ちゃんがまったく返事をしないので、もう一度声をかけようか迷い始めたそのとき、ミイ姉ちゃんがくるっとわたしの方をふりむいた。
「なっちゃん、困ったよ」
「こまったの?」
「うん、困った。本当に困った。見てよ、流星群が全然見えない」
「みえない?」
そんなバカな。だって、テレビのアナウンサーだって、今日は流星群を見るにもってこいだって……。
ミイ姉ちゃんが再び、夜空を睨む。わたしもミイ姉ちゃんの視線の先を追うように、首を伸ばして真上を見上げた。
頭上には夕方見た半球の空が、漆黒の闇を持って広がっていた。
そして、ミイ姉ちゃんの言っている意味がわかった。
電灯だ。公園に一つだけある電灯が、公園全体を明るく照らしている。そのせいで、空の星が一つも見えないのだ。
団地の廊下通路から身を乗り出して見上げたときには、確かに星がいくつも光っていたのに、今はその星が一つとして目に映ってこなかった。
「でんとうが、あるから……」
「そう、電灯。あれがあるから、全然見えない」
「どうする? ばしょ、いどうする?」
「それも考えたけど、やっぱり、団地の中で星が綺麗に見えそうな場所ってここしかないんだよね」
こそこそと小さな声で会話をする。いくら声のボリュームをしぼっても、誰か大人の耳に入って、今にも怒られてしまうような気がしてならない。
ミイ姉ちゃんはうーんと腕を組み、さらにきつくただただ黒い空を睨みつけた。
「お祈り、しよう」
しばらく考え込んで黙っていたミイ姉ちゃんが提案したのが、これだった。
「おいのりするの?」
「そ、お祈り。なっちゃんも一緒に。流れ星を見せてくださいってお祈りするの」
流れ星にお祈りしたいから、流れ星を見せてくださいってお祈りするのか。
なんかちょこっとヘンテコだな。
そう思ったけれど、ミイ姉ちゃんが両手を組んで真剣な顔をして祈りはじめたから、わたしも真似して、両手を組んで、口元に近づけた。
流れ星を見せてください。
ぎゅっと目を閉じてお祈りした。それから、うっすら片目を開けて夜空を確認する。当然、公園の電灯は明るく公園を照らしたままだ。
電灯と一緒にミイ姉ちゃんの青白い横顔も見えた。しっかりと閉じた目にはびっしりと長くて太いまつげが生え揃っている。
ミイ姉ちゃんの美しさに、このときわたしは改めて気がついた。
 長いまつげも、白くてすべすべした頬も、さくらんぼ色のぷっくりした唇も、つんと尖った高い鼻も、つややかな黒髪も。全て、わたしとは全く別の生き物のように美しかった。
 なにかに似ているな、と思う。しばらく考えて思いついたのが、母の本棚を勝手に探っていたときに見つけた、画集の中に出てきた女の人だった。確か、オフィーリア。野花を散らしたオフィーリアは小川に浮かび、ゆっくりと流されていく。そんな絵画だった。
 ミイ姉ちゃんをオフィーリアになんとなく投影していると、きゅっと閉じていたミイ姉ちゃんの口がすばやく動くのが見えた。
「流星群が見たいの。流れ星を見せて。お願い。見せて」
息がもれるような、するどい声でミイ姉ちゃんが囁いた。
 サハリの風鈴の音をしたささやき声が響く渡る。ミイ姉ちゃんの声は夜の空気に溶け込むことなく、ぴしっと空気を割いていき、夜の暗闇の中をどこまでも突き進んでいった。
 そして次の瞬間、ぱっと世界が暗闇に落ちた。
 電灯が消えたのだ。
 同時に、あれほど白く輝いていた丸い月も、さっと分厚い雲に隠れてしまった。
急な世界の暗転に驚いて、目を見開いたあと、ぎゅっと目を閉じて目の前のミイ姉ちゃんの細い腰にしがみついた。
 どのくらいミイ姉ちゃんの腰にしがみついていたんだろう。
 気がつくと、ミイ姉ちゃんの手が優しく頭をなでてくれていた。
「なっちゃん、大丈夫、ほら、空を見て。ほら」
さっきのささやき声とは違う、ミイ姉ちゃんの柔らかい声。
依然として腰にしがみついたまま、そっと目を開けて、空を見上げた。
夜空はもう、ただの真っ黒なビロードの布ではなかった。
いくつもの大小の星が白、赤、青とちらちらときらめき、ささやきあっている。
そしてその中を縫うように、ときおり、星のしずくがつっと垂れた。
つっ。つっ。つっ。
「すごい、すごい……!」
こんなに連続で流れ星を見たことはなくて、感動のあまり少し大きな声が出た。慌てて片手で口を押さえる。片方の手でミイ姉ちゃんのパジャマの裾を握ったまま、目を見開いて流れて消え、消えては流れる、流れ星を目に焼きつける。
頭の中には、ミイ姉ちゃんが話してくれたペガサスやペルセウスの物語が流れていた。
きっとこの星空は、ペルセウスが魔女メデューサをやっつけて、ペガサスで夜空を飛んだ空と同じ。小さな星がいくつも輝き、消えては流れている星の一筋の光は、ペガサスが翼を羽ばたかせるときに起こる、きらめきと一緒。
 目の前の星空と頭の中で繰り広げられる物語が重なり、一致し始める。
 ペルセウスを乗せたペガサスが、飛んでいる。だからこんなに星空全体が銀色に輝いている。わたしは本気でそう思って、夜空を羽ばたくペガサスを探そうとさえした。
 目の前の光景が圧倒的に美しいせいで、わたしはまばたきをすることも忘れていたし、当然お願い事やお祈りなんて何一つ思い浮かんでなかった。
