辞表提出
文字数 656文字
俺の辞表を前にした部長は、戸惑ったような声を上げた。
予め用意していた当たり障りない理由を俺は言う。
私が抱えている案件の大半には、このところずっと健城に同行営業させています。学ばせるためだったんですが、ちょうど都合よく、引き継ぎの役割にもなってくれたということですね。事業部の他のメンツにも、適時案件を割り振っていくようにしますし。
いえ、アレでも健城は要領がいいヤツですよ。お客さんの受けは非常に良いし、才能があって努力もする。お客さんに最後の挨拶回りをする際に、必要なことはすべて健城にも伝えておきます。それに何かあれば、辞めた後でもいつでもお手伝いに参上しますよ。当面、フリーの予定なんで。
苦笑いしながらそう言って、俺は肩をすくめた。