此岸にて

文字数 357文字

 雨降りの、風邪ひきの、おぼろかの
 闇夜の燔祭(はんさい)
 ちんくしゃな司祭連が
 ペースメーカーを踏み砕いている

 死
 老人を訪れたもの
 添え木
 医の先達が用意したもの

 深爪の死化粧師が
 ぬか漬けを食べている
 ポリポリと咀嚼の快音を響かせている
 空気がよどんでいる

 (おとうさん、お迎えが来ましたよ)
 (そうかい、それはいつのこと?)

 硬直した顎が
 頑固なまでに閉じようとしない
 花を捧げるように小瓶を運んでいたもろ手が
 厚ぼったくむくんでいる

 胸
 致命の深海
 歌
 最後に残ったもの

 (おとうさん、あなた燃えていますよ)
 (そうかい、それはいつのこと?)

 木馬に乗った過去が
 棺を苛んでいく
 むくつけき葬送を営んでいく
 泣き笑いの生涯が
 弔われる
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