第59話

文字数 3,086文字


源三郎江戸日記(弟二部)59

新之助にそれでは頼むぞと言うと、まかせておけ、引き上げるぞと命令すると、押収した物を大八車に乗せて引き上げていったのです、飛猿に馬につんだ金を七衛門に預けてくれと言って、
源信、お蝶、才蔵は加賀藩の屋敷を見張り、不穏な動きあらば利常公を屋敷からのがし、玄海屋に連れてきてくれと頼むと、承知と言って屋敷に戻ったのです、小者に囲い者の処へ案内さ、
せて座敷に入り、

前田行部は家禄を召し上げられ隠居させれた、もうお前の面倒は見る事はできんと言うと、分かりました、私はどうなるのですかと聞くので、好きなようにすれば良いと言うと、解放して、
頂きますのですかと聞くので、もちろんじあ、名前はと聞くと、小雪と申します、もう、行部様とは情を交わさなくていいんですね嬉しゅうございますというので、厭だったのかと聞くと、

ハイ、抱かれるのが苦痛でしたが囲われの身なれば逃れる事はできませんと言うので、これからどうするのじあと言うと、吉原に戻るしかありませぬと言うので、何か出来る腕はないのか、
と聞くと、小唄、三味線、琴に裁縫は出来ますと言うので、武家の出なのかと聞くと生国は日向飫肥です、父上は飫肥藩の藩士で御座いましたが、殿の勘気にふれて、お家を退散したので、

父上、母上と供に江戸に出て来たのですと言うので、なぜ吉原にと聞くと、父上が病気になり医師の薬代の為吉原に行ったのです、暫くして父上は亡くなり、母上も後を追うように病で、
死にましたと言うので、それは気の毒な事じあな、行部との手切れ金500両をそなたにやるので、深川で小唄、三味線、琴を教えてはどうだと言うと、そんな大金をくださるのですかと、
言うので、

そうじあ、それだけあれば家も借りられ、教授料もはいるので暮していけるじあろうと言うと、吉原出の女郎の処に習いにくるでしょうかと聞くので、厭に者はほうって置けばよい、深川、
には知り合いが沢山いる、小雪はぺっぴんじあって大勢ならいにくるぞと言うと、そんな事はありませんけど、やってみますと言うので、それでは身の回りの物だけ用意しなさい、これか、
ら連れて行こう、

支度が出来たら表に来いと言うと、小者の処に行き、ここには何人いるのだと聞くと、わたしと女中一人ですというので、それでは深川で小雪の世話をするかと聞くと、行くところはあり、
ません、宜しくおねげえしますと二人が言うので、大八車に荷物を積み込めと言うと、二人の荷物と小雪の荷物を積んだので、お前の名前はと聞くと茂助といいやす、これはすずですと言、
うので、

二人の歳はと聞くと茂助が38、すずが20ですと答えたのです、小雪も支度が出来たというので、ここから深川は橋を渡ればすぐだと言って、茂助が大八車を引き、玄海屋に向かったのです、
店に着くと七衛門に訳を話して、売りに出ている家はないかと聞くと、この裏手に一軒屋があります、1階に5部屋あり2階に3部屋ありますと言うので、家主はと聞くと家主が田舎に引きこ、
むので買ってくれと言う事で、

わたしが買ったのですと言うので、それを譲ってくれ、それをこの小雪の物にしてくれと言うと、ハイ、奉行所には届けておきますというので、代金は渡した金から取ってくれと言うと、
50両ですが、差し上げますよと言うので、それはいかん、これから生きていくのだ施しを受けては為にならんので、渡した金から受け取るのだと言うと、ハイと七衛門が返事したのです、

渡した中から20両を出してくれと言うと、奥に行き20両持って来たので受け取り、家に案内してくれと言うと七衛門が案内したのでみんなを連れて行くと、庭があり格子戸を入り部屋、
に上がると、中々立派な家です、茂助とすずに小雪の荷物は二階にお前たちは奥の部屋に別々に荷物をいれて自分の部屋にしろと言つたのです、運び込んだので、二人の給金は月に、
2分銀をやろう、

