第174話 河内長島平定戦 狙われた旗
文字数 839文字
黒雲の集団が向かう先には信忠軍が配されていた。
織田信包 、織田秀成、織田信次、
織田長利といった極めて近しい縁者達を筆頭に、
代を継いでの忠臣である森長可 、
信長の乳兄弟 池田恒興、竹丸の父 長谷川与次などという、
織田家の核心的岩盤層とも言うべき武将達が、
副将である信忠に付けられている。
よく日焼けした秀政の顔が蒼白に映る。
「木瓜紋、永楽銭 が狙われております!
奴等、織田の旗に突進している!」
木瓜紋は織田木瓜こと、織田家本来の家紋で、
永楽銭は経済を重視している信長が永楽通宝を旗印にして、
近ごろ好んで使用し、昨今は一族、重臣に下賜していた。
信長は目を疑った。
木瓜の旗指物が斜 になり、倒される。
武将の所在を示す馬印さえ、数が減り、姿を消した。
揖斐の西川端の芦、薄 の茂みから飛び出した一揆勢は、
織田軍の約定破りの攻撃に命は無いとみて、
捨て身の反撃に打って出たに違いなかった。
目標物は、ひたすら、織田木瓜、永楽通宝だった。
生きながらにして屍と言える、
骨の浮き出た裸に抜き身の一揆勢にとり、
最後の力を振り絞り、狙う命は織田の血筋で、
他は不要の存在だった。
あちらこちらの木瓜の旗印は、
とある一点に向かって集まり、
明らかにその目指した先を守護しようとしている。
そこには信忠が居た。
織田の武将達に護られて、
信忠の馬標である黄金の南蛮傘は未だ天を突き、立っている。
今、信忠は生きている。
だが、信忠の為に集結した部隊は陣形を崩し、
無残に旗印が倒壊してゆく。
決して、あってはならない景色だった。
有り得てはならない眺めだった。
純白に黒文字の織田木瓜旗、黄金地に漆黒の永楽銭旗、
それらが狙い撃ちに遭い、ばたばたと倒れ、視界から消える。
頬に伝わる雫は信長の魂が流した血涙だった。
どれほど織田家に血を流せというのか!……
信興一人では足りず、儂をここまで苦しめるとは!……
織田木瓜、永楽通宝の旗指物が数を減らしてゆく中、
やがて、どす黒い塊は信長本陣へと向きを移した。
織田
織田長利といった極めて近しい縁者達を筆頭に、
代を継いでの忠臣である森
信長の乳兄弟 池田恒興、竹丸の父 長谷川与次などという、
織田家の核心的岩盤層とも言うべき武将達が、
副将である信忠に付けられている。
よく日焼けした秀政の顔が蒼白に映る。
「木瓜紋、
奴等、織田の旗に突進している!」
木瓜紋は織田木瓜こと、織田家本来の家紋で、
永楽銭は経済を重視している信長が永楽通宝を旗印にして、
近ごろ好んで使用し、昨今は一族、重臣に下賜していた。
信長は目を疑った。
木瓜の旗指物が
武将の所在を示す馬印さえ、数が減り、姿を消した。
揖斐の西川端の芦、
織田軍の約定破りの攻撃に命は無いとみて、
捨て身の反撃に打って出たに違いなかった。
目標物は、ひたすら、織田木瓜、永楽通宝だった。
生きながらにして屍と言える、
骨の浮き出た裸に抜き身の一揆勢にとり、
最後の力を振り絞り、狙う命は織田の血筋で、
他は不要の存在だった。
あちらこちらの木瓜の旗印は、
とある一点に向かって集まり、
明らかにその目指した先を守護しようとしている。
そこには信忠が居た。
織田の武将達に護られて、
信忠の馬標である黄金の南蛮傘は未だ天を突き、立っている。
今、信忠は生きている。
だが、信忠の為に集結した部隊は陣形を崩し、
無残に旗印が倒壊してゆく。
決して、あってはならない景色だった。
有り得てはならない眺めだった。
純白に黒文字の織田木瓜旗、黄金地に漆黒の永楽銭旗、
それらが狙い撃ちに遭い、ばたばたと倒れ、視界から消える。
頬に伝わる雫は信長の魂が流した血涙だった。
どれほど織田家に血を流せというのか!……
信興一人では足りず、儂をここまで苦しめるとは!……
織田木瓜、永楽通宝の旗指物が数を減らしてゆく中、
やがて、どす黒い塊は信長本陣へと向きを移した。