 でも、ミイ姉ちゃんは違ったようだ。「ねがいします。おねがいします」なにかつぶやいている声が聞こえた。少し我に返って、ミイ姉ちゃんの顔をのぞき見る。
「……ように。消えますように。みんなみんな、きこちゃんもみんないなくなりますように。それか、わたしだけ、消えてしまえますように」
ミイ姉ちゃんの言葉が聞き取れた途端、感動や興奮で温まっていた手足が、すっと指先から冷たくなった。白い顔にするどい目。流れ星を一つ一つ目で追いながら、ミイ姉ちゃんは一心不乱にお願いごとをつぶやいていた。
 ふいに夏の湿った夜風が強く吹き、ミイ姉ちゃんの髪が星空に舞う。ゆらゆらと揺らめくミイ姉ちゃんの黒髪はうねりを持って舞い上がった。
 蛇だ。
 わたしには、ミイ姉ちゃんの髪の毛が蛇の大群のように見えた。
 先ほどまでオフィーリアだったミイ姉ちゃんは、蛇の髪を持つメデューサに変わっていた。黒蛇をうねらせ、呪いのような願いをつぶやくミイ姉ちゃんは、星のない空のように真っ黒だった。
 黒くなって暗闇の溶けてしまったミイ姉ちゃんの横で、わたしだけが、ペルセウスでもなく、ペガサスでもなく、星でも流れ星でもないままだった。
 わたしは夜にも溶け込めず、星のように輝くこともせず、ただぽつねんと、すべり台のてっぺんで一人、立ち尽くしていた。
たった一人だ。
驚きを持ってそう実感した途端、かすかなジジっという音とともに、公園の電灯がついた。途端に、星空は真っ黒なビロードの布に早変わりし、公園も人工的な白い光で照らし出された。
「……帰ろっか」
そう言ったミイ姉ちゃんを見ると、先ほどの黒色が嘘だったかのように、澄んだ目でわたしに微笑みかけていた。
蛇に見えた髪の毛も、いつもの、つやつやとした柔らかな髪に戻っている。
こっくりとうなずくと、ミイ姉ちゃんはわたしの頭をぽんぽんと叩いてから、しゅうっと滑り台を滑り落ちた。わたしもなんとなく、階段を使わずにミイ姉ちゃんのあとに続いて滑り台をすべる。
「じゃあ、また明日ね」
いつものミイ姉ちゃんと別れる場所に来ると、ミイ姉ちゃんはあっさり手を降って一人で歩いていってしまった。
 急に一人になった途端に心細くなる気持ちを押さえつけて、わたしは早足で家へ向かった。家の前につくと、ポケットの鍵を取り出して、そっと、上下の鍵を開ける。
 それから最新の注意を払ったまま、重たいドアを引いて、玄関に体をすべりこませた。鍵を閉め、サンダルを脱ぎ、抜き足差し足で子ども部屋まで戻る。
 部屋に戻ると、相変わらず弟が年の割には大きな寝息を立てて熟睡していた。弟の平和そのものの寝顔を少しの間見つめてから、わたしの寝床である二段ベッドの上へと体を滑り込ませた。薄手のタオルケットを頭からすっぽりかぶる。
 目を閉じると、タオルケットのぬくもりが一層心地よいものに感じられた。
 眠りに落ちる直前まで、わたしはミイ姉ちゃんの姿を思い返していた。
 あれだけ圧倒的な存在感だった星空も、きらめく流れ星も、記憶の中では、ミイ姉ちゃんの後ろでただの背景と化していた。髪を蛇のようにうねらせ、呪いのような願い事をしていた真っ黒なミイ姉ちゃんと、ただただ、オフィーリアのように綺麗だったミイ姉ちゃん。
どちらの魅力をもっているからこそミイ姉ちゃんなのだと、わかっていた。
ミイ姉ちゃんはわたしとは違う。
そしてたぶん、きこちゃんとか、みんなとか、そういう子たちとも違うのだ。
ふいに、ミイ姉ちゃんがカラスにぐちゃぐちゃに食いつぶされたサンコウチョウのひな鳥を、なんの躊躇もなくそっと両手ですくった姿が思い浮かぶ。
ミイ姉ちゃんはあの時ひな鳥を「死んだ生き物」ではなく「ついさっきまで生きていた懸命に生きていた生き物」と捉えていたんだろう。それができたのは、ミイ姉ちゃん自身が、生きていた頃のひな鳥のように、今を必死で生きているから。だからこそミイ姉ちゃんはくるくると色を変えて輝いているし、死が生の延長線上のもの、特別怖いものではないと、知っている。
そしてそこに、わたしがミイ姉ちゃんの魅力に取り憑かれてしまった理由もある。
もう半分眠りについている頭の中で、夜の暗闇が全く平気そうだったミイ姉ちゃんの姿が浮かんだ。ミイ姉ちゃんはもう、夜の暗闇を味方につけている。そのことに気づき、驚きを覚えた。
明日会ったら、いつから夜を味方にしたのか、聞いてみよう。
半分夢の中でそんなことを考え、なんとか完全に意識を落としてしまおうとしてみるが、意外と頭の中は大興奮のままなのか、なかなか意識を手放すことができない。だんだんと自分が起きながら思考しているのか、夢の中で思考しているのか、わからなくなってくる。
そんな状態の頭の中で夜のような真っ黒のミイ姉ちゃんがつぶやいていた、お願いごとがぐるぐるとずっと回っている。
呪いのようなお願いごとだった。わたしにはさっぱり意味がわからなかった。
どういう意味だったんだろう。一生懸命ミイ姉ちゃんの言葉を反芻しているうちにやっとタオルケットに包まれた体全体が重くなってきた。そしてあっという間にわたしは意識を手放して眠りの中に落ちていった。
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