これは今月から4月分だと1両づつ渡すと、こんなに貰っていいんですかと言うので、遠慮するなしつかり奉公しろよと言うと、ハイ、二人で精一杯お世話しますと言ったのです、それでは、
二階には何もなかったかと聞くと、桐のタンスと座卓に火鉢がありましたと言うので、下はときくと何もありませんと言うので、5両を茂助に渡し、これで鍋釜から一通り買うのじあ、

お前たちのタンスと座卓、火鉢等ここで住む為のもの、一式を運んでもらえ、米、味噌、醤油もじあぞ、余ったら小雪に返すが良いと言うと、それでは行って着ますと、二人は出て行った、
のです、どの部屋を使うかは小雪が決めろ、七衛門は4百30両の預かり書を書いて、小雪に渡してくれ、小雪が必要な時に必要な、分だけ渡してくれ、この家に置くのは不用人じあからな、

それから看板を、用意してくれと言って、居酒屋にいるのでそこに持って来てくれ、と頼んだのです、小雪と居酒屋に行くと、おみよがまあいい女子を連れてどうしたんですかと聞くので、
そこの裏でこんど小唄、三味線、琴を教える事になった、お師匠さんじあよと言うと、小雪といいますよろしくと言うと、みよです店もひいきにして、くださいなと言うと、小雪がハイと、
言ったのです、

小雪に残りの13両を当座の金寸だと渡し、必要になったら七衛門に預けた金寸を出してもらうが良いと言うと、何から何までありがとうございます、この恩は一生忘れませんと言うので、
気にせんでも良い、今までの事はすべて忘れて、新しく出直すのじあと言うと、どうしてそんなに優しくしてくださるのですかと涙汲むので、これ泣いてはいかん、実はなわしの生国は、
高鍋なのじあよ、

飫肥の隣と言うわけじあ、まあ、同じ田舎が生国と言うわけじあよ、知らん顔は出きんじあろうと笑ったのです、そうなんですか、高鍋ですか何回か行った事があります、それがなぜ今は、
上杉家に奉公されているのですかと聞くので、上杉の殿は高鍋から養子に行きなされて、わしは付け家老として、行ったと言う訳じあよと言うと、ご家老様なんですかと頭を下げるので、
気は使わんでも良い、

わしの女子にしょうと、思っているのではないと言うと、気さくなご家老様ですねと言うと、おみよがおまちと言って、酒と丸干しをもってきたので、小雪が酌をして杯を重ねたのです、
まあお武家様がいわしを召し上がるのですかと言うので、おみよが源三郎の旦那はこれが好物なんですよと笑ったのです、小雪は嫌いかと聞くと、いいえ、父上が好きだったので、飫肥、
ではよく食べたので、大好きですといったのです、

七衛門が来たので小上がりに上がらせると、預かり書を小雪に渡し、看板は大工に頼んだよと言って、必要な時はいつでも言っておくれ、私がいない時は番頭に言えば渡してくれるよと、
言うと、すみませぬ、これからも宜しくお願いしますと言ったのです、七衛門に客の勧誘も頼むと言うと、まかしておいてくださいと言うので、商家の旦那は月に2分の教え料をとるのだ、
後は懐具合を見てだなと言うと、

小雪がハイと言うと、七衛門がそれならわたしが一番の弟子になるよと2分銀を渡したのです、何を習うのだと聞くと、小唄を習いますと言うので、それは叉風流だなと笑うと、よく商家、
の旦那との寄り合いで宴会がありますので、丁度良かったですといったのです、若狭屋さんにも言うてきました、顔を出すと言っていましたよと言うので、これで二人目だな、下働きの、
給金が出来たなというと、

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