第00話(5)

文字数 1,119文字

 灯火がゆらりと灯る。
「以下の通り、未来は、再び戦火に見舞われるんだな」
「それは本当なの、占い師エルマ?」
「情報屋ジュリアさん、ワタシの能力を疑っているんだな?」
 小さな家の小さな部屋、その場所に占い師のエルマが住んでいるという。その噂を聞きつけた情報屋のジュリアは、情報集めの一環で、エルマの元に来ていた。
「いえ、そういう訳じゃ無いわ。お話ありがとう」
「最後に一つだけ、一つだけ言わせて欲しいんだな。黒き王国は再び復活するんだな」
「そうで、あって欲しいわね」
 ジュリアはエルマに一礼すると、立ち去る。エルマは暫く水晶を眺めていたが、何か首元に違和感を覚えた。
「間者とは、ノールオリゾン国も本気なんだな……でもまさか、ツツジの里が繋がっていたとは。香月真理奈殿――」
「ご名答。貴方にはノールオリゾン国に来て頂きます、占い師エルマさん」
「何をしたいんだな。ワタシの言葉は偽る事は出来ないんだな」
「そうですか。貴方がシュヴァルツ王国の元帥――ウィル・リーヴィと繋がっている事は調査済み。この事を知れば貴方の命も在りませんよ?」
「ツツジの里も、訳が分からないんだな……どうすればいいんだな? ノールオリゾン国が繁栄すると言った方が良いんだな? 残念ながら、それはあり得ないんだな」
 ため息を吐き、エルマは真理奈を見据える。その視線は軽蔑を意味していた。
「貴方方には、言うことは無いんだな」
「姫の居場所を教えて欲しいんです」
「ワタシは知らないんだな」
「白を切るつもりですか、致し方ないですね――カイ様、この者を」
「真理奈姫、了解。この占い師を連れてけば良いんだな」
 ノールオリゾン国はツツジの長――玲と繋がっているというのは、本当だった。エルマはその意味を確かめると、黙って真理奈とカイに従った。
「情報屋の事が気がかりだが、どうする? 真理奈姫」
「たかが、情報屋ですよ。しかし……」
 たかが情報屋だが、エルマの予言は効力がある。もし、情報屋が漏らせばノールオリゾン国の覇権が揺らぐだろう。
 シュヴァルツ王国国王、姫の処刑の時間は刻一刻と近付いている。この地は既に、ノールオリゾン国の物だ。だからこそ、ツツジの里は生き残っていかなくてはならない。
「ところで、少し気がかりな事がある。香月七瀬――彼女が最近怪しい動きを見せているようだ」
「従姉妹とて、ツツジの里の掟に背けば命は在りません。カイ様、調査を」
「了解、真理奈姫――」
 全て、全て報告しなくては。予言者でもある占い師エルマが、再びシュヴァルツ王国は復活すると言うことを――兄・玲に。
 ツツジの里は揺れている。どの国に付くべきか、否や。
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登場人物紹介

エレン・ディル(16)

シュヴァルツ王国第二皇女の少女。

性格はほのぼの穏やかだが、王女としてのプライドはある。

フェイを心の底から信頼している。

亡国となったシュヴァルツ王国を再建する為に、奮闘する。

フェイ・ローレンス(17)

エレン姫に仕える護衛騎士。

クールで一匹狼だが、面倒見が良い。

エレンの事が好き。

エレンの夢の為に、フェイもまた奔走する。

セレナ・エーデル

ニコラが作った機械人形。

通称・仮初めの姫。

たどたどしく喋るのが印象的。

アレックとニコラを親のように感じている。

アレック・リトナー(20)

おちゃらけている謎の剣士。

セレナとニコラを連れて、旅をしている。

昔はセレナ姫の護衛騎士だった。

セレナ姫と瓜二つのセレナに特別な感情を抱いている。

ニコラ・オルセン(19)

腕の立つ技師。

部乱暴なしゃべり方で心は熱い。

アレックとはなんやかんやで仲が良い。

機械人形・セレナの親的存在。

香月七瀬(16)

ツツジの集落に住んでいた香月家の少女。

今は家出して、ダニエルの元にいる。

明るく元気な性格。

ダニエルの事を少々気になっている様子。

ダニエル・フォン・マクスウェル(25)

若き青紫男爵家領主。

シュヴァルツ王国を再建する為に奔走する。

物腰柔らかで爽やかな性格。

七瀬の事をなんやかんやで信頼している。

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