6話 ✿ 話題に困ったら「ワラ人形」

エピソード文字数 1,062文字

翌日の放課後のこと。


天井くん、煮貝くん、蘭々の三人は、野球部の部室棟裏に隠れていた。

いいか、煮貝くん?

彼女が出てきたら、それとなく声をかけるんだ。

なんでもいいから、話してみてくれ。

なんでも、って?

天気の話とか、好きな食べ物の話とか。

私と天井で、彼女の反応を観察している。

俺たちがついてるよ、煮貝

すると「彼女」が部室棟から出てきた。

近松さん。

煮貝くん! 昨日はありがとう。

近松 摩耶(ちかまつ・まや)


煮貝くんたちと同学年で、野球部のマネージャーだ。

昨日、転んで怪我したとこは?

大丈夫だよ。

心配してくれてありがとう。

なら良かった。

それにしても、今日は良い天気だなぁ!

そうだね。今日は天気が良いから、練習日和だね。
…………。
………。
会話が続かない。
あのさ
ん? な、なにかな?
ワラ人形…ってどう思う?

天井くん蘭々は、草むらを飛び出した。


煮貝くんをかかえて、目にもとまらぬ速さでその場を去る。

今、花房さん天井くんが…

あれれ? 見間違いかな?

どうした、近松? そんなところに突っ立って…。

多々良くん。

それが、煮貝くんが連れ去られちゃったの。

は? 煮貝が? ったく。もうすぐ練習なのにどこで油さしてんだが。
      ✿      
一方、連れ去られた煮貝くんはというと。
なにを聞こうとしていた!?
俺はただワラ人形をどう思うか、それとなーく聞こうかと

それとなく? 直球だったじゃないか!


天気のあとにワラ人形の話をするやつが、この世界のどこにいる!?

聞いたところで、どうするんだよ!? 

もしも彼女が犯人だとして、うまくごまかされるかもしれないだろ!?

それもそうだな。

やれやれ・・・。肝が冷えたぞ。

収穫はあったがな

私の見る限り、彼女が犯人ではないだろう。

どうしてそう思うの?

近松さんが、昨日のことですぐにお礼を言ったからだ。


犯人は根性の腐ったやつだ。

そういうやつからは「ありがとう」の一言も出ない。


彼女が犯人でないと判断する要素には足りないかもしれないが…。

人間性って大事だよ。俺も彼女は犯人ではないと思う。


松茸の話だと、近松さんは靴箱の俺たちをうかがっていたそーだけど。


近松さんは人を呪うタイプには見えないんだよなぁ。

それにしても、なぜ彼女は私たちをこっそり見ていたんだろう。


目撃者の松茸を、もう一度問い詰めてみるか。

あいつは美術部だったな。天井も一緒に来るか?

えー…と。

俺、急に用事を思い出しちゃって…

天井が来てくれたら、あいつは洗いざらい話してくれそうな気がするが。

仕方ない。私、一人で行こう。


煮貝くん。部活頑張ってくれ。じゃ!

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登場人物紹介

天井 集 (あまい・しゅう)


人生初チョコをもらったのに、幸せでない少年。

花房 蘭々(はなぶさ・らら)


文武両道の優等生。天井にチョコを贈ったが…。

煮貝 杯(にがい・はい)


天井の友人。

バレンタインに、とんでもないチョコをもらう

近松 摩耶(ちかまつ・まや)


野球部のマネージャー。

天井くんたちの同級生

多々良 哲也(たたら・てつや)


煮貝の友人。野球部員。

天井くんたちの同級生

松茸 鶴弥(まつたけ・つるや)


天井くんの同級生。